ありとあらゆるLOVEの正体が!
こんどもまた、世界で初めての絵本になりました。
人工知能、遺伝子につづく、森川さんのこんどの興味は
「昆虫たちの性戦略」だって!
読むと、ぼくら人間の性衝動のほうが、
ずっと奇妙かもと思えちゃう、
とんでもない絵本なんですよ、これが。

森川さん森川さん、
こんどは「昆虫」ですって?


ほぼにちわ、シェフです。
森川さん、お元気でしたか。
またしばらく姿を見ないと思ってたら
新作ゲームづくりが佳境に入っているそうですね。
たいへんですね、乗りきってくださいねー。
えっ?! 絵本も描いていたんですか?
それも、本業とは関係なく?!
出たばっかり? うわー。ぜひ読ませてください。
あー、‥‥あー、っと‥‥
(読む。30分経過)
ありゃーっ!!!!!
ちょっと、これ、すごくないですか?!




「うん、けっこうすごいのができちゃった」


前作『テロメアの帽子』
遺伝子を擬人化した話でしたけど
今度は「昆虫の性戦略」なんですね‥‥。
この内容、すごすぎます。おもしろいです。
読みながら、じぶんのこと、深く考えてしまいました。
昆虫と自分を比べるこたぁないんですけど、
森川さんが擬人化しているせいで、
やったらドキドキしちゃいましたよ。
ちょっと、お話、聞かせてください!


 ヌカカの結婚
 ──虫たちの不思議な性戦略


  125ページ 16cm×16cm
  新紀元社 ISBN4-7753-0333-3
  定価:1680円(本体1600円)
  Amazonはこちら。

──森川さんこれ面白かったです!
  すぐ読めちゃうし、
  何度読み返してもいいし、
  ともだちに「知ってる?」って話したくなるし。
  森川さん、昆虫はもともと好きなんですか?


うん、生き物としてヘンなところが好きなんです。
昆虫は生態がヘンなんです。
ていうかね、同じ地球の仲間に思えない。
動物たちは「仲間」って感じがするでしょ?
でも昆虫くんたちはね、
ひょっとして宇宙から来たんじゃないかって
真剣に言う人もいるくらいで、
そう言われると納得しちゃいそうなくらい、ヘンなの。
この本は性行動について、だけだけど、
それ以外にも不思議なところがいっぱいあって。
そういう興味の集大成がこの絵本になりました。


──「ほぼ日」では
  婦人公論・井戸端会議
  昆虫の話を紹介したことがあります。
  動物たちの交尾や繁殖って、
  ぼくらから見たらふつうじゃない世界みたいですね。
  ドリル状のペニスで交尾後にメスの性器を壊してしまう
  昆虫もいるとか、そういうの聞くと。


交尾のあと、メスの性器を
樹脂で固めてしまうオスとかね。
大概の場合、昆虫は乱交なので、
あとから使われる精子のほうが
使われる確率が高いでしょう。
だから自分のあとに他のオスに交尾されると困るわけ。
そこで樹脂でメスの性器を固めるとか、
ドリルで壊しちゃうとかするんですね。
あるいは、あとから入ってきた精子を殺す
化学物質を残しておくとか。


──オスは自分の遺伝子を残すことを最優先にした結果、
  そういう行動に出るわけですよね。


どのみちね、オスは、交尾すると寿命が来ちゃうから、
自分じしんが生き残ることはあまり考えていない。


──メスに食べられながら交尾するオスもいる、と、
  この本にありましたね。


そうそうそう。オスって、ものすごく、悲しいよね!
オスがメスの20万分の1の大きさしかないので、
オスは女性器の中で暮らしている、とかいう昆虫もいて。


──森川さんが面白いのは、その話を、絵にするときに、
  人間に置き換えているんですよね。
  人間なのか、人間のようなものなのか
  わからないんですが、
  一見人間のように見えるものたちの
  話として描かれていて。


人に置き換えると、余計にヘンさが際立つでしょ。

──昆虫がすごい、という本は
  きっといっぱいあるんだと思うんですが、
  なんでこの本でこんなに心が
  ぐらぐらするんだろうと思ったら、
  自分の心のせいなんですよ!
  人の形をした絵があるんで、
  自分の物語に置き換えて読んじゃう
  仕掛けになってて。ひきょうなり!!
  ぼくらはこの奇妙な性衝動を
  心、と関連づけて読んじゃう。
  帯に糸井darling重里が書いた
  「ありとあらゆるLOVEの正体が!」
  ということばがあるんですが、
  まさしく「LOVE」だと思っちゃって、
  それで、ぐらぐらするんです。
  『テロメアの帽子』のときは、
  遺伝子が人間の形をしていたんで
  すんなり理解できたんですが、
  こんどは昆虫でしょう?!


13のエピソードが収載されてるんだけど、
どの話が面白かった?


──「愛の矢」って話はすごかったです。
  カタツムリは雌雄同体なんだけれど、
  自分ひとりでは受精できなくて
  相手に精子を与えないといけないんだけど、
  そのときに、矢のような形の
  プレゼントを贈りあうんですよね。


そう。その成分がカルシウムだってことがわかって、
カルシウムは卵を産むために必要なものだから、
向こうにとって必要なものをあげるプレゼント、
つまり「愛の矢」だと言われてたわけなんだけど、
ぜんぜんちがったんだよ。
相手が、自分の渡した精子を捨てられないような
化学物質を含む武器だったんですよ。


──こわい‥‥。女王バチの話もすごかったです。

お母さんが、生んだ娘たちを働きバチとして使い、
しかも不妊物質を出して、
彼女たちがコドモを生まないようにしている。
男の子たちは、一生お母さんの世話をして、
娘たちは外に働きに出る。
娘を応援してるのか娘を踏み台にしてるのか
わからないあたり、
松田聖子的だよなあなんて思ったりね。


──松田聖子は昆虫としては正しかったんだ!

昆虫の生態ってほんとに凄くてね、
超低温でも生きられるとか、
体内の水分が20%を下回っても生きられるとか、
真空でも何秒間ならOKだとか。


──地球大進化のなかで、
  地球の重力と環境で適応して
  生き残ってきたのがいまの動物であり人間であり
  ‥‥って話を思いおこすと、
  じゃあ昆虫はどうなんだ! って気がしてきます。


虫って、動物界において、
ほかの動物をぜんぶ合わせたよりも、種類が多いんです。
なのに、海には一匹もいないんですよ。
これ不思議じゃない? 
陸上は占領していると言っていいくらいいるのに。
海には節足動物はいても、昆虫はいないんだよ。


──やっぱり地球外生物ですよ! エイリアンだ!

そう考える科学者がいてもおかしくないよね。
ぼくの興味の発端も、そこなんですよ。
やっぱり隕石のなかに入って
宇宙から来たんじゃないかって。
生命は海から誕生したって言うのにね。


──かねてよりセミが不思議で。
  土中に7年とかいて、
  地上で1週間とかでしょう?!
  あそこまで土中にいるなら、
  土中で交尾しないのはなぜなんだ、とかね。
  時間軸からしてめちゃくちゃですよ。
  人間の暦で7年ですよ?


長いのは13年というセミもいるよ。
これね、不思議なことに素数年なの。
偶数年だと、それを食べる天敵も
2年サイクルで増えて危険だけど、
13年だと次は26年後でしょ?
天敵が生まれにくいっていう仕組み。
アメリカでセミが大発生するサイクルも
13年ですよね。


──清水ミチコさんのニューアルバム
  13年ぶりだそうです。天敵がいない!(笑)

ほんとだよね。

──今回の本をつくるにあたって、
  どのくらい調べる期間があったんですか。


2年くらいですね。
最初は昆虫の生態ぜんぶを
取り上げようと思ったんだけど、
性衝動だけに絞りました。
これ以上拡げても
フォーカスがぼけるだけだなと思って。


──じゃあ次の絵本も昆虫シリーズになるんでしょうか?

もう昆虫は卒業して、次はね、
たぶん、量子力学を絵本にします。
量子力学はめちゃくちゃ面白いんですよ。
たとえば‥‥
(しばらく量子力学の話。
ちんぷんかんぷんなので、割愛させていただきます)


──ごめんなさい、り、理解できません‥‥。
  そういうことは自分ではぜったいに勉強をしないので、
  森川さんのような噛み砕き方をして
  絵本にしてくれる人は貴重なんだとわかりました。
  量子力学にしても、昆虫にしても、
  興味の原点は、ロマンチシズムですか?
  なにが森川さんをつき動かしているんですか?


うーん。神様の存在かなあ。
設計者の意図。
量子力学に関しては、ゲームといっしょでね、
細かい仕様に関しては
ちょっといい加減につくってないか?
っていう興味(笑)。じぶんのつくった生き物たちが
こんなことを観察するとは思わずに、
「いいよいいよ確率で、2分の1でいいじゃん」
ていう感じでつくったんじゃないの?
としか思えないくらいの世界のなりたちだってこと。
昆虫は、自分たち以外の創造物じゃないかっていう興味。
あるていど物理を究めた学者たちは、
神の存在‥‥という言い方ではないけれど
「SOMETHING GREAT」という言い方で、
もうひとつの巨大な意思がはたらいて、
この世界がつくられたと言ったほうが、
よほど説明が簡単だ、と思うようになる人もいるんですよ。
神秘主義に走る物理学者はほんとうに多いです。
遺伝子についても、戦略的な意図を感じて、
それ自体が生き物に見えてくるってことでした。


──帯にあるような
  「LOVEの正体」についてはどうですか!


「こころ」ね。うん、とても興味があります。
最近「脳」と「こころ」については
本をいっぱい読んでるけれど、不思議です。
素っ気無い言い方をすれば、
脳の化学反応のひとつが「こころ」であるっていう
ことになるのかもしれないけど、
それだけでない、なにかがあるはずだと思う。
違って欲しいというロマンチシズムもある。


──楽しみにしてますよー!
  あのう、「ほぼ日」スペシャルで、
  『ヌカカの結婚』の
  立ち読み版を掲載したいんですが。


もちろんです。では、ぼくが昆虫のことを調べ始めて
一番最初に度肝を抜かれたエピソード、
「100人の求婚者」は、どうですか?


──ありがとうございます!

【ヌカカの結婚・立ち読み版】

「100人の求婚者」

なお、読んだ感想をぜひお寄せください。
メールの表題に「ヌカカの結婚」と書いて
postman@1101.comへ送ってくださいね。

いやあ、ほんとに、すごいな、昆虫。
ていうか

(前作)遺伝子
   ↓
(本作)昆虫
   ↓
(次作)量子力学、

っていう森川さんの興味の幅がすごいな。
みなさんも、ぜひ、『ヌカカの結婚』を
読んでみてくださいね。
ぐらぐらしちゃいますから!

ヌカカの結婚
──虫たちの不思議な性戦略


定価:1680円(本体1600円)
Amazonでお買求めいただけます!


追伸:森川さん、こんどはカレー作りに来てくださーい。

森川幸人さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「森川幸人さんへ」と書いて
postman@1101.comへ送ってください。

2005-02-18-FRI

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