坂本美雨のシベリア日記。
一日一日が、かけがえのない一日。
「ほぼ日」には女子高生として登場していた坂本美雨さん。
もうすっかりおねーさんになって、
細やかな心遣いのある、
おちついた文章を書く人になっていました。

2002年4月にTBSのBS-iで放映されたドキュメンタリー
「シベリア鉄道音紀行
 ──坂本美雨・ロシアの音を求めて9000キロ──」
の撮影のため、2001年末から2002年始めまで、
3週間ほどシベリアを旅したときに、
彼女は、毎日ていねいな日記をつけていました。
これが、ほんとうに一日一日を大事にしている感じで、
読んでいて、とても気持ちがいいんです。
『ミーちゃんの日記』に通じる何かがあるんだなぁ。
旅は、極東ウラジオストックから、
シベリア鉄道終着都市モスクワまで。
本人とマネージャーが撮影した
500枚を上回る写真の一部を見ながら、
一緒に旅をしましょう。

******登場人物******
 西野さん
 ロシア語ペラペラ、
 ロシアを
 こよなく愛する
 プロデューサー
 (お父さん)
 上野さん
 激しく厳しい
 ロケばかり
 くぐり抜けて
 きている
 ディレクター
 樋口さん
 美しい
 映像のためなら
 何も惜しまない
 カメラマン
 杉山くん
 主に音声を担当、
 優しいカメラマン
 アシスタント
 藤井くん
 この旅が
 初の遠征ロケ、
 クルー最年少、
 二十歳の
 カメラマン
 アシスタント
 雨宮さん
 坂本の
 名マネージャー
 サーシャ
 女性を愛する
 コーディネーター
 /通訳(旅前半のみ)
 アンドレイさん
 何事にも真面目な
 コーディネーター
 /通訳(旅後半のみ)
 


1/13/2002
シベリア鉄道の旅 DAY 18
サヨナラ。



1時頃Lobby call。
物のパッキングにも慣れたものだ。
ぱんぱんにつまったトランクの中の秩序
(圧縮袋バンザイ!)。
チェックアウトのためロビーに降りると、
なんとそこにはサーシャが!
すっごく懐かしい!
サーシャと別れた後の
エカテリンブルグなどが濃かったので、
サーシャが付いてくれた頃は
ずっと昔のことのように思える。
サーシャの人懐っこさにはほんとにホッとする。

アンドレイさんのことも
毎日一緒にいるうちにだんだん分かってきた。
その真面目さが可愛かったり可笑しかったりするし、
たぶん誤解されやすい人なんじゃないかと思う。
2人の対照的なロシア人と共に時間を過ごせて、
とても興味深い毎日だった。

杉山くんに、最後のマイク付けをしてもらう。
ジーンズのウエストの後ろから、
コードをシャツに通して胸元にマイクを取り付ける。
20回、毎朝こうやってマイクをつけてもらっていた。
それは儀式のような感じになった。
気合いが入る、と同時に、不思議と安心する。
ちゃんと見ててくれる。まかせられる。
独り言も、鼻歌も、誰かとの会話も、
思わず口に出る愚痴も弱音も、
何を聞かれても怖くない。
そういう心強い気持ち。
そう感じられるのも杉山さんの
優れた能力の一部なんじゃないかと思う。
樋口さんに、撮られたい、と思うのと同じように。



ホテルの正面には、
氷でできたクマさんが姿勢よく立っている。
氷の塊が精巧に彫ってあるのだ。
だけどマイナス2度という異例のあたたかさで、
クマさんは少しずつ溶けてきて
足元に水がしみ出している。



膨大な荷物をロケバスに積んで、ホテルを出発。
ロケバスが停まったところは、
セントラルパークのように広い公園の上。
谷のように窪んだ土地の向こうに
巨大なタマネギ大聖堂がある。
半分滑りながら急な坂を降り、公園の中へ。
うっすら雪の積もった散歩道に、人はちらほら。
適当な切り株の上に腰をおろし、
大聖堂をバックに、最後のインタビューの撮影。
今まで書いてきたダイアリーも一部見せる。







上野さんがまとめになるような質問を投げかけてくる。
でもまとまらないことは分かってた。
だけど今朝は今までで一番素直な気持ちだった。
最初からこのくらい優しい気持ちで
いられたらよかったのに‥‥。
いや、でも最初は最初なりに、
できる限りこころを開いてたつもりだった。
ただ、自信もなかったし、
まだ自分のスタンスがつかめていなかったので
ある程度距離を保つしかなかった。
だけど今は、ある意味無防備だ。
昨日のオクジャワ婦人との会話のおかげで、
今自分の心にある課題やテーマを貫き通せば
また少し成長できるだろう、と思えた。
たぶん方向性は間違ってないはずだ。
カメラの前で、そして上野さんに対して、
ずっと漠然と渦巻いていた思いを
なんとか言葉に変換しようとする。
それでもまだまだもどかしい。
まだまだ旅の結論は出ていないし、消化もできていない。
けれど、一つだけリアルに浮かび上がるのは、
それでも理解したい! という衝動と、
理解しようとする意思。
オクジャワ婦人がブラートさんと生涯を共にして
ずっと絶やさなかったその意思。

15時過ぎにすべての撮影が終了!!!
ゆっくり「オツカレ〜!」とテーブルを囲んで
感想を分かち合いたいところだけれど、
一度ハバロフスクへ飛んで
そこから東京へ帰るCREW組と
ここで別れなければいけないので、
みんなでロケバスの外に立ってウォッカの乾杯!
幸せな瞬間だった。



ピクルスの代わりに、つまみは雨宮さんが持っていた
カリカリ梅(笑)。
信じられない、これで終わっちゃうなんて。
西野お父さんと熱いHUG(笑)。
そしてハバ組のロケバスを見送ると、
なんでか無口になる。





上野・雨宮・坂本チームは
フライトまで少し時間があったので
グルジア食堂で遅い昼食を取る。
ものすんごいおいしいスープと、
ナンのようなパンと、お肉。
セルフサーブの、ガヤガヤとした食堂だけれど、
本当に美味しかった。
ハバ組の皆にも食べさせてあげたかった。
18時頃、アエロフロート、モスクワ発。
ここでアンドレイさんとお別れ。
最後までちゃんと見送っていてくれて、
荷物の重さでひっかかった時もきちんと交渉してくれた
(ロシア流に)。
最後の最後まできちんと仕事をする人だ。

シベリア鉄道の中で会った
京都のお医者さんの堀井さんと偶然再会する。
同じ便で帰るらしい。
DUTY FREEなどを見てまわって、
化粧品やらなんやら、きらびやかな世界にくらくら。
オミヤゲにウォッカと、
紐で吊るす木でできたクマのおもちゃを購入。
クマが氷に穴を開けて釣りをしているのが掘ってある。
紐を動かすと腕がちょっと動くようになっている。
他にも、クマがお酒を飲んでるやつとか、
いろいろなバージョンがあるが、みんな素朴で可愛い。
今回、自分の買い物なんてほとんどしなかった。
する必要がなかった。
空港で買うというのも味気ないけれど、
ロシアらしいものが一つくらい欲しいな。
オミヤゲに、と思ったけれど、
このクマさんはたぶん自分のためかな。

飛行機が怖い。飛び立つ時も極度に緊張する。
上野さんは飛行機大好きらしい。
「コイツ、がんばって飛んでる〜」って思うんだって。
(これは私が飛行機が怖いとき、
 今でもいつも思い出し、助けになってる。)
機内はほどほどに混んでいて、
でも一列まるまる空いているブロックが近くにあったので
そっこう移動してごはんも無視して横になって
意識を失うように曝睡。
目が覚めたら明日になっているはず。


*前回の「オクジャワ夫人に会う。」 の回に
 画像を追加しました。ごらんくださいね。

坂本美雨オフィシャルホームページ
「stellerscape」
欧米で大評判のネコ絵本が、
坂本美雨の訳と新曲CDつきで2冊同時発売中!!
11月30日、インストアイベント決定!
詳しくは http://www.miuskmt.com/
欧米で大評判となった2冊のネコの絵本が、
ネコを愛してやまないミュージシャン、
坂本美雨の訳で刊行されることになりました。
かわいい絵とユーモアあふれる大人のための絵本です。
訳者が、本書にインスパイアされて歌った
新曲のCDつき!
なんと「クラムボン」のミト氏がプロデュースし、
念願のユニット結成となりました。
切なく、あたたかな気持ちになる名曲です。
ネコがとりもつ、絵本と音楽の
幸せなコラボレーションです。

『ネコがよろこぶ"ゴロゴロ"のツボ
 Know your cat's Purr Points』



ネコ好きのおばあちゃんである著者が、
可愛いイラストを交えながら、
ネコが、気持ちよさについ
"ゴロゴロ"とノドを鳴らしてしまうツボを、
ユーモラスに解説します。
紹介するツボは計19。
触りかたのテクニックとネコの反応がセットとなり、
実用書としても大いに役に立つ一冊。

『人生がうまくいくネコの9つの習慣
 the 9-life habits of Highly Effective Cats』



「人間の子どものやり過ごしかた」
「犬防御法」
「あなたの中の子猫心を育む」など、
ネコが、充実し、
洗練された人生を歩むための9つの秘訣を説く
"ネコ向け自己啓発ブック"です。
かつてのベストセラー『7つの習慣』の
ネコ版パロディとでもいえる、
ネコ好きなら大笑いする、
ユーモアに満ちた大人のための絵本です。

『ネコがよろこぶ"ゴロゴロ"のツボ』

『人生がうまくいくネコの9つの習慣』

マーガレット・ウッドハウス 著
坂本美雨 訳

★坂本美雨がネコを歌った、
 オリジナルCDつき(各冊1曲)★
定価 各本体1300円+税 11月17日発売
体裁 A5変型(CDよりひとまわり大きいサイズ)
   各72ページ オールカラー
詩画集『aqua』
長年書きためてきた詩や散文と、
山口由起子さんの絵がいっしょになり
詩画集『aqua』ができました。
リトルモアより刊行です。
(定価1,400円)


ジョアン・ジルベルトの
トリビュートアルバムに
参加しました!

『フェリシダージ・トリビュート・トゥ・
 ジョアン・ジルベルト』


9月3日発売!!
東芝EMI/TOCT−25177/
¥3,000(税込)



9月に初来日したボサノヴァの神様、
ジョアン・ジルベルト初来日記念アルバムに
ナタリーワイズと一緒に1曲参加しました。
ジョアンのカヴァーを中心に、
ジョアンの歌声にインスパイアされた
オリジナル曲も収録予定です.

<参加アーティスト>
宮沢和史・畠山美由紀+Cholo Club・
小野リサ・THE BOOM・
Nathalie Wise&坂本美雨・
Ann Sally・青柳拓次・
saigenji・CHORO AZUL・
ナオミ&ゴロー・Dois Mapas・
中村善郎・AURORA・
So Aegria(順不同・敬略)

くわしくはこちらのサイトへ

坂本美雨さんプロデュースのアクセサリー
“aquadrops”が誕生しました。
aquadrops(アクアドロップス)は、
坂本美雨さんがデザイン・製作、
トータルプロデュースを手がける
オリジナル・アクセサリーです。
美雨さんからのメッセージをどうぞ!
aqua drops...

揺れる水の粒。
したたる、春の慈雨。
冷たい水に触れる、指先。

透明感のある繊細なエレガンス、
毅然としたハードさ、フェミニンな揺らぎ。
耳から首筋、鎖骨へのしなやかなラインは
女性の美しさの象徴のような気がします。
そこを、水滴が一粒流れ落ちるような...。
そんなイメージを抱いています。

幼い頃から、母親や友人や自分のために
ビーズでアクセサリーを作るのが
好きでたまりませんでした。
最近、人を綺麗に見せるラインの洋服が
どんどん消えていき、
女性がドレスアップして行く場所も少なくなった。
そんな中で、おもわず背筋がピンと延びるような、
髪をキュッとアップにして出かけたくなるような。
生活の中で愛しい人や物を
真っすぐに見つめられるような。
自分が大切に作ったピアスを
耳にかける時に感じる、そんな気持ちを、
身につける一人一人にも感じてもらいたいと思い、
一つ一つ作り始めました。

坂本美雨

http://www.miuskmt.com/
 
限定通信販売もスタート!

aquadrops取り扱い店
<20471120>
東京都渋谷区神宮前3ー29ー11 
03ー5410ー2015
12時〜20時
<RICO>
渋谷区恵比寿西2ー10ー8 
03ー5456ー8577
12時〜20時

坂本美雨さんへの激励や感想などは、
メールの表題に「坂本美雨さんへ」と書いて
postman@1101.comに送ってください。

2003-11-26-WED

HOME
ホーム


いままでのタイトル

音楽やってる女子高生通信編
1998-11-23  vol.1 初投稿
1998-12-07  vol.2 飛行機の中で その1
1998-12-16  vol.3 飛行機の中で その2
1999-01-18  vol.4 年末年始
1999-02-01  vol.5 出かける時は忘れずに!
1999-02-09  vol.6 NY高校生活PART1
1999-04-12  vol.7 NY高校生活PART2
1999-05-25  vol.8 NY高校生活PART3
1999-06-02  vol.9 水
1999-08-09 vol.10 卒業
坂本美雨のシベリア日記編
2003-07-03 シベリア鉄道の旅 DAY 1
新潟からウラジオストックへ。
2003-07-10 シベリア鉄道の旅 DAY 2
ロシア号、モスクワーウラジオストック。
2003-07-17 シベリア鉄道の旅 DAY 3
ハバロフスク着。
2003-07-24 シベリア鉄道の旅 DAY 4
ハバロフスクともお別れ。
2003-07-31 シベリア鉄道の旅 DAY 5
ついに大晦日。
2003-08-07 シベリア鉄道の旅 DAY 6
元旦、ウラン・ウデで。
2003-08-14 シベリア鉄道の旅 DAY 7
バイカル湖を見ながら、イルクーツクへ。
2003-08-21 シベリア鉄道の旅 DAY 8
バイカル湖、湖底の音。
2003-08-28 シベリア鉄道の旅 DAY 9
バイカルの見渡せるイルクーツクのホテルで。
2003-09-05 シベリア鉄道の旅 DAY 10
旅は折り返し、アンガラ川のほとり。
2003-09-11 シベリア鉄道の旅 DAY 11
イルクーツクを離れる前に。
2003-09-18 シベリア鉄道の旅 DAY 12
車中にて、20時が3回訪れた日。
2003-09-25 シベリア鉄道の旅 DAY 13
午後、エカテリンブルグで。
2003-10-02 シベリア鉄道の旅 DAY 14
ウリァーナのエカテリンブルグ案内。
2003-10-10 シベリア鉄道の旅 DAY 15
ウリァーナの家。
2003-10-16 シベリア鉄道の旅 DAY 15
ウリァーナとの別れ、市場、
そしてウオッカの夜。
2003-10-23 シベリア鉄道 DAY 16
最終目的地点モスクワへ
2003-10-30 シベリア鉄道 DAY 17
モスクワで、オクジャワさんの足跡をたずねて。
2003-11-06 シベリア鉄道の旅 DAY 17 PART 2
オクジャワ夫人に会う。