ウォルター・ウィック × 糸井重里  A Pure Joy For Me  『ミッケ!』の作者と翻訳者の対談。
 
#3 物語のつくり手とゲームのつくり手。
 
糸井 『ミッケ!』にはウィックさんの作家性が
強く反映されているとはいえ、
実際に本を制作するときには、
たくさんのスタッフが関わるんでしょうね。
ウィック そうですね。
糸井 何人くらい?
ウィック ええと、フルタイムのスタッフがふたり。
あと、模型づくりの専門がふたり。
それから、アシスタントとして、
衣装づくりや雑務をこなしてくれる人がふたり。
この6人で、だいたい9ヵ月くらいかけて
つくっています。
糸井 やっぱり、チームが必要なんですね。
そうやってつくったものを、
写真に撮る人もいるわけでしょう?
ウィック それは、私が。
糸井 ん?
ウィック 私のほんとうの専門は、写真ですから(笑)。
糸井 ああ、そうか、そうか、失礼しました(笑)。
もともとウィックさんはカメラマンでした。
いまや、本の文章も手がけてらっしゃるから
つい、忘れてましたけど。
ウィック そう、だから、6人でつくったものを
ぜんぶチェックして、仕上げて、
最後に、カメラのこっち側に立つのが、私なんです。
糸井 そうでしたね。
あの、『ミッケ!』がスタートしたときって、
セットをイチからつくるのではなくて、
部屋にあるふつうのものをつかって
ぜんぶつくっていたと思うんですけど、
シリーズが続くにつれて、
オリジナルのフィギュアやセットを
テーマに合わせてつるようになりましたよね。
でも、完全に新しくつくるのではなくて、
部屋にあるふつうのものも、上手に混ぜている。
その加減がとても素晴らしいなと
いつも思っているんですけど。
ウィック ありがとうございます。
1冊目の『ミッケ!』から、
撮影も、なにをどんなふうに隠すかも、
私がやっているので、
『ミッケ!』でつかったものは、
じつは、ぜんぶ、残っているんですよ。
糸井 あー、なるほどね。
だから、最初の本に出てきたようなものが
ずっと出てきたりするんですね。
たとえば、同じ指ぬきとか、カエルが、
いろんなところに出てきたり。
ウィック そうです、そうです。
ほんとうにたくさんありますよ。
糸井 (笑)
ウィック そして、おっしゃったように、
それらのふつうのものをどのくらいつかって、
オリジナルのものをどのくらいつくるかっていう
バランスはほんとうに悩むところなんです。
最初の『ミッケ!』は、
ほとんど部屋にあるものでできています。
一方、さっき話に出た『こわーいよる』なんかは
ほとんどぜんぶをオリジナルでつくっています。
大切なことは、いろんなものが集まって、
こういうひとつの絵画的なもの、
ひとつの世界になっているということです。
子どもたちが見ると、たぶんファンタジックで、
自分の知らない世界のように見えるけれど、
最後に、あらためてこの絵を眺めてみると、
自分の知っているふつうのものとかオモチャが
あちこちにたくさんある。
そういうふうにしたいんです。
糸井 なるほど。
『ミッケ!』という本をつくりあげるには、
ストーリーをつくる作家の要素と、
それからゲームをつくる作家の要素、
このふたつの要素がないと
つくれないと思うんですけど、
つくるときは、どちらが優先されるんでしょうか?
あるいは、バランスをとりながら?
ウィック ああ、それはとても興味深い視点です。
本をつくるとき、
私は物語のつくり手としての自分と、
ゲームのつくり手としての自分に引き裂かれます。
両者はときどき対立し、そのたびに私は
どちらの立場でいるべきか悩みます。
糸井 そうでしょうね。
ウィック でも、はっきりしていることは、
どこになにを隠して、
どういうふうに探してもらうかという遊びは、
最終的に、ぜんぶの映像が
できあがった時点で可能になるんです。
なぜなら、テキストのなかに、
どのくらいの手がかりを残すか、
あるいはあからさまに書くか、といったことは
最初に決められないんですよ。
つまり、文章を書いて、
それを映像化することは難しいですけれど、
逆ならできるんです。
糸井 あーー、なるほど。
ウィック たとえば‥‥そうですね、
ハロウィーンをテーマにした
『ミッケ!』をつくるとします。
そうすると、まずは、そのシーンに
ぜひ入れたいものをリストアップしていきます。
たとえば、ハロウィーンですから、
コウモリとか、満月とか、墓石とか、
ガイコツとか、怖ろしい木だとか‥‥。
でも、それらは、ハロウィーンという
絵をつくるときに必要なエレメントであって、
絵の中に隠すエレメントではないはずですよね。
糸井 そうですね。
ウィック だから、最初にリストアップしたものは
あくまでも映像をつくるためのもの。
子どもたちに探してもらうエレメントは、
絵のなかから新しく見つけなければならない。
だって、「ここに満月がある」とか
「コウモリはここだ」とか、そんなの、
見つけてもおもしろくないでしょ。
糸井 (笑)
ウィック ですから、基本的には、まず写真です。
ときどき、わざとキーとなるアイテムを
写真のなかに入れなかったり、
あるいは、お話を進めるために
最初に提示したり、ということはしますけれど。
糸井 とってもいいアイテムが見つかったら、
最初からそれを探させるつもりで
写真のなかに忍び込ませておく、
ということもなさるんでしょうね。
たとえば、絵はがきのなかに女の子が描かれていて、
その女の子が絵本を持っていて、
その絵本の表紙がアヒルだったりすると、
その絵はがきを見つけたときは、
「あ、これでアヒルを探させよう」というふうに。
ウィック あります、あります。
もう、見つけたときに「これだ!」って思ったりね。
でも、その一方で、ときどきあるのが、
「これをこういうふうに隠して、
 こういう文章を書こう」って思いついて、
自分が世界一賢いような気分になって、
いざ写真をとってみたら、
ぜんぜん使い物にならない、みたいなことで。
糸井 ははははは。


(つづきます)
 
こんなものをつくってみました。 すごく時間があまってたらあそんでください。  ほぼにち ミッケ!
2013-02-28-THU
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