第1回 森の長城プロジェクト。
第2回 瓦礫を埋める。
第3回 おもしろいところ。
第4回 できることのベストを狙う。
第5回 まだらの森。
第6回 ジャンプインしたいな。
第7回 津波と洪水。
第8回 エレキ合戦。
第1回 森の長城プロジェクト。
糸井 今日はお集まりいただき、ありがとうございます。
細川 ありがとうございます。

糸井 みなさんをかんたんにご紹介させていただきます。
こちらは、慶応大学の先生で、
NPO法人鶴見川流域ネットワーキング
三浦半島小網代の流域の
自然保全をなさっている岸さんです。
よろしくお願いします。

糸井 こちらは植物卸問屋さんの5代目で、
プラントハンターの清順くんです。
世界中、飛び回って、
いろんな「緑のもの」を日本に持ってきています。
清順 よろしくお願いします。

糸井 で、こちらは‥‥陶芸家の‥‥。
細川 細川です。

一同 (笑)
糸井 今日は陶芸家の立場ではなくて、
「森の長城プロジェクト」
立ち上げられたということで
おいでくださいました。
細川 はい、よろしくお願いします。
糸井 細川さんからこの
「森の長城プロジェクト」の
お話を聞いたとき、ぼくはまず、
とてもおもしろいなぁと思ったんです。
けれども簡単に
「はい、そうですか」「なるほど」と
のみこんじゃうと、広がりがありません。
ある程度、自分たちの足で歩いて、
自分たちなりの考えに
たどりつきたいなと思いました。

「とにかくその話を、ぜんぜん違うタイプの人と
 一緒にしてみませんか?」
と、細川さんに申し上げて
みなさんにこうして集まっていただきました。
そのときすぐに思いついたおふたりが、
ここに来てくださって。
はい(笑)。
清順 何ができるか、わかりませんが。
糸井 東日本の海岸の堤防を
こうすればいいんじゃないか、
という話だけにとどまらず、
緑全般に広がる、たのしく大きな話に
していきたいなと思っています。
細川 どうぞよろしく。
糸井 ではぼくから、まず
ちょっとしたきっかけとなればいいな、という
話をさせていただきますね。

これはこれまで何度となく
原稿に書いてることなんですけど──
飛行機の窓から日本を見ると、緑色なんです。

飛行機が着陸する前には、
どこの国でも、その大地が見えます。
茶色とか白っぽいとか、いろんな色をしています。
日本だけは、どこを通っていても、たいてい緑色。
植物が茂っているということは、
水がいいということでもありますし、
生きものが育ちやすい、住みやすい、
ということでもあると思います。

この緑色の国にいるということの喜びを
ぼくらはもっとわかっていたいな、という
気持ちがあります。
しかし、逆にいえば、
だから住みにくかったんだよ、
ということもあるかもしれません。

緑や水、人が、ひとつになって育っていく
未来への見通しの中で、
細川さんたちが関わっている計画も、
広がりをもっていくといいな、と思います。

細川 飛行機から見た緑は、
日本が特別多いイメージですか。
糸井 ええ、ぼく個人的にはそういう印象です。
細川 古事記でも、
「やまとは国のまほろば たたなづく 青垣」
と謳われているように
やはり、緑が
日本のイメージなのでしょう。
「ひと言で、日本は何か?」と言われたら、
私も、緑だと思います。

熊本の知事をしているころから
そういうイメージがありました。
熊本では、ひとつの集落にひとつ、森を作ったり
空港に「空港の森」を作ったりしたのですが、
そのときに、今回の
森の防波堤作りの提案者である、宮脇昭さん
(みやわき・あきら 横浜国立大学名誉教授)
と、ご縁ができました。
清順 この計画は、
瓦礫を埋め込んだ丘を作って
津波を防ぐ堤防にし、
そこに植樹をしていく、というものなんですね。

細川 そうなんです。
被災地の太平洋側に、
土地本来の森を構成していた
シイ、タブ、カシなどの照葉樹を植えて
防潮堤にしようという計画です。

東日本を復興するためには、
まず瓦礫を片づけないと、進みません。
瓦礫を活かして、そのマウンドのうえに
その土地本来の植生の木を植えていくのが
いちばん現実的な方法じゃないだろうか、
ということで
宮脇さんと、瓦礫を活かすプロジェクトを
立ち上げることになったのです。
糸井 瓦礫を活かして。
細川 はい。東日本の沿岸300kmに
幅30mから100mぐらいの
瓦礫でできたマウンドを作り、
10年間で9000万本の木を植えて
森の防潮堤を作ろう、という計画です。
ずいぶん大がかりな話ですが、
具体的には、5mから10mぐらいの高さの
マウンドを瓦礫などで作っていく、
ということになります。

瓦礫がいつまで残っているか、
今後10年間で被災地がどうなるのか、
いまはわかりません。
この7月のはじめに
財団が立ち上がったばかりで、
すべてはこれからです。
東日本を中心に、
植樹をしたり苗を作りたい、という
さまざまなグループがあります。
松でやりたいという人もあれば、
桜を植えたいという人たちもいるようですが、
そういうところとも
一緒にやっていけたらいいですね。
糸井 国のほうは
どういう関わりをしているんでしょうか。
細川 林野庁や復興庁、国土交通省、
さまざまなところが関わっています。

国交省はやはり
「コンクリートの堤防」ということですが、
それでは海が見えなくなってしまうという
意見も寄せられて、地元の自治体も
「森派」との調整がなかなか大変なようですね。

やっぱりコンクリートでてきた
高さ17mの堤防というのは
抵抗があるんじゃないでしょうか。

(つづきます)
2012-09-24-MON
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