第8回:釣りとお笑いは似てる?

又吉
それにしても、
どちらがより釣りを好きかで
殴り合いにまでなる人がいるなんて、
釣りは、よっぽど魅力的な世界なんですね。
糸井
釣りはものすごくおもしろいです。
海の底で、自分のルアーや餌が
どういうふうに動いて
どんなふうに魚が寄ってくるのかというのは
みんな、自分が想像できていると
思っているんです。
でも、釣りを教える人から
「水の底を想像できますか」と聞かれて
「はい、できます」っていっちょ前に言うと、
「カラーで想像できてますか」
って聞かれますから(笑)。
「できてません」と言うと、
「カラーで見れるようにならないとダメですね」
みたいなことを言われるんです。
又吉
はぁ~。おもしろいですね。
糸井
釣りにもいろいろあって、
ヘラブナ釣りなんかだと、
一箇所にじっと止まってる釣りなんで、
浮きの動きを見ながら
水の下で行われてることを想像して、
目だけで釣りしてるんです。
又吉
目と想像力で。
糸井
そう。
逆に、ブラックバスを釣るときは、
ブラックバスがいるところを
どんどん攻めていきますから、
もう戦争みたいなものなんです。
プロの大会だと、
上からヘリコプターで見て、
水の流れをチェックしてたり。
又吉
へぇえ。
糸井
で、東洋思想みたいなものを
取り入れてるプロの人とかだと
魚の気持ちを体感するために
裸で前日を過ごして、
当日向かう、みたいな(笑)。
バカだなぁ、
でも、俺はあいつのファンだなぁ、
みたいな気持ちになるんですよ。
又吉
応援したくなりますね。
糸井
そうそうそう。
又吉
その人が勝ったら、
ちょっと嬉しいですね。
糸井
そうなんです。
で、やっぱりトップ取ってる人は
トップ取ってるだけの力があります。
又吉
ただの運ではない。
糸井
運ではない。
でも、その人よりも
若い有望な人が出てきたときに
「彼、勢いがありますからね」
みたいなことを言うけど、
その「勢いがあるから」の人に抜かれっぱなしで、
王座が代わるなんてこともあるわけです。
あ、これはお笑いと似てるかもしれない。
理屈で全部解説できても、
負けるものは負ける。
又吉
あ、それは似ていますね。
糸井
釣りはちょっとおもしろいです。
又吉
おもしろそうですね、
そう聞くと。
糸井
いま、全然やってないのに、
「趣味は何ですか」と言われたら
「釣り」ですね。
行きたいと思うだけでうれしくなります。
「ああ、釣りしてえなあ」
「したいねえ」という話を
釣りの好きなやつとしてると、
もうそれだけで猥談のようですよ。
‥‥あ、いつか釣りの小説でも(笑)。
又吉
糸井さんがお書きになられたほうがいいです。
メッチャおもろいですよ。
糸井
ぼくはね、そうやって
笑って済ませちゃうタイプなんですよ、多分。
何かを固定して形にするというよりは、
「揉んで動かす」だけで
おもしろくなっちゃうというか‥‥。
又吉
核にある、おもしろい部分に
触れたいってことなんですね。
糸井
そうそうそう。
又吉
‥‥さっきの、裸で1日過ごす人というのは
魚の気持ちを体感するために
感覚を敏感にして行くわけですよね。
その人の心の動きを想像するだけで
絶対おもしろいでしょうね。
糸井
おもしろい。
で、その人も、
どこかで自分に疑いを持ってる部分が
ないとは限らないですよね(笑)。
又吉
コントだったら、
それで、ちょっと‥‥風邪引いたり(笑)。
糸井
風邪いいね(笑)。
あとは、釣り以外だと、
いまやってみたいのは
ネイチャリングと言って、
自分の気配を消して
肩とか頭に鳥をとまらせる遊びなんです。
又吉
へぇ。
糸井
ずっと憧れていて、
そういう教室があったら
行ってみたいなと思っているんです。
又吉
完全に自然と
一体化するってことですか。
糸井
鳥にとって危害を加えない何かに
自分がなるんです。
鳥って、サイとかの上にも
とまってたりするでしょう。
人間にもそれができるっていうのは、
ありうると思うんですね。
それをちょっとやってみたいなと
思っています。
又吉
おもしろそうですね。
糸井
手でセミを捕る、みたいなことって、
ぼく、わりと得意なんです。
みんな網で捕るけど、
よーくセミとやりとりすると、
大丈夫、はい大丈夫‥‥って手で捕れる。
又吉
へえ。
糸井
犬との関係とも
けっこう似ているんです。
又吉
呼吸を合わせられるんでしょうね、きっと。
糸井
そうでしょうね。
そういうことをやるのが
残されたたのしみなんです。
(つづきます)
2015-04-08-WED