もくじ
第1回47歳の青年、田中 泰延さん 2017-03-28-Tue
第2回「これいいなぁ」ってお話したいんです 2017-03-28-Tue
第3回ご近所の人気者が一番すごい 2017-03-28-Tue
第4回会社を辞めた理由は「ブルーハーツ」 2017-03-28-Tue
第5回矢沢永吉と鶴瓶の共通点 2017-03-28-Tue

「40歳は、戸惑う」に共感する39歳のタオルソムリエです。メーカーでマーケティング・広報を担当しています。妻がジャイ子です。

田中泰延×糸井重里</br>アマチュアのその先に

田中泰延×糸井重里
アマチュアのその先に

担当・コットン

第3回 ご近所の人気者が一番すごい

糸井
僕のような、アマチュアが辿り着く先は、
「ご近所の人気者」だと思うんです。
田中
本当にそこですね(笑)。「ご近所の人気者」。
糸井
「ご近所の人気者」っていうフレーズは、『じみへん』で、
中崎タツヤさんが、書いた言葉なんですよね。
それをうちのカミさんが、「俺だ」って言ったんですよ。
田中
『じみへん』はもう、仙人くらいの、スタンスの
崩れなさですよね。

糸井
凄味がありますね。主人公の青年から見て、
お母さんがやってることがすごく馬鹿に見
えるんですね。庶民の家ですから。青年が、
「母さんは、何かものを考えたことあるの?」って
怒りをぶつけるんですよ。つまり自分の血筋に
対する怒りですよね。
田中
はい。
糸井
そうすると、お母さんが、「あるよ。寝る前にちょっと」
って言うんですよ。
田中
(笑)
ものすごい凄味ですね、それは。
糸井
でしょう?青年がどういう顔したかも覚えてないん
ですけど、一生忘れられないと思った。
僕は、「寝る前にちょっと」を探す人なんです(笑)。
「寝る前にちょっと」の人たちと一緒に
遊びたい人なんで(笑)。

田中
はいはい、わかります(笑)。僕が会社を辞めた理由の
1つには、人生、すごい速く感じてきたなと思って。
80いくつで死んだ、うちの祖母さんが死ぬ前に言った、
忘れられない一言があるんですよ。
「あぁ、この間18やと思ったのに、もう80や」って(笑)。
一同
(笑)
田中
60数年のこの時間をピョーンって、そりゃあ速いわなぁ
っていう。
糸井
それって、「ご近所の人気者」の話なんですよね。
田中
そうですね。
糸井
地理的なご近所と、気持ちのご近所と、両方あるのが
今なんでしょうね。アマチュアであることと、
「ご近所感」って、隣り合わせなんですよ。
田中
うんうん。

糸井
アマチュアてことは、変形してないってことなんですよね。
プロであるってことは、すなわち、変形している。
田中
変形?
糸井
これは吉本隆明さんの受け売りで、吉本さんはマルクスの
受け売りなんですけど、「自然に人間は働きかけて、
働きかけた分だけ自然は変わる」。
田中
はい。
糸井
わかりやく言うと、「ずっと座り仕事をして、ろくろを回す
職人さんがいたとしたら、座りタコができているし、
指の形も変わっているかもしれないように、反作用を
受けてるんだよ」と。「1日だけろくろを回している人には
それはないんです」って。
田中
そうですよね(笑)。付かないですね。
糸井
でも、「ずっとろくろを回している人は、職人化して
くるわけです。職人化することがプロになるという
ことであると僕は思っていて。だから、僕と泰延さんの
「超受け手でありたい」っていうのも、すでに職人に
なってるわけですよ。
田中
そうですね。
糸井
その意味では、アマチュアには戻れないだけ
体が歪んじゃってるわけです。
田中
はいはい。

糸井
でも、どの部分で歪んでないものを維持できているか
っていうところに、「ご近所の人気者」があって。
田中
なるほど(笑)。
糸井
うち、夫婦ともアマチュアなんですよ。
田中
えぇ?奥様は、プロ中のプロのような気がするんですけど。
糸井
違うんです。「プロになるスイッチ」を入れて、その仕事が
終わったら、アマチュアに戻る。そういうタイプの人は、
世の中にいて、プロから見たら、卑怯ですよね。
田中
そうですよね。
糸井
カミさんは高い所とか、本当は苦手なんですよね。
「じゃあ、仕事ならやる?」って言うと、「やる」って。
田中
おっしゃるんですね(笑)。
糸井
「できるに決まってる」と、「仕事じゃない時に
絶対しない」は両立なんですよ。
田中
なるほど。

糸井
プロだと、「次もあるから、それやっちゃだめだよ」とか、
「そこで120パーセント出したら、そういうイメージが
付いちゃうから、だめだよ」みたいなことを考えますけど、
アマチュアだと、へっちゃらなんですよね。
たぶん、今、泰延さんは、生きていく手段として
問われていることが山ほどあって。
田中
はい。
糸井
みんなが興味あるのは、泰延さんが社会に機能するか
どうかということばかりで、「何やって食って
いくんですか?」、「何やって自分の気持ちを維持
するんですか?」って聞かれて、面倒くさい時期ですよね。

田中
そうですね。今まで担保されてたものがなくなったので、
みんなが質問するし、僕もまぁ時々、どうやって
生きていこう?って考えるし。糸井さんが、40代の時に、
広告の仕事を一段落つけようと思った時に、こういうことに
直面されましたか?
糸井
まさしくそうです。冒険ばかりでしたけど、平気だったん
ですよ。理由の1つは、俺よりアマチュアなカミさんが
いたことはでかいんじゃないかな。
「こういうことになるけど、いい?」って、聞いた
覚えもないし、後で「あれは聞くべきだったかな」
みたいなことを聞いたら、「いや、別に」って。
たぶん、自分が働くつもりでいたんじゃないですかね。
<つづきます>
第4回 会社を辞めた理由は「ブルーハーツ」