01 


ニューヨークの朝食いろいろ。

ほぼ日
ニューヨークの人たちってふだん
朝食にどんなものを食べているんですか?
佐久間
朝食といえば、卵料理とパンか、
グラノーラとヨーグルトが定番でしょうか。
あと、クロワッサンもよく食べますね。
ほぼ日
外で食べたりもしますか?
佐久間
ええ、わりと、朝食ミーティングが
メジャーだったりするんです。
そういうときはカフェとか、
朝食を出すレストランなどに行って食べますね。
あくまでわたしの印象ですけど、
忙しい人は朝に会うのを好む気がします。
ほぼ日
ニューヨークに朝食を出すレストランは
多いんですか?
佐久間
マンハッタンのウエストビレッジなどに
けっこうありますよ。
でもみんな、わりと決まったお店に行きますね。
たとえばニューヨークで昔から
おしゃれなレストランを数多く作ってきた
キース・マクナリーという人がいるんですけど、
彼の店は、だいたい朝ごはんをやっているので、
そこに行ったりします。
ほぼ日
そういえば、キース・マクナリーさんの
お店ではないのですが、この前行ったときは、
この「BRUTUS」で紹介されている
「ラファイエット(Lafayette)」で朝を食べました。
佐久間
「ラファイエット」はけっこう新しいかな。
おいしかったですか?
ほぼ日
はい、とても。
エッグベネディクトを食べたんですが、
お店の雰囲気も良くて、たのしかったです。
佐久間
そう、だいたい朝食レストランに行くと
エッグベネディクトはありますね。
あと、メキシカンレストランとかだったら、
わたしは卵のブリトーをよく食べてますね。
チョリソーが入ってたりして、おいしいんです。
ほぼ日
佐久間さん自身は
外で食べることが多いですか?
佐久間
いえ、朝食ミーティングなどがなければ、
基本的には家で食べますね。
ただ、わたしは外では注文するけど、
家ではしっかり食べると眠くなるから、
夏はジューサーで作った野菜ジュース、
冬はホットレモネードを飲んでます。
ほぼ日
「アメリカではジュースが流行ってる」
という噂を聞いたことがあるのですが、
ジュースも流行ってますか?
「ジュースを飲んでデトックスする」みたいな。
佐久間
「コールドプレスジュース」でしょう?
みんながみんなではないけれど、
お店はすごく増えてるし、流行ってるとは思います。
低温でゆっくり絞るから、野菜や果物の
栄養が損なわれにくいと言われてますよね。
ただ、高いんですよね。
ほぼ日
そうなんですか。
佐久間
ブルックリンのブッシュウィックという地域に
住んでいる友達の男の子で、
毎日朝ごはんに飲んでる子がいるんですけど、
そこまで物価の高くないブッシュウィックでも、
そのジュースはたぶん、7、8ドル。
マンハッタンではもう少し高い値段のことも
あるくらいの値段なんです。
いろんなものが入ってるし、そうなるのもわかるけど、
その値段って、毎日続けるには、
ちょっと負担の大きい金額ですよね。
ほぼ日
つまり、朝ごはんに1000円くらい、
ということですもんね。
佐久間
そうなんです。
だけど、彼が言うには、
「1日1食それを飲めば、
 昼と夜はそんなに栄養をとらなくても大丈夫」
らしいのと、
「コールドプレスをできるジューサーは
 機械自体が300~500ドルくらいするから、
 家で作ってもすごく高いし  、
 そう思えば、お店の値段はそんなに高くない」
ということなんだそうです。
ほぼ日
たしかに、そういう考え方もできますね。
佐久間
でも、わたしの場合は、
家から歩いて行けるジュース屋さんって、
速足で7分くらいだし、絶対行かなくなりますよね。
だから、わたしは家のジューサーで
コールドプレスではないけれど
ガーッとジュースを作って飲んでます。
これはこれで、おいしいです。
ほぼ日
グラノーラなどもメジャーですか?
佐久間
グラノーラ、わりとメジャーですね。
ヨーグルトと一緒に食べたりとかします。
あと、わたしはオートミールがけっこう好きなので、
一時期、朝はオートミールにしてました。
すごく消化がいいから、
お腹いっぱいになるけど眠くならないんです。
ほぼ日
オートミールって、
牛乳を入れて食べるんですか?
佐久間
入れる派と入れない派とがいますね。
あと、塩を入れたりとかします。
ほぼ日
ニューヨークでは、一般的にジャムは
どんなかたちで食べられるんでしょうか。
ジャムトースト?
佐久間
外で出てくるジャムは、スコーンとセットですね。
いっしょに塩バターや甘くないクリームが
ついてくることもあります。
店によって、ちょっと違いはありますけど。
ほぼ日
たとえばニューヨークだと、
外でスコーンとジャムを食べたら、
いくらくらいですか?
佐久間
スコーンとジャムのセットで
コーヒー飲んで、チップを払って、
12、3ドルとか。
おそらく10~15ドルの間(※)です。
(※1ドル=120円の場合、1200~1800円)
チップがあるので、ちょっと高くなるんですよ。
ほぼ日
飲み物はコーヒーが定番ですか?
佐久間
そうですね、コーヒーは常に人気です。
でも最近、お茶の店がすごい増えています。
紅茶の種類もすごく増えました。
ほぼ日
じゃあ、ニューヨークの人たちは
ジャムトーストとかってそんなに食べないですか?
佐久間
そうですね‥‥付けてる人もいるのかな。
でも向こうでは、日本の食パンみたいなものを
ほとんど見かけないんですよ。
あんなふうに中が白くてふわふわしているパンは
めったに見ないんです。
もっと硬い、バケットみたいなものとか、
大きくて丸いサワードウなどは見るんですけど。
あと、日本人の感覚からすると、
パンは基本的にぜんぶ、ちょっと硬いと思います。
ほぼ日
パン屋さん自体は多いですか?
佐久間
街を歩いていると、パン屋さんはよく見かけます。
わたしの住んでいるグリーンポイントという地域は
もともとはポーランド人街だったので、
ポーランドのパン屋さんとかもありますね。
フランスのパン屋さんはけっこう見ます。
ほぼ日
ドーナツのお店も多いですか?
佐久間
たくさんあります。
ただ、ドーナツは、ごはんというよりも
おやつですね。
そういえば、日本人の松尾由貴さんが作っている
「ニューヨークドーナツマップ
(New York Doughnut Map)」
って知ってます? 縦長の。
ほぼ日
あ、見たことあります。
佐久間
あのマップ、いいですよ。
松尾由貴さんは、ニューヨークの
エスニック料理のことにかけては、
彼女の知識に勝てる人はいないくらいの
専門家の人なのですが、
彼女ならではの視点がいいんです。
わたしも雑誌の『& Premium』の連載のなかで、
食べものコーナーを担当してもらっています。
ほぼ日
もし、ニューヨークで安く朝食を食べたいときは
なにがおすすめですか?
佐久間
安く済ませたいなら、デリの持ち帰りかな。
デリって、あちこちの角にある
コンビニみたいなお店なんですけど、
肉やハムを売ってるような店では
だいたい朝食もやってて、持ち帰りできるんです。
丸パンやクロワッサンやベーグルなどに、
卵とハムとチーズとかで、3ドルくらい。
鉄板があるお店では焼いてくれたりもします。
「じゃあ、アメリカンチーズで」とか、
「ちょっとケチャップ入れて」とか、
「塩と胡椒で食べます」とかオプションはありますね。
ほぼ日
いまの「デリ」というのと
「ジューイッシュ・デリ」というのは
別ものですか?
佐久間
ジューイッシュ・デリは、ユダヤ系の人たちが
得意なものを売ってるお店なので、
いまの話のものとは、また別ですね。
ジューイッシュ・デリだと、
パストラミサンドやベーグルサンドとかを
食べられます。
いま言ってたような「デリ」は
アラブ系や韓国系が多いですね。
24時間営業のところもわりとあって、
基本的な調味料とかお菓子とかタバコとか、
いろんなものが買えるんです。
ほぼ日
佐久間さんの行きつけの
朝ごはんのお店ってありますか?
佐久間
実は、ウィリアムズバーグにあった
「バケリ(Bakeri)」という店が
最近うちの近所に支店を出したんです。
いつ行っても、食べたことのない
ペストリーを食べられる店です。
あとちょっと遠くなるけど、
ウィリアムズバーグとグリーンポイントの間に、
マカレンパークという公園があって、
そこに「ファイブリーブス(Five Leaves)」
という有名な店があるんです。
そこは、亡くなった俳優のヒース・レジャーも
投資してたというイケてるお店なんですが、
そこくらいまで行かないと、ないんです。
だけどそこはいいですよ。
おいしいです。

(つづきます)
01  01 

キース・マクナリーさんのこと。

フリーマンズのターボ・ソマーさんや
ワイス・ホテルのアンドリュー・ターロウさんのおかげで
いまではすっかり当たり前のことになりましたが、
ビンテージや廃材をインテリアに使うという手法を
その昔からやってきた人がいます。
それが「バルサザール(Balthazar)」
「ザ・オデオン(The Odeon)」
「シラーズ(Schiller's Liquor Bar)」といった
ニューヨーカーたちが通い続ける店をいくつも経営する
キース・マクナリーさんです。
マクナリーさんが経営するレストランのメニューは
基本的に、フレンチ・ビストロ・スタイルですが
オープン時から、いい意味で、ずっとそこにあったような
佇まいを出すことにかけては、パイオニアでした。
マクナリーさんの店に行くと、
セレブと呼ばれるような超有名ニューヨーカーが
カジュアルにご飯を食べている姿を見かけることがあります。
マクナリーさんの店は、ニューヨークという街の風景の
当たり前の一部になっていく。
ニューヨークを訪れたら、ぜひ一軒は試してみてください。

前へ はじめから読む 次へ
(2015-04-30-THU)
佐久間裕美子さんの本

リーマンショック以降、
ブルックリンやポートランドなどを中心に
現在アメリカの人々の間で広まりつつある
新しい価値観について、
たくさんの具体的な事例を紹介しつつ、
わかりやすく解説している一冊です。
抜群においしくなったコーヒーや、
「買うな」とうたう企業広告、
地元生産を貫くブランドや、
アナログレコードの再評価についてなど、
多くの興味深い事例から
アメリカのいまを知ることができます。

Amazonのページはこちら

『ヒップな生活革命』
(ideaink シリーズ、朝日出版社)