今日のダーリン

・ふと、コンビニで花火のセットというのを買った。
 娘が遊びに来ていて、ふと思いついたのだった。
 昔よく土肥の海で山ほど花火をやったことを思い出した。

 毎年、夏休みのころに吉本隆明さんの一家が、
 土肥温泉の民宿に長逗留していたのだった。
 知り合いの人たちが、何日かずつそこに合流して、
 泳いだり日焼けしたり、スイカ食ったり退屈したりして、
 なんとも名付けようのない時間を過ごしていた。
 そういうだらだらした日々のなかでは、
 花火は、ちょっと盛り上がりのあるイベントだった。
 なぜか、その花火の担当はぼくだった。
 段ボール箱にいっぱいの花火を買ってきて、
 次々に火をつけ、海に向けて発射し続けた。
 ふつうの、こどもが手に持つおもちゃの花火の他に、
 長岡の花火だの隅田川の花火だのというような、
 ほんとうの本格の花火に似せた、
 ちょっとおおげさなものも売っていて、
 ぼくらにしてみれば、それなりの「大花火大会」だった。
 長い時間かけて、大声をあげたりしてたのしんだものだ。
 帰りに必ず食べるソフトクリームもおいしかったなぁ。

 コンビニで売っていたのは、まったくのこども用だった。
 色とりどりの袋に小分けされて、
 思わせぶりな名前とキャッチフレーズがあるけれど、
 小さな火花の噴水がしゅーっと噴き出すものばかりだ。
 「五山の送り火」もすっかり消えて、
 見物客がそれぞれの家に帰ったころに、
 うちの狭い庭で、花火ははじまった。
 隣り近所の迷惑を考えて、音もしないし、飛びもしない、
 安全でおとなしい花火ばかり、で、すぐに飽きた。
 
 そういうなかで、線香花火だけは、やりがいがあった。
 これには、強弱と、変化と、珍しさの要素がぜんぶある。
 「線香花火といえば‥‥」家人がつぶやいた。
 「ここでふたりだけでやったの、嫌だったなぁ」と。
 え、そんなに嫌だったのか、おれはそうでもなかったぞ。
 「線香花火は、大人ふたりでやるのは、さみしすぎる」。
 そのときには、そうは言ってなかったじゃないか。
 たしかに、つまらなそうにはしてたけど。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
日照り続きの水不足も困るし雨降り続きも困るぜ、21世紀。

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