BOOK
男子も女子も団子も花も。
「婦人公論・井戸端会議」を
読みませう。


婦人公論井戸端会議<
(全5回)

第1回 ノストラダムス・ケーキ

第2回  明るい預言者

第3回
“終末”に期待する気持ち

糸井 当時、ノストラダムスの預言書は
暦より売れたんですか。
藤本 部数で比べた資料を見たことがないんですが、
暦のようには売れてないと思います。
価値が高いですから。
糸井 なのに、ずっと残ってきたというのは、
いつでも誰かに使い道があったってことですよね。
藤本 抽象的な表現で書かれている四行詩ですから、
いろいろなふうに使えるんですね。
何か事件が起こったときに、
そういえばあの中になかったかと探すと、
「らしい」ものがあったりして。
ヒットラーもうまく利用したようです。
プロパガンダ的な使われた方は何度もされてますね。
下手すると、オリジナルにないものまで
勝手に新しく書き加える例もあって、
そうすると、
「ほら、われわれの勝利はここに書かれている」
という言い方ができる。
糸井 それだけ使いやすい道具であり、
また必要とされる社会があった。
藤本 それに、四行詩の中で
具体的な年号が登場する詩は非常に少ないです。
糸井 記された年号のいくつかは、
すでに過ぎているんでしょう。
それ、当たってたのかな。
藤本 当たったとも言えるし、
当たらなかったとも言える。
つまり抽象的すぎて、判断しにくいんです。
たとえば、1580年前後に、
奇妙な新時代が始まるというのがあるのですが、
これなんか、何ともいいにくいものでしょう。
ただ、のちに発見され、
彼が書いたのではないかと言われた預言書があって、
そこには100パーセント当たったと言われている
四行詩が一つあります。
ナントの勅令で、年号も地域も事象も全部、ぴったり。
いわゆる事後予言かもしれない。
藤本 考えられますね。
誰かがノストラダムのものとして、あとで書いた……。
糸井 ノストラダムスって、
みんなのオモチャになってますねぇ(笑)。
フランスではノストラダムスへの関心は
高いんですか?
藤本 昨年8月('98)にフランスに行った時には、
一般的には、ほとんど盛り上がっていませんでした。
今月にまた行きますので、ご報告します(笑)。
今のところ、もっとも関心が高いのは
日本とアメリカですか。
日本以外では英語圏ですよね。
藤本 ブームというのじゃないですけど、
1792年、フランス革命の真っ最中に、
パリでノストラダムスの展示会みたいなことを
したと言われています。
糸井 なんでまたそんな時期に。
藤本 預言書の前文や詩の中で革命を予言しているというので。
私には、それらの部分が革命とは思えませんが。
なぜなら革命のハイライトは、1793年から94年なのに、
1792年で迫害が終わるというような書き方をしていますし、
国王の逃亡に関しても、地名が同じというだけのように
思えます。
政治的なプロパガンダかも。
糸井 それにしても1999年の予言が予言があるとはいえ、
なぜ日本でこんなにノストラダムスや終末論が
盛り上がるのか。
藤本 一つは安心感でしょう。
今の日本はとても状況が悪い。
だけど、どうせ近々終わってしまうと思えば、
もう努力しなくてもいいから安心するじゃないですか。
もう一つは平等感。
自分は不当な位置に置かれているという感覚も、
みんなが等しく同じ目にあえば、
そこにカタルシスみたいなものがある。
そういうことから、非常に受け入れやすいのだと思います。

ただ日本人て、長くものを覚えていられないえすよね。
だから終末感で盛り上がるのは
今年('99)までじゃないかしら。
糸井 そうか、今、大きい忘年会みたいな気分になってんのか。
僕は、終末への関心は日本人に限らないと思うんですよ。
終末って、世界の更新ということでしょう。
のんべんだらりと終わりなき一生が続くのは
耐えられないという思いは誰にもあって、
そこで終末に期待する気持ちも生まれてくる。
糸井 終末に負のイメージはあるけど、大きな意味では
お祭りでもあるというのはたしかですね。
僕はジンマシンになったとき、
あんまり痒いんで、ナイフでグサッと
刺されちゃったほうが楽だという感覚を
味わったことがあります。
それと似てる。
「いっそ、殺してくれぇー」ってセリフがあるけど、
ああいうものがあると、ちょっと収まるみたいな……。
わかりますね。
糸井 今年に入って、僕のところにも
けっこう取材がくるんですよ。
「予言の年ですけど、
糸井さん、日本はどうなると思いますか」って。
どうなるかと聞かれてもねぇ。
予言では日本に何かが起こると
言ってるわけでもないのに……。
「ノストラダムスっていう昔のフランス人が、
そんな日本のことばかり考えちゃいねえだろう」
というのが僕の返事。

ノストラダムス、日本のことなんか知ってました?
藤本 預言書に地名が出てくるのは
ヨーロッパがほとんどで、
あとは北アフリカやアラブ方面ですね。
アジアという言葉は出てきますけど、
彼が意識していたアジアが
どこの範囲だったかというのはわからない。
糸井 「1999年、世界滅亡」と言いながら、
なんだか、日本だけが騒いじゃってるでしょう。
25年前の最初のブーム、
僕はあの頃が日本の国民的ナルシズムの
始まりじゃないかと思ってるの。
つまり日本がイッチョマエになって、
ある程度、社会が安定して、
“世界の中の日本”というアイデンティティーが
見え始めてきた。
そのとき日本は、自分が何でも注目されてると思い込む、
思春期の女の子みたいな状態になったんじゃないかな。
盛り上がるのは、
数時の並びのインパクトも大きいですね。
1999年って言われちゃうとねえ。
藤本 いかにも終わりそう。

(つづく)

第4回 宇宙との感応関係

第5回 さて、恐怖の7月は?

2000-01-08-SAT

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