怪・その20
「欲しい人の名は」


うちの近所のある奥さんは、
旧姓がT田さん(仮名)だったそうです。

その彼女の弟さん、
「ただし」さん(仮名)に起こった
不思議な話をします。

彼が高校生の時、
峠道を自転車で通っていて、
事故のよく起きるカーブで大型トラックに巻きこまれ、
重体となりました。

集中治療室にて1週間後に、
意識を取り戻した彼が語った話によると

そのトラックにひかれた際、
彼は祠のようなところに
転がり落ちて行ったことは覚えている、
とのこと。

しかし事故現場近くに
祠や何かを祭ってあるようなものは一切無く、
事故のショックで見た幻?
とかたづけられてしまいました。


予断の許さぬ状態から脱し、
彼が一般病棟に移る頃、
同じ峠、同じ場所でまた
自動車による事故がありました。

車に乗っていた歯科医院を営むご家族4人、
お亡くなりになりました。

奇しくも、
亡くなられたのは
「T田歯科」のご家族。

長男さんのお名前は

「ただし」。

亡くなる時、祠が見えたかは
今となってはわかりませんが、

よっぽどあの場所は
「T田ただし」という名前の人間が
欲しかったようです。

20年程前の、この歯科医院のご家族の事故は、
地元新聞にものった事故です。
生き残った「ただし」さんは今も元気です。

(峠こわい)
この話、こわかった! ほかのひとにも読ませたい。
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2011-08-15-MON