第1回 かたちをつくらないデザイナー


糸井 はじめまして。
山崎 はじめまして。
よろしくお願いいたします。
糸井 山崎さんの肩書きは
「コミュニティデザイナー」
なんですね。
山崎 はい、一応コミュニティーデザイナーと
言っていますが、
いったい何をしているのか
わかってもらえないことが多いです。


糸井 そうなんですか(笑)。
山崎 「コミュニティデザイナーです」と
名乗っているのは、じつは
名付けようがないから
そう言っているだけなんです(笑)。
ざっくり言えば、
ひとが集まる場所に関わるお手伝いを
まとめて「コミュニティデザイン」と呼んでいる、
ということなんですけれども。
糸井 おおもとの出発点は
建築のデザインだったのでしょうか。
山崎 はい、そうです。
建築の、景観デザインがもともとの専門でした。
大学では、公園や庭の設計について
学んでいましたが、
とちゅうで「このまま進むのは違うんじゃないか」
と思うようになりました。
というのも、
景観のデザインというのは
そこにつくる建物もあわせて
「敷地にどんな風景をつくるか」を
考えるものだと思っていたのですが、
実際はそうではなかったんです。
糸井 違うんですか。
山崎 ええ。現実には、建物が建ったあとで
「周りを、きれいに整えておいてね」
と言われるような
仕事が多いことがわかりました。


糸井 ああ、なるほど。
建ったあとで、付け加えるように。
山崎 ええ、そうなんです。
ですからぼくは、公共建築を多く作っている
建築設計事務所に就職することにしました。
景観専門のデザイナーではなく、
建物をつくる立場から、
庭のことを考えればいいじゃないかと思って
勉強のつもりで入社したんです。
しかしそこで、建築設計事務所の現実を
いろいろと経験させていただくことになりました。
つまり、マーケティング的なことと
建築デザインの考えは
相反することも多いのですが、
建物を設計するうえでは
両方を考えていかなくてはなりません。
それはとても大変でしたけど、
とても勉強になりました。
糸井 それは、鍛えられますねえ。
山崎 ほんとうにそうでした。
たとえば、公共の建築物をつくるときって、
誰の意見を基準にしてつくればいいのか、
はっきりわからない場合が多いんです。
「これが公園の正しいつかいかたです」
ということはありません。
公園は、いろんなつかいかたをして
いいものですから。
結局、公共建築は
依頼された建築家が、自分の経験や考えから
「きっとこんな方針がいいはずだ」と
予測するようなかたちでつくることが多い。


糸井 ええ。
山崎 でも、マーケティング的な考えに立つと
「ユーザーが何を求めているのか
 わからないままにモノをつくるなんて、ダメだ」
ということになります。
糸井 そうですね。
山崎 でも、公共建築のユーザーは、
まだできていない公園やまだできていない図書館を
つかう人を指しますので、
計画段階では、存在しないんです。
そこで、ぼくのいた事務所がはじめたのが、
ワークショップでした。
地域の住民の方に集まってもらって、
「将来ここに公園ができるとすれば、
 どんな公園がいいですか?」
「この町は今後どうなったらいいと思いますか?」
といった話を聞いて、
そこからデザインのキーワードを導くのです。
それで、手応えもちゃんとあったので、
その事務所はものすごくたくさん
ワークショップを開催する事務所になったんです。
糸井 へえぇ。
山崎 ぼくは最初、
ワークショップという手法自体に
馴染めない部分がありました。
でも、うまく問いかけるとワークショップって
住民のみなさんの思いを
スムーズに教えてもらうことができます。
やっていくうちに、
だんだんこの手法はすごいな、と
わかってきました。

ワークショップをつかった設計は
それまでの公共建築の主流とは
異なるアプローチでした。

ぼくが独立を考えはじめたとき、
ちょうど事務所で
そういったワークショップを
担う人がいなくなったときでもありました。
事務所のボスはもちろん建築家で、
もののかたちをつくるのが専門でしたから
「一緒に仕事していきませんか」と言って、
その事務所の近くに、
ワークショップなど
「もののかたちをつくること以外のことを
 やる事務所」
を作って独立しました。
それが「studio-L」という、
いまの事務所なんです。


糸井 はあー‥‥なるほど。
その話は、その順番でしないと
わからないですね(笑)。
山崎 すみません、自己紹介が長くなっちゃいました。
糸井 いえ、とてもおもしろかったです。
景観のデザインというところから、
現実を見ながら軌道修正していったら、
結局「かたち」じゃない部分を担うことに
たどりついた、ということなんですね。


山崎 そうですね。
糸井 実際、かたち「以外」の部分って
話題にされにくいですけど、
とても重要な割合を占めていますよね。
モノって、単体でモノであるはずがない。
周りとの関係があって、
はじめてそのモノになるわけで。
山崎 ええ、おっしゃるとおりです。
自分がこれまでやってきたことのひとつに
「公園をデザインする」ということがあります。
調べてみると、公園は、
4、5年経ったらほとんど誰も使わない
さみしい場所になってしまっているという事例が
多いんですよ。
糸井 そういうとこ、ありますね。
山崎 でも、たとえば地域にいる人たちに
その公園でいろいろなアクティビティを
してもらうようにすると、
その活動のファンになった20~30人の人々が、
「今週も行こうかな」
と集まってきてくれます。
そんなことを続けていくと、
だんだん「人が集まる場所」として定着してきて、
公園が公園らしくなります。
糸井 うん、うん。
それも、「かたちじゃないほう」を
サポートすることで、
モノを機能させるということですね。
山崎 はい、そうなんです。
「地域の総合計画」を依頼されたら、
住民の方にも計画づくりに入っていただき、
具体的な方針になる計画を立てるようにします。
「公園整備」を依頼されたら、
かたちの整備だけでなく、
公園を整備してくれる人々を育てる
養成講座も一緒におこなって、
将来的にも公園を管理してくれる人々が
いるようにします。
試行錯誤しつつ、ですが、
そんなことを「コミュニティデザイン」という
名前で呼びながら、活動しています。
糸井 うん、なるほど。
よくわかりました。
山崎 いつも、説明がしづらいんですけど(笑)。
(つづきます。)
2013-01-10-THU









山崎さんがこれまで関わられてきた
さまざまなプロジェクトの例をもとに、
コミュニティデザインについて
ていねいに説明をしている一冊。
「こんなやりかたもできるんだ」という
事例がたくさん載っていて、
読んでいて、ワクワクします。

定価 1890円 学芸出版社