『岩合光昭の世界ネコ歩き』は、
動物写真家の岩合光昭さんが、
世界中のネコを追いかけて撮影をする
NHKの人気番組です。

世界中をまわりながらも、
観光名所や世界的建築物には目もくれず、
撮るのは、ただ、そこに暮らすネコのみ。
噂によると、この番組がはじまると、
全国の各ご家庭のネコたちが
じっとテレビにくぎづけになるのだとか!

「ネコ視聴率」も稼ぐという
この不思議な番組のことを、いろいろ知りたい。
スタッフのかたにお話をうかがってきました。
担当は、「ほぼ日」のネコ好き乗組員、
ゆーないととフジタです。

  • もくじ
  • 前編:ネコ視聴率ナンバーワン?
  • 後編:ネコの味方を増やしたい。

ネコの味方を増やしたい。

フジタ
これまでに人気の高かった回は
どの回ですか?
村松
いろいろありますが、最近では
「津軽の四季」という、
津軽のネコを一年間撮り続けた回が
人気がありましたね。
ゆーないと
あぁ、あれ!
すごかったです。特に、冬の回!
村松
雪まみれになっているネコがいたり。
▲雪の上をずんずん歩く、津軽のネコ。
フジタ
わわっ、すごい。
ネコが相手だと、こう動いてもらって、
こういう構成にしようって、
決めておけないから大変だと思うんですけど、
『ネコ歩き』は、
よくこんなシーンが撮れるなぁ、って
びっくりすることが多いです。
ネコの野性の感じがすごく出ているというか。
ゆーないと
うん。狭い家のなかで走ってるのは見るけど、
ほんとはあんな遠くまで
走って行っちゃうんだ、みたいな。
フジタ
屋根と屋根の間をぴょーんって渡ったり。
村松
番組では、室内で飼われているネコが
登場することもあるんですけど、
そういうときでも、岩合さんは
そのネコの野性を感じられるようなシーンを
撮ろうとされてますね。
以前、パリを舞台にした回で、
おしゃれなパリジェンヌさんが室内で飼う
美しい2匹の白いネコがいたんです。
どう撮るのかなと思ったら、
岩合さんは、そのネコがベランダに出て
足を広げて豪快に雨どいを歩いてくるシーンを
真正面から撮りはじめたんです。
でも、「そういうことだよな」って。
ネコはこういうところを歩く動物なんだな、って。
その場面をごくごく自然に
切り取れちゃうのが、岩合さんなんです。
▲雨どいを豪快に歩くネコ。
フジタ
あぁ、すごい。
これも、なかなか見られないシーンですよね。
吉成
ふだん、ぼくらがネコと暮らしていても、
ネコのことを
ぜんぶは知らないと思うんです。
24時間ずっと見てるわけじゃないから。
フジタ
たしかに、そうです。
吉成
動画サイトで観たんですけど、
海外の、ネコを飼っているご家族が
家のあちこちにカメラを仕込んで、
あとでその録画を観たところ、
夜中にものすごい勢いで
ネコが暴れていることがわかったんです。
「ネコって、夜中、こんなに動いてるんだ!」
って、びっくりするくらい。
岩合さんも、1匹のネコに
1日中カメラを回し続けるんです。
しかも、寝ているところを3時間も撮り続けていたり。
「なぜですか」と聞くと、
「だって、いつ起きるかわかんないじゃない」って。
起きる瞬間を撮るために、
何時間もカメラを回すんです。
大きなあくびをしたり、
めいっぱい伸びをしたりする瞬間を狙って。
スタッフは大変ですけどね。
予備のバッテリーとSDカードを常に持って‥‥。
ゆーないと
バッテリー替えてるタイミングで
起きちゃうかもしれないですもんね。
吉成
そう。撮り逃したら、それまでの
3時間だか4時間が無駄になっちゃう。
でも、岩合さんは、ずっと同じ態勢で
カメラ構えてても苦じゃないみたいです。
村松
とことんネコを追いかけてますからね。
海外出張の前には、
NHKの局内でロケの安全管理をどうするのかなど
説明をする機会があるんですけど、
そのときよく言われるのが、
「地面に這いつくばって撮って
 怪しい人って思われないように!」
とか、
「ネコを追いかけて、
 危ない通りに入らないように!」
とか言われます(笑)
ゆーないと
海外だと、いつも何日ぐらいかけて
ロケをされるんですか?
吉成
1ヵ国につき10日間くらいです。
ディレクターだけが先乗りして、
ネコのいそうな、その国らしさのある場所を探して
歩きまわります。
そのあと、合流した岩合さんと一緒に、
今度はカメラを抱えて、ふたたび歩きまわります。
ゆーないと
コーディネーターさんは、
現地に住んでる方にお願いするわけですよね。
そういうのも大変そう。
吉成
そうですね、ネコの情報を集めるのって、
かなり難しい作業なんです。
あらかじめ見つけてもらっていても、
実際に行ってみたら
なかなか撮らせてくれないネコだったり。
現地でディレクターが見て回りながら
「この子いいんじゃない?」
というふうにパッと決めることも多いですね。
フジタ
その場でパッと。
村松
街を歩いていて、パッと
「あ、ネコがいた」みたいに、
目を向けられるかどうかって難しいですよね。
それも、自分が知らない街で見つけるのって、
大変なんです。
でも、この番組のディレクターたちは、
ネコを見つける目、みたいなものを、
みんな持っているんです。
きっと岩合さんから
いろいろ教わってるからだと思うんですけど。
フジタ
すごいですね。
あの、実は、ゆーないとさんも
けっこう見つけるんですよ。
この前も、取材で一緒に外出していたら、
「あ、ネコいた!」って。
住宅街にいるネコを見つけてました。
ゆーないと
なんか、つい、ネコがいそうな
ビルとビルの間とかを
チェックしちゃうんです。
マンションの窓から外を見ているネコとかも
わりに見つけるほうだと思います。
村松
すごいですね。
それは、ネコ認知度が高いですよ。
フジタ
ネコ認知度。
ゆーないと
見つける自信、あります。
私も、なにかお役に立てる日が
来るかもしれません。
フジタ
ロケにも、ぜひ。
村松
いいですねえ。
フジタ
あと、この番組は
「ネコの目線で旅する」
という側面もありますよね。
自分が行ったことのある場所でも
ネコの目線で見てみると、
また違った発見があって、
それがすごくおもしろいです。
村松
そうですね。
たとえば、地中海のマルタ島では、
街の人がやたらめったら、
ネコに餌をあげるんです。
マルタには1匹1匹のネコを大事にするという
文化があるらしいんですよ。
だから、そこのネコは、ある意味で
ふてぶてしいというか、おおらかというか、
「人間が食べ物をくれて当たり前」という
雰囲気を持っているんです。
人間でも、生まれ育ってきた環境や
周囲の方々の存在とかで、
個性や雰囲気が醸成されるじゃないですか。
ネコも同じなんですよ。
番組では、そういう部分も
お伝えできたらと思っています。
吉成
ぼくも、ネコの行動を通して、
その向こう側にある
人々の暮らしや
生きものに対する思いが
だんだん見えてくるというところが、
この番組のおもしろい部分なのかなって思いますね。
世界のいろいろなところへ行っているので、
旅好きな人にも
喜んでいただけるんじゃないかなと思います。
フジタ
これまでいろいろ見てこられた中で、
「ネコ好きならここに行け」みたいな、
おすすめのスポットとかはありますか。
村松
う~ん‥‥『世界ネコ歩き』的には、
そういうことは全然考えていないんですよね。
ネコがたくさんいるところに
わざわざ行くというよりは、
それこそ、ゆーないとさんのように
「ネコ認知度を上げていただく」
ということに尽きると思います。
フジタ
ああ、たしかに、そうですね。
あえて遠くに行かなくても、身近にいるから。
村松
そう。
いろんなネコがそこかしこで
一所懸命暮らしているわけです。
そういうネコに眼差しを向けられるかどうか、
みたいなことが、もしかしたら
番組の隠れたメッセージかもと思います。
吉成
番組をはじめるときに、
岩合さんがおっしゃったのは、
「この番組をやることで、
 最終的にネコの味方が増えればいいな」
ということなんです。
岩合さんの気持ちとしては、
やっぱりネコの味方を増やしたいし、
ネコって素敵な動物だ、ということが
伝えられたらうれしい、ということなんだと思います。
フジタ
ほんとうにそれが伝わってきます、観てると。
ゆーないと
ネコのすべてが詰まってる。
ずっと観てると、
あ、そうそう、ネコってこうだよね、
みたいに思うこともあるし、
「え、こんな一面もあったんだ!」
というのもあって。
村松
そうおっしゃっていただけると、
ありがたいですね。
この番組を通して、みなさんの街のネコ、
たとえば、「浅草のネコ」とか、
「横浜のネコ」の暮らしぶりを
ご自身で見つけていただければ、
『世界ネコ歩き』の担当としてはうれしいです。
ただ、くれぐれも、
いきなり道路に這いつくばったりせず(笑)、
安全に十分気をつけて
ネコを探していただければ、と思います。
フジタ
(笑)はい。
ゆーないと
今日はどうもありがとうございました。
フジタ
ありがとうございました。
これからも観続けます。
村松
ぜひ!
次回の放送は
ベトナムの「ハノイ」なんですよ。
ゆーないと
ハノイ。
村松
ハノイの街中と、世界遺産のハロン湾の
ネコを取材してるんですけど、
街中はバイクがけたたましく
クラクションを鳴らしながら通っていく、
すごくにぎやかなところです。
それでもネコは、
全く気にする様子もなく、
うとうと寝てたり、気ままに歩いてたり。
それからハロン湾には、水上に人の住まいがあって、
そこで生きているネコも出てきます。
ゆーないと
へぇ~!
フジタ
水上で暮らすネコ‥‥たのしみです。
いつ放送なんですか?
村松
ハノイの回は、
3月2日水曜22時から放送予定です。
それ以降の回は、放送する曜日と時間が
特に決まってないんですよ。
『世界ネコ歩き』って、
「何となく月1回」みたいな感じで
やっているので‥‥。
フジタ
「何となく」。
ゆーないと
それも、ネコっぽい!
村松
はい。
ネコも「何となく」の生きものなので(笑)。
毎回、放送日が決まったら
公式ページでお知らせしているので
ぜひそちらをご確認ください。
30分版や15分版miniもたくさん放送していますので
あわせてお楽しみください。
今日はどうも、ありがとうございました。
(※本文4枚目の写真:坂本美雨さん提供)

(終わります)

2016-02-23-TUE

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『岩合光昭の世界ネコ歩き』 BSプレミアム 随時 次回の放送は3月2日(水)22時「ハノイ編」です。
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