【本】 2004/06/09

キャッチボール 
ICHIRO meets you

語り手   イチロー
聞き手 糸井重里
定価 1,365円
ページ数 188ページ
出版社 ぴあ
ISBN 4835609336
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昔は、対談本とか、あんまり売れないと言われてました。
売れない理由は、ぼくにはわかりません。
出版社の人たちが、そういうのを聞いていただけです。
ぼくは、昔から対談本というものが大好きでした。
小沢昭一さんの対談とか、吉行淳之介さんのものとか、
あとでまとめる人もスゴイんでしょうけれど、
とにかく、その場のキャッチボールがスゴイ。
一般的な著作や、ひとり語りでは、
作者本人が、次に語ることを知っているのですが、
対談という相手のいる場では、そうはいかない。
本人にもわからないことが、いつもはじまってるんです。
酔っぱらった野坂昭如さんと、
偉大なる稲垣足穂との対談なんて、
「じゃぁキスしましょう」って‥‥組んずほぐれつ。
そんな予定はなかったと思うんだよ、どう考えたって。

対談というのはおもしろい、と、ぼくは思ってたんです。
「ほぼ日」にも、対談形式のコンテンツが
たくさんありますけれど、たくさん読まれてますよね。
それに、対談本だって、ちゃんと売れてるみたいです。

対談には、
まずは、本人にも次の展開が読めないおもしろさがある。
そして、むやみな引用がない。
さらに、しゃべって通じないコトバはつかいづらい。
というような、利点があるのですよ。
昔の本読みたちには、そういういいことが
通じなかったのでしょうかね。

(「今日のダーリン」より)



たいていの子どもは、おとなに質問される。
「大きくなったら、何になるの?」と。
ほんとに、みんな、ほんとに何になりたいか、
答えられたのだろうか?
いまでも、ぼくはそれを疑っている。
ぼく自身も、何度かなりたい職業を変えて言っていたが、
ほんとうは、何が何やらわかっちゃいなかったものだ。
でも、なれるものならなりたいと、
本気で思えたのは、実は、野球の選手だった。
いままでも、よく
「当時のほとんどの少年は、野球の選手になりたかった」
と、一般論めかして言ってきたのだけれど、
あらためて、年をとったから本当のことが言える。
たしかに、ぼくは野球の選手になりたかったのだった。
そう長い間じゃなかったけれど、本気で思っていたのだ。
河原で、鉄橋の橋脚に向けて、毎日石投げをしていた。
それをくり返していれば、奇跡が起きるはずだった。
「キミのような投手を探してたんだ」と、
駆け寄ってくるスカウトがぼくの人生に登場する。
そういうつもりで、河原に通った日々があった。
むろん、結局、ごく自然に
ぼくは野球の選手になんかなれないと知ることになって、
その頃から、野球の選手に、
ほんとになっちゃった人々のことを、尊敬し続けている。
『キャッチボール ICHIRO meets you』 という本は、
インタビューした本人のぼくが読んでいるのに、
とても切ない、いい気持ちになる。
子どものときのあの河原にいる気分が、戻ってくるのだ。
(darling)

2004-03-31