YOSUI
井上陽水・
ゴールデンバッド対談。

井上陽水のB面は、一筋縄ではいかないぞ。
ほんとうは、新しいアルバムが出る時期には
歌手は、プロモーション出演とかをするものだ。
時期的には、井上さんもそうしたのだけれど、
話す内容が、ぜんぜん宣伝になっていないんじゃないの?

ま、とにかく、いらっしゃいませ。
本人たちは、たのしみました。

「GOLDEN BAD」のホームページ
http://goldenbad.y-inoue.com

第1回 改めて思ったんだけど、会うって大事だね

第2回 ちゃんとテーマがありますんで。BADね。

第3回 “大人ぶりたい”というかさぁ

第4回 文化勲章をもらうことになったらどうするんだろう?

第5回 “復讐のために”とか言われてもさ

第6回 欺瞞がにおってくるでしょ

第7回 怒ってますよ、復讐してますよ、あの歌は

第8回 “3年殺し”とか僕は言うわけですよ

第9回 露天風呂では悩めない

第10回 どうやって選んだのよ?

第11回 明星とか平凡に“歌本”ってついてたよね

第12回 ジョンとポールに憧れたからね

第13回 それこそ、お金ってことになればさ

第14回 “イノウエ more than イトイ”ですから

第15回 あれはあれで、目下の者の大きな仕事だなあ

第16回 ブイブイなものって、なんなんでしょうね?

第17回 なにかに熱中したことのある気のいい世代

第18回 レコード全体の悩みを抱えてますね

第19回 もう、考えてたらキリがないんだから

第20回 妻帯者が恋愛する場合なんてのはそんな局面じゃないですか

第21回 俺、吉本隆明さんの境地まで行けないわ



糸井 僕がインターネットを仕事にしてない状態で、
携帯電話のメールがあったら、
バンバン使ってたかもね。
なにせ毎日やってることで、
良くも悪くも奴隷なわけですよ。
毎日やらなきゃならない仕事に関わる付随すること、
またそれに付随することで、
ある意味で、24時間がいっぱいになっちゃうんですよ。
で、まったくイヤなら、やめるんだけど、
それは金八先生みたいなところもあるわけで、
そのイヤさは、つらいけども、
俺が自分で選んだわけで、
全部を投げ出したいとは言わないんですよ。
すると、この対談の最初のほうで、
「初めて“忙しい”って言うようになった」と言ったのは、
そのあたりのこと、経験したことなかったの、俺。
……我慢、とか。
井上 ……(笑)。
糸井 だから、なんだろう……今、修業中な感じなんです。
井上 あれ、難しいよね、本当に。
糸井 見城さんとかって、
全力でぶつかるもの同士のなかに、
火の玉が生まれて、みたいな、
つき合いの好きな人じゃないですか。
井上 身体と身体でぶつかっていく。
糸井 「内蔵と内蔵を擦りあわせる」って
見城さん言ったからね。
井上 「内蔵を見せあおうじゃないか!」
「裸を見せあおう!」
糸井 で、そういう人だから、
見城さんは、きっと俺のこと嫌いだろうなぁ、
って思いますよね。会う前は。
で、対談の収録が
夜中の2時くらいまでかかったんだけど、
見城さんは、朝6時の飛行機で北海道に行くと。
で、「あ!」と思いついた。
誠心誠意、収録のときにしゃべってるなかで、
「俺はいいかげんにやってる人に
 思われるかもしれないけど、
 実はこれから明日の更新の仕事をやるんですよ」
って、ちょっと自慢で言ったら、
すっごいうれしそうにしてた。
井上 え?
糸井 つまり、「(糸井さんも)そういうヤツだったのか!」と。
夜中まで仕事がんばってるのか、と。
でも、そういうことが好きなわけじゃないんですよ。
僕は夜中の2時に別れた後で仕事をすることが
好きなんじゃなくて、それしかできないから、
そうしてるだけで……。
その部分で、俺を認めてくれと言うつもりはないけど、
俺のことをわかってくれる人の数が増えるんですよ。
ものすごく努力すると。
努力って強いんですよ、ジョーカーとして。
井上 なるほど。
糸井 しかも、単なる足踏みを毎日やってるんじゃなくて、
努力でしょ。
そうすると、やっぱり、疲れますね。
「俺たちに何があるんだ、努力以外に」
なんて言いますからね。
井上 でもねぇ、実感としてわかるんですよね。
まずいっていうか、ホントに小中学生の頃は、
「努力」なんて言われても、
「なーに言ってんの?」くらいのことだけど(笑)、
いや〜、やっぱりね。
糸井 でも、それが通じると思ってるってことは、
まだまだ俺たち若いですよね。
吉本隆明さんは、
「聞きやしないんだ」って言ってるもんね。
みんなに聞かせてあげたいような話を、
今しゃべったその直後に、
「どうせ若い人たちは聞きやしないんだから」って。
井上 僕らがそうだったように。
糸井 うん。
それをちゃんと正確に言えるってのは、
知性として高度だと思いますね。
俺、吉本隆明さんの境地まで行けないわ。
「俺の話、聞いてくれたらうれしいな」って思ってるわ。
……ダメね、そういうとこは。
(※テイクアウトの、お好み焼きが到着)
糸井 おお、豪華!
こういうもの(お好み焼き)を心から豪華と言える暮らしを
もう、3年間やってますよ。
井上 でも、いつかに比べたら、天国みたいな。
糸井 その時のほうが、贅沢してたよ。
井上 あー、そう(笑)。
50年も生きるとね……。
糸井 橋本治って、会ったことある?
井上 なーいけど、気になる人だよ。
糸井 あの人はいいよぉ。
僕は、いちばん男らしい人として彼を認識してます。
……お好み焼き、食おうか。

(おわり)

このページへの感想などは、メールの表題に
「井上陽水・ゴールデンバッド対談を読んで」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。


2000-09-04-MON

HOME
ホーム