HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
台湾のまど 青木由香の台湾一人観光局 ほぼ日支所
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「お椀一杯」問題が
わかるようになること。

台湾には、豆花という、
それはそれは美味しい豆腐のデザートがあります。
豆乳をにがりで固めるんでなく、
アルカリ系のもので固めている、
豆腐とうっすら違う食感の豆乳のスイーツ。
冬なんか、あったかいジンジャーシロップに
月のように浮かんで、
口の中で「はむっ」とすると
いなくなるんです。

▲「はむっ」とすると消える豆花。

これを自分で作りたくて、台湾にきたばかりの頃、
豆花ができる、不思議な粉「豆花粉」を買いました。
安いんです。
大量に作れるのに確か20元(76円)くらい。
でも、その粉の使い方にある水の量が、
「お椀一杯」と書いてある。

あなたのお家のお椀と、
私のお家のお椀は一緒じゃないでしょ。
何を言ってるんだ。
なぜ、何ccと言ってくれない。

豆花粉の袋は破かれたまま先に進むことができず、
周りの台湾人に「お椀ってどのお椀よ」と聞きまくる日々。
台湾人の答えは、「家にある、その辺のお椀」。
夜市で豆花を作っている人に聞いても
「ご飯を食べるお椀」というのだから、
おんな・子供とお父さんのお茶碗のサイズが違う
日本の家庭から全く想像がつきません。
最初っから上手に豆花を作れる台湾人って
天才かと思いました。

台湾はこんな風に適当に社会が回っているんです。
後ろも気にせず車がバックしてくるけど、
でも、バックが原因で起こる事故は比較的少ない
(バイクの巻き込みは多し)。
みんな前しか見てないから、
前がバックしてきたら後ろの車も、
後ろを見ずにそのままバックする。
これで、問題がなく社会が動く。

適当な中にも台湾共通のルールがあり、
私は、すでに台湾人の言うところの
お椀がわかるようになっていて、
車がバックで迫ってきたら、
私は人間だけど、後ろも見ずにバックします。
台湾の湿度に体も慣れきっていて、
観光で来た日本のお客さんが、
どっぷり汗をかいていても
見た目、汗などかいていない
台湾人のような顔をしていられます。

台湾ブームの今、どうせ本を書くなら
こんな知ったかぶりを書きたかった。
台湾の旅行本は、たくさん出ているので
観光から更に奥に入り込んだところをグイグイやるのが、
私のつとめじゃないかと。
誰にも頼まれていませんが。

台湾の根っこにハマってもらいたい。
おいしい台湾は、もう当たり前。
台湾に何度もきた人も、これから来る人にも
生身の台湾人の暮らしぶりや、
台湾の困ったところを含めた個性というか、
ルールがわかると
遊びに来て起こるありえないことに
イカるどころか愛着が湧いてきます。

「台湾のきほん」という本は、そういう本です。
台湾に住むためのガイドとしても使えます。
台湾に興味がない人にも、
よその国の暗黙のルールを覗いて楽しめます。
前に出した「奇怪ねー」という本とはまた違います。

今月は、毎週水曜日窓が開きます。
来月からは、第一と第三の水曜日。
次回は、もっとリアルな台湾の風か、
旅に役立つ情報を吹き込む予定です。

あ、ちなみに。
台湾人は、最初っから豆花が上手に作れるんじゃなく、
適当なので完璧に作れなくても気にならないんデス。
上手くいかずとも失敗で傷つくこともなく
作ったという過程を楽しんで、堂々としている。
するとそのうち、お椀のサイズが見えてくる。
それが台湾のきほん。

台湾で豆花をたべたくなったら
庄頭豆花担
台北市市民大道四段73号
(02)8771-6301 月休
12:00~22:00
豆花の浮かぶ汁が、豆乳かシロップか選べて
夏だとシャーベットになっているのもある。
冬は生姜シロップ入れる? と聞かれる。
煮豆などのトッピングが、
何種類選んでもお値段据え置き。
何よりもうまいし、内装もレトロ台湾でいい感じ。
2015-11-11-WED