矢沢永吉×糸井重里 スティル、現役。
矢沢永吉さんと糸井重里、
7年ぶりの対談です。

ほぼ日刊イトイ新聞創刊21周年の記念企画として
ほぼ日のオフィスで乗組員全員の前で
対談してもらえませんかとお願いしたら、
「いいですよ」とお返事が。

出会いのときから、ほぼ日創刊時の思い出、
そして紅白歌合戦の裏話から、
「フェアじゃないね」の真相まで!

じっくりたっぷりお届けします。ヨロシク。
第12回 いまはもう、話題だけじゃない。
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糸井
「自分は歌だけ」というのでは長く続かない。
それを知ったのが永ちゃんにとって
すごく大事なことだったんだね。
矢沢
大事だね。
もう、キャロルのころから、うすうす思ってた。
何かがおかしい、って感じるんだよね。
歌が売れて、人気が出ても、何も変わらない。
この芸能界の仕組み、どうなってんだ? って。
糸井
若いころから、ずっと考えてる。
どうなってるんだ、って。
矢沢
そういうことでいうと、悔しかったのは、
矢沢っていうのは、どっちかって言ったら、
イメージが先行くじゃないですか。
『成りあがり』だったり、不良だったり、
広島から夜汽車にやってきた、だったり。
もう、わかりやすいよね。
糸井
うん。
矢沢
それで悔しかったのは、
矢沢という存在が話題にはなるけど、
ぼくの音楽っていうのが、
二の次とか三の次とか
言いたくなるぐらいなんだよ。
わかりやすくいうと、みんなから
永ちゃん永ちゃん言われるけど、
当時、バカヒットってしなかったんですよ。
糸井
あーー。
矢沢
ぼくが、こんなにいいメロディー書いてる、
こんなにいいアルバムつくってる、
こんないいアレンジして
アメリカもイギリスも行って
いろんな連中たちとコラボしてやってるのに、
音楽は二の次の扱いになってる。
だから、もっと音楽聴いてほしい、
ってのは、ずっと思ってた。若いころはね。
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糸井
でも、いまはもう思わない?
矢沢
うん、いまはもうやっとね、
なんていうのかな‥‥いま、だって、
『ALL TIME BEST ALBUM』なんて、
ずーーーっと売れてんだもん。
糸井
ああ、それはそうだ。
矢沢
いま、レコード売れない時代よ?
それが、3枚組のベストが
30万セットぐらい行っちゃうんだもん。
だから、たぶんぼくの
コアなファンじゃない人が聴いてるんだよね。
ふつうの、矢沢永吉って名前は知ってるけど、
音楽、別に聴いたこともないし、
ちょっと聴いてみようか、
ったら、ベスト買うよね。
たぶん、そういう人が
『ALL TIME BEST ALBUM』を聴いてんの。
だから、いまはもう、話題だけじゃなくて、
音楽もちゃんと聴いてくれてる。
糸井
だって、野外フェスとか出ると、
一般のお客さんがものすごく集まるし、
楽屋がカラになるそうじゃない、
永ちゃんのステージのときは。
矢沢
そうそうそう(笑)。
ロッキンオンジャパンで
俺、夏フェスって、はじめて出たの。
そしたら、主催者の渋谷陽一さんが
うれしそうに教えてくれたんだけど、
俺が出たとき、楽屋がカラになったらしい。
なに、どうしたの? って言ったら、
みんな客席のほうに回ったんだって。
糸井
わかるなー、それは(笑)。
それまで、フェスは出てなかったもんね。
矢沢
ま、ある意味、世間知らずだし、
矢沢、ちょっと頑固だから、
「夏フェス? 俺が出るわけねぇーだろ」
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一同
(笑)
矢沢
っていうのがあったんですよ。
糸井
「俺は俺」だから(笑)。
矢沢
うん、俺は俺。
もうこのナルシストど真ん中の矢沢です、
ヨロシク、みたいな感じで、
俺がひと山いくらのフェスなんか出るか!
って言ってたの、ずっと。
糸井
ところが出てみたら。
一般のお客さんも盛り上がるし、
楽屋もカラになるし。
矢沢
出て、思ったですね。
あー、もっと早く出りゃよかった!
一同
(笑)
糸井
たのしかったんだね(笑)。
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矢沢
あとね、そのあと、
ものすごい来たんだよ、レター。
それを渋谷さんがまた得意げに
うちに転送してくれたわけ。
「ヤバいよ、こんなに来てるよ」って。
で、読んでみたら、書いてる内容、全部一緒。
矢沢なんて聴いたことなかった若い子が、
こんなふうに書いてる。
「こんなチャンスでもなかったら
 観る機会ないからって感じで観ました」
「え、矢沢?
 あのコマーシャル出てるおじさん?
 歌、うたえるの?」
「そしたら、1曲目でもうぶっ飛んじゃって、
 気づいたらもう、これもんになってました」
っていう手紙ばっかりよ。
だいたい、二十代の若い子たち。
糸井
ああ、その子たちは、
永ちゃんとあんまり接点がないかもね。
矢沢
世代なんかもう二世代ぐらい違うからね。
そういう子が、もうぶっ飛びましたとか、
なんでいままで観なかったんだろう、
みたいなことを言ってる。
だから、ひと山いくらのフェスなんて、
とか言ってる場合じゃねぇなと。
俺はここに出て、
アピールしないとまずいと思ったよ。
糸井
やっぱり永ちゃんのステージって、
実際に観るとぜんぜん違うからね。
行かなきゃわからないものがある。
それはね、このあいだ横浜でやってた
永ちゃんの展示会(『俺 矢沢永吉』)に
行ってしみじみ感じたんだよ。
あそこに昔のステージ衣装が
飾ってあったじゃない?
あれ、マネキンが着てるとかっこ悪いんだよ。
で、そのとなりに実際の永ちゃんが
ステージで着てる写真ががあるわけ。
そっちはもう、ぜんぜん違うんだよ。
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矢沢
ああ。
だから、変えるんだよね、変わるんだよ。
糸井
永ちゃんが変えるんだよ。
あれ、なんだろう、観てる側の力じゃなくて、
永ちゃんの信念みたいなもんだよね。
矢沢
ぼくがそう思って着てるからでしょうね。
これがかっこいいんだ、っていう。
で、そこに、なんか、
おふざけも何パーセントか、入り。
糸井
ああー、そういう要素もちゃんと入れて。
矢沢
絶対あるんだと思います。
糸井
たとえば、コンサートのときに、
ハーレーで入ってくるなんていうのは、
ちょっとおふざけだよね。
矢沢
おふざけもちょっと入るし、
自分がおもしろがっちゃう気持ちもある。
同じ意味なんだけどね、
それで、もうやり切っちゃう気持ち。
見せきっちゃう気持ち。
糸井
矢沢永吉を、矢沢永吉が、
もう一段、上にあげてやるんだ。
矢沢
そう。なんかねぇ、
ショーというものはその要素がないとダメ。
その要素がないと、おもしろくない。
糸井
そうだ。ほんとに。
矢沢
おふざけの気持ちもあり、
やり切っちゃう気持ちもあり、
見せきっちゃうところもあり。
それがショーというものであり、
そもそもファッションというものが
そういうものなんだと思うんですよ。
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(まだつづきます。ヨロシク)
2019-06-17-MON
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