第3条:液体肥料をつかいます。その1
ほぼ日 それでは、「永田農法の10か条」、
第3条をお願いします。
諏訪 次の第3条も永田農法の大きなポイントです。
「液体肥料をつかいます」
この「液体肥料」というのは、
園芸の経験がある方ならご存じかと思いますが、
窒素、リン酸、カリという成分が
水に溶けた状態になっているものです。
商品によって栄養素の含有率は若干違いますが、
基本的には、その3つの栄養素を含んでいます。
永田農法では、この液体肥料を
植物の成長にあわせて薄めてあたえるのです。

ほぼ日 堆肥や鶏糞といった固形肥料ではないのですね。
なぜ、液体肥料を使うのですか?
諏訪 説明しましょう。
植物は、根から、
水分といっしょに栄養を吸収します。
その栄養というのは
土の中にある肥料の成分が
雨水や水に溶けてイオン化したものなんです。
逆にいうと、水に溶けなければ、
根はそれを吸収できないということなんです。
ほぼ日 ああ、なるほど。
諏訪 つまり、土の中に
どれだけたくさんの固形肥料を与えたとしても、
雨が降って、雨水が肥料を溶かさないと
植物は栄養をとることができないんです。
逆に固形肥料を少ししか与えなくても
たくさん雨が降って、いっぱい溶けちゃうと
急に肥料が効いたりしちゃう。
ほぼ日 固形肥料だと
肥料が効くかどうかの大半は
雨まかせとなるわけですね。
諏訪 ええ。
だから栄養のコントロールがしずらいんです。
一方、液体肥料は植物の成長にあわせて
「今、肥料が足りないな」
と思えば、ちょっと濃いめにあげれば
ぐんぐん吸ってぐんぐん成長するし、
「肥料が効きすぎてるな」
と思えば薄めにすればいい。
もっといえば完全に青々として
野菜が栄養過多になりそうだと思えば
水だけをあたえればいい。
液体肥料にはすぐに効くということと、
栄養の足し算と引き算が
しやすいという利点があるんです。
ほぼ日 なるほど、なるほど。
第1条で「痩せた土」を用意したのも、
土壌を栄養のないゼロの状態にしておいて、
栄養の足し算と引き算をしやすくする、
という意味合いがあったのでしょうか?
諏訪 そうなんです。全てつながってるんです。
野菜の成長にあわせて
最低限の栄養をあたえる永田農法では
コントロールをしやすい液体肥料を使うことが
大事なポイントになるんです。
これを永田先生は
「子育てと一緒ですよ」と言うんです。
固形肥料を最初に土に入れておく、
という一般農法を子育てにたとえると、
子ども部屋にあらかじめ、
お菓子やご飯や遊び道具や
勉強道具や絵本を、
将来必要になるであろうという
予測のもとにどさっと入れて
「あんたが好きなときに
 好きなだけとりなさい」
というやり方なんです。
それだと常に過食状態にあるので、
子どもも意欲がわかないし、
たくさん勉強道具に囲まれて
拒絶反応を起こす可能性もあります。
野菜も、育てる側が様子を見ながら、
「本が読みたいのかな」
「夕飯前だからお菓子はやめておこう」
「そろそろ泳ぐことを教えようか」
というふうに、ようすを見ながら
育てていくことがポイントだと思うんですよ。
まあ、これはあくまでもひとつのたとえで、
野菜と子育てをまったく同じように
考えられるわけではありませんけどね(笑)。
ほぼ日 なるほど。
「永田農法=スパルタ農法」
というイメージがありましたが、
植物の成長のことを
考えたうえでのことなんですね。

(つづきます)
2008-04-16-WED