矢野×糸井
第6回 僕はそれを信じてる。
糸井 こないだ坂本くんが、
「当時の自分に会ったら頭突きしちゃうかも」
って言ってて。
矢野 (笑)!
糸井 俺はよく、当時の自分に会ったら
説教してやりたいって言うんだけど、
何て言うの、
だからできたことっていっぱいあるんだけど。
80年代の、言っちゃ悪いけど
自分も天狗になってますから。
矢野 わたし、なんも思わない(笑)。
一同 (笑)!
糸井 この人は(笑)!
── 当時の自分に会ったら?
矢野 わたし、よくやってると思う(笑)。
糸井 おサルだからさ。
矢野 サルだから。ほらね(笑)!
糸井 自然に段階的に発展しちゃう(笑)。
矢野 ダメなのよ。そんなこと言われても(笑)。
でも、でも、考えてみれば、
とんでもないことをみんなやってましたね。
人の金でね。
糸井 やってましたね。やってました。
だから、その時にルールのある仕事で
組んだっていうのが、やっぱり、
おもしろいんですよね。
例えばさ、亀田三兄弟とかってさ、
フォーマットがあるじゃない。不良の。
来たら睨むとかさ(笑)。
もっとこう、いやらしく変だったもん、僕ら。
そん時にルールのある仕事したのは、うん、
非常にいいですね。
‥‥でも、そんなことを言われて、
なるほどそうだね、ってわかるお客さんて
どこにいるんだろうね?
純粋に、作る人が聞いたら、
ものすごく「そうーっ!」と思うと思うんだけど。
矢野 うんうん。
糸井 受けるっていう立場では、このことはなんか、
わかられないような気がする。
‥‥で、最近、こないだほら、
無理やりに「できたんだけど」っていう
シリーズあったじゃないですか。
あったんですよ。
これはおもちゃの種類を
まったく変えてみたくなったっていうことを
してみたら、アッコちゃんも
「やりましょう」って(笑)。
あれ引き受けられた時はなんか(笑)、
新しい遊びがまたできるなぁと思ったねぇ。
── 糸井さんが詞を書いて
矢野さんが曲をつけた
「おんな」と「蛇の泣く夜」ですね。
その2つを、コンサートで
聞かせていただきました。すごかった。
矢野 糸井さんは聞いてないの?
糸井 俺、わざとそのままにしてあるの。
矢野 なんだー。
糸井 MDのままなのよ。
で、ちょっとこわいのよ。
矢野 いいわよ。聞いてよ。
糸井 いや、自分では今もこわいですよ。
つまり、それ、それうまく成立しちゃうと、
僕は、もっといきたくなりますからね。
もっと行きたくなるっていうか、
やっぱり詩って書きたくなる時あるんで、
詩人と社会人て一緒に生きていくの、
なかなか大変なんですよ。
音楽家は全然別ですからね、いいんですけどね、
詩人で社長は、なかなか難しいですよ。
矢野 辻井喬。
糸井 辻井喬ね。
── 受け取る側の矢野さんは、
できました! って時に、まずどう思うんですか?
矢野 「ほう!」(笑)。
まず、その、どういうボールが来たかな?
と思って、こう見て。
ぽんぽんてやって、「おお、はずむな」とか。
ボールぽんぽんて、一人で投げてみて、
壁にぶつけたりとかして、
「お。お。これは、なかなか」と思って。
糸井 (笑)。
矢野 それで、やってるうちに、
うんと高く飛ばしてみたりとかして、
そのうちできちゃう。
十分楽しい、みたいなね。
── そのうちできちゃう。
うわー、困ったなとかそういうのはないんですか。
何だこれは? とか。
矢野 何だ、これは。‥‥ないね。
糸井 曲に関しては、無限にできるんでしょう?
きっと。モチーフさえあれば。
矢野 そうだね。
糸井 僕はそれを信じてるんですよ。
つまり、曲っていうのは、
できなくなったりするもんじゃなくて、
無限にできちゃうものである。
呼吸のようなものであると。
だから、呼吸をする時に、最初にポンポン!
(手を打つ)と何かあげれば、
この人から何か返ってくるっていうのは、
信じきってるから。
矢野 このサルにぴったりのものを
くれたに違いないっていう、
まず、信頼があるから。
それが、例えば、このサルじゃなくて、
投げる人がただ投げたかっただけっていうものが
あったとしても、それでも、それはわたしが。
糸井 拾いに行って(笑)。
矢野 そうそう。
遊ぶことができるはずだっていう
確信があるからですよ。
糸井 らっきょう投げたりね(笑)。
矢野 そうそう。「あー、ちくしょう、
まだ剥けねえよー」って言いながら。
  2006-12-01-FRI

(来週月曜日につづきます!)
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