第5回 お金はあるだけで増えていく。
   
── 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』に
書かれていますが、
山田さんは、会計士になられて
シンプルかつ具体的に
ものごとをとらえるようになった、
とおっしゃっています。
すべての事象がぼんやりと、
よくわからなくなっており、
判断力=反射力に
なってしまいがちなのですが‥‥。

山田 ものごとは、
みんなすごく複雑なんですけれども、
たとえば、とりあえず数字にして、
損得で考えてみると、
それだけでシンプルで具体的になりますよ。

買い物を例にしてみましょうか。
引っ越しするなり結婚するなりで、
タンスやテレビを買うとします。
それが安いか高いかを判断するときに、
僕は「何年もつか」を
軸に計算をするんです。

「テレビならまあ5年かな」
と考えたとして、
テレビの値段を5で割って、
1年あたりいくらなのかを計算します。
「タンスなら10年かな。
 でも、このアパートに住んでるから
 この色でいいけど、
 引っ越したら使えなくなるな。
 だったら3年で割ってみよう」
というようにね。
ひげそりは、1年なんですよねぇ。
僕はやり方が下手なせいか、
すぐに壊れるんですよ。
ひげそりは1年しか使えないので、
あまり高いものは買えないな、
電話もFAXもどんどん機種が変わっていくから、
あまり高いものは買えないな、というように
そのくらいの計算はいつもして、
買い物をしています。
── 使用年数で割って考えたことは、
これまでなかったです。
山田 スーツもそうですよ。
流行のデザインのものは、
「これは2年が限界かな」
と、2で割って考える。
ベーシックなタイプのスーツは、
5年か10年で割ってみる。
1年にいくらかかるのかを考えて
どちらを買うほうがいいのかを
決めたりします。
── 日々の生活資金をケチって、
海外旅行でバーンと使う、
という生活を送っていましたが、
お金を絶対額でとらえると、
ちょっと考えものですね。
山田 そもそも海外旅行自体、
僕はあんまりおすすめしないです。
旅行というものは、思ったよりも
お金が出ていってしまって
30万円の予定だったものが
40〜50万円になってしまうんです。
旅行先では気が大きくなって
お金をバンバン使ってしまうからですね。
だったら、オーバーして使うぶんを、
最初から計算に入れておくべきなんですよ。
最初から40万円で計算して、節約すればいい。
── 日常の暮らしでがんばって節約したから、
どうしてもオーバー気味に使ってしまうんです。
山田 そうなると、お金が減っていく。
減ってくと基本的にお金持ちにはなれません。
別にお金持ちになれなくてもいいなら、
話は別なんですけど、
お金持ちになりたいと思ってるのであれば、
少なくとも、お金は
増やさなければならないんです。
── 減らしていると当然増えないですね。
山田 お金には、自己増殖機能というものがありまして、
あるだけで、どんどん増えていくんです。
銀行に預けても、利息が0.01%
ついたりするでしょう。
株式投資なら、ふつうにやれば
5%くらいは利回りが出るはずなんです。

世界を見渡しても、お金持ちの多い民族は、
あまりお金を使わないんですよ。
お金は持ってるだけで
自己増殖することを知っているから。

お金持ちがどんどん儲かると言われるのは、
真理なんです。
お金は使わないほうがいいというのは、
つきつめれば、そういうことです。
── でも、私は、山田さんの本を読んで
金づかいが荒くなったんです。
山田 いったいどこを読んだんですか。
── 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を読んで、
住宅ローンは急いで返さなくてもいいんだ、と
思ったんです。
新聞雑誌どれを見ても、
まず金利の高いローンを返しましょう、
というアドバイスが載っています。
ですから、これまでは繰り上げ返済を
一生懸命やっていたのですが、
これは、返さなくていいんだ、
そのぶん手もとに残して、
人生を謳歌しようと思ったわけです。
山田 貯金を切り崩して
繰り上げ返済をするということは
手もとにお金がなくなるということですから、
いざというときに、何もできなくなるんです。
急に難病にかかった、災害が起きた、
相手の親の手前もあり豪華な結婚式を
しなくてはならない、となると、
お金を借りなきゃいけなくなってしまう。
だから貯金はあったほうがいいと思うんです。

繰り上げ返済をすると、
その人の財産は家だけになってしまうんです。
財産が家やマンションだけだと、
もしも地震が起こったらどうなります?
担保が地震によって
一瞬でなくなってしまうわけですから、
お金を貸してもらえないんです。
日本はまだまだ担保がなければ、
お金を貸してもらえないですからね。
── では、
ずっとそこの家に住むのであれば、
繰り上げて返さずに
貯金をしていたほうがいいんですね。
山田 ええ、定期的に返せるのであれば。
── なるほど。でも、
やっぱり気が大きくなっちゃったですね。
山田 そこはちがうと思いますよ(笑)。
万が一に備えてください、万が一に。
── 山田さんは、
お金をあまり使わないのだとしたら、
稼ぐモチベーションは、
どこにあるんでしょう。
山田 うーん。老後の安心感かな。
── に、29歳なのに!
山田 18歳くらいのときから
貯金についてはきちんと考えています。
日本の円の価値が100分の1になっても
なんとかなるな、と思いながら貯金しています。
お金のゆとりは、心のゆとりなので。
(つづきます!)


2005-09-28-WED
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