第4回 1年で使ったお金は1万円。
   
── 山田さんの本には
在庫はあるだけで損をしている、
というお話があります。
私は、あふれ返っている自分の本棚を見て
「これでは新しい知識を得る
 チャンスをなくしている」
と思いたち、古本を思い切って処分しました。
山田さんも、やはりものを
上手に捨てていらっしゃいますか。
山田 いや‥‥捨てるのは、できないんですよ。
妻は捨てるんですけど、
僕は抵抗してしまいます。
捨てるのは、なかなかできない。
── 私は山田さんの書かれたアドバイスにより
捨てたのですが‥‥、
でも、いまおじゃましているお部屋は
きれいですよ。
これは、奥さまのいろんな介入が?
山田 そうです。
介入がこのような効果を生んでいます。
僕は会計士になってから、
いろんな発見がありましたが
僕自身の性格自体は変わってないので‥‥。
── 性格、というと?
山田 貧乏性で、ケチです。
── どのくらい貧乏性でケチなんですか?
山田 会計士になってから、
25歳かそのくらいのときに、
いちど計算したことがありましてね。
食費と光熱費を除くと、
1年間に使ったお金が、
1万円もなかったんですよ。
── ‥‥?!!!
山田 いやー、ほんとにお金を使わないんですよ。
── ははははは。
山田 はははははは。
── 服とかは?
山田 服は買わないんで。
── 遊びには?
山田 自転車で新宿や渋谷に行けたので、
交通費もいらないし、使うとしても、
レンタルCD代くらいかな。
いまも、CDやビデオは、
買わないです。めったに買わない。
── うーーーん。
山田 お金を使うのがあんまり
好きじゃないんですよ。
「買うこと」に価値を見いださないタイプです。
遊びたいなら、
テレビを見てたらいいじゃないですか、
タダだし。
── ‥‥。
山田 インターネットも、
会社のネットで見ればいいでしょう。
とりあえず自分の金は使わない。

結婚したとき、
妻が「カレンダーを買う」と言ったので、
信じられませんでした。

「カレンダーなんて、もらえるじゃん!」
「カレンダーはインテリアだから、
 部屋に飾るのに、
 八百屋さんからもらったのではイヤだ」
「日めくりでいいよ、日めくりで!」
そんな論争が起きました。
── ははははは。
山田 でもまあ、1000円や2000円で
カレンダーに印刷された絵画を、
かわるがわる1年間味わえるならいいのかなと、
最近は、多少は納得してます。
── 「多少」なんですね。
山田 そういった、僕のような考えが
経済的合理性からみて正しいのかというと
そうでもない、
ということは、会計士になってからわかりました。
── どういうことですか?
山田 『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』にも書きましたが
大きな買い物も小さな買い物も、
全部ケチると、たしかにお金はたまります。
けれども、小さな買い物を節約しても、
そんなに効果が大きいわけではないんですよ。

「塵も積もれば」といいまして、
たとえば、1日100円ずつを贅沢しただけで、
年間ベースにすると3〜4万円になってしまう。
でも、考えてみてください。
たとえばバッグひとつ買ったら、
3〜4万円なんて、すぐ飛んでしまいます。
そう考えると、小さな節約には、
そんなに経済的合理性はない。
── お金の絶対額の話ですね。
ネギの安いスーパーをさがして
2〜3軒回ってしまうくせに、
本や服を買うときは
気にせず「もう一冊」と使ってしまいます。
山田 性格の問題がからんできますからね。
僕もそうなんですけど、
大きな金額になると、不用心になりがちなんです。
やれ車を買うとなると、
どうせなら150万より170万でいいか、とかね。
20万ってけっこう大きいんですよ。
── CDをいっしょうけんめい
レンタルしていたとしても。
山田 ね? 千枚以上借りられる次元ですからね。
それはよくないなと思います。
── 合理性のない考え方だとわかっていても、
性格上しかたないですね。
山田 そうなんです。僕みたいなケチに限って、
後輩と飲みに行くとき、
見栄をはって、バーンとお金を
出しちゃったりするんです。
そして、すんごい後悔するんです。
「しまった。
 ぜったい覚えてもらってないんだろうな」
って。
── 人間というものは、奢ってもらったことは、
わりと覚えてないものです‥‥。
山田 そういうところで、
3万円とか5万円を使って、すごい後悔!!
── でも、そういう節約の素質があるから
公認会計士が向いている、
ということも言えるかもしれませんね。
山田 会計士の友達で
自己破産すれすれの人もいますよ。
── ええ?
山田 バーで飲むのが好きで、
飲んで終電がなくなってタクシーで帰り、
そんなことを毎日毎日やってると、
ひと月50万くらい使ってしまいますから、
当然破産、と。
── 儲け以上に使うと、そりゃ破産ですね。
山田 「終電で帰れよ」みたいな話でしょう。
性格が邪魔して、そうはいかないらしい。
僕みたいな者も含めて、
会計士にも、いろいろいます。
── 性格‥‥由々しき問題ですね。
(つづきます!)


2005-09-27-TUE
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