(7)「例外」が本質を教えてくれる。

糸井
いま、ぼくは
「モデルの時代」だと思ってるんです。
証明や論文を書く必要はなくて、
とにかく「できてるものを見せてごらん」
という時代。
グーグルもヤフーもアマゾンも、
みんな、実際にできているものを見て
理解してますよね。
石川
たしかにそうですね。
糸井
そしておそらく、いまはビジネスモデルを
いくら説明してもダメで、
実際に「こんなモデルです」と
見せないと伝わらない時代だと思うんですね。
釣りでいえば、いくら釣り方を
説明することができたとしても、
実際に1匹釣らないとだめなんです。
石川
とにかく釣ってくれという。
糸井
そうなんです。
そしてぼくはこのいまの状況って
とくに、湖での釣りの大会に
似てるような気がしていて。
石川
湖での釣り大会、ですか。
糸井
いま、湖の釣りって、
生態系がものすごく研究されているんです。
季節、天候、魚の習性、餌の成り立ち、
湧き水があるかどうかなど、
徹底的に調べられているんですね。
だから湖の釣り大会だと、
みんな「どうやれば釣れる」ということは
わかってて参加するんですね。
石川
ああー。つまり、情報については
みんな、調べようと思えば、
ある程度同じものを手に入れられる?
糸井
そうなんです。
さらに、使っているマニュアルは
みんなほとんど一緒で、
釣りのスタイルの流行もあるから、
基本的にはみんな、
同じアプローチで釣ろうとするんです。
だけど、だからこそ、
「1匹目を釣ってみせること」が
ものすごく大事というか。
石川
情報はみんなアクセスできるから、
「どれだけ詳しいか」は
とくに力にならない。
糸井
そうなんです。
そして、調べた情報をもとに
いくら「こうやれば釣れる!」と思っていても、
1匹目が釣れない限り、
その読みは違ったんですよね。
1匹釣れてはじめて、
「たしかにこの方法は合ってるかもしれない」
ということになるんです。
石川
あ、わかってきました。
糸井
そして、ぼくはこの考え方を
釣りで覚えたんですが、
「2匹釣れるとパターンは読める」んです。
石川
2匹釣れるとパターンが読める。
糸井
釣れるか釣れないかが大事なとき、
1匹だけだと、
釣れてもまぐれの可能性がありますけど、
同じやりかたで2回釣れれば、
その読みが合っている可能性が
一気に上がるんです。
そしていまの時代に
いろんなことを考えるときに、
この「2つ見つかればパターンは読める」
という考え方が、
わりと役に立つ気がしているんです。
石川
まずは2匹釣ることから
はじまるというか。
糸井
ええ、そうすると
次につながっていくんです。
石川
あの、いまの糸井さんのモデルの話を
より発展させるものとして、
ぼくら研究者のモデルの作り方の話を、
ぜひ共有させてもらえたらと思うんですけど。
糸井
ぜひ聞きたいです。
石川
ぼくら研究者は
「例外にこそ本質がある」と
思ってるんですね。
糸井
‥‥しびれるなあ(笑)。
石川
どういうことかというと、
データからなにかしら
パターンを読んで、モデルを作りますよね。
たとえば、ものすごくわかりやすくいうと、
あるていどの数
「O型で大雑把」の人を見つけると、
ふつうの人は
「O型の人は大雑把」という
モデルができた、とか思うわけですけど。
糸井
ええ、ええ。
石川
たぶん研究者が特徴的なのは、
そのとき「O型は大雑把なのかな」と思っても、
そこで終わらないんです。
研究者たちの場合、
今度はそのモデルにあてはまらない
例外を引っ張ってくるんです。
糸井
「例外を引っ張ってくる」?
石川
ふつうの人は、データを見るとき、
例外があったら切るんです。
つまり「大雑把じゃないO型」がいたら、
「ああ、そういうひともいるのね」と
無かったことにするんですね。
だけど、ぼくらからすれば
例外や極端こそおもしろいと思ってて、
「この例外まで説明できるモデルを
 作れないだろうか」
と考えるんです。
これができると、最初のモデルが
さらに本質的なものになりますよね。
糸井
つまり「大雑把じゃないO型」の
説明までできたら、
「O型が大雑把」というモデルが
もっと事実に即したものになると。
石川
そうなんです。
そこまでできると、対象について、
より深い理解ができる。
そしてそういった、
より本質的なモデルを作ることが
ぼくらの興味なんです。
だから、さらに言えばぼくらは、
「あえて例外や極端なケースを探して
 もういちどモデルを構築してみる」
というようなこともするんです。
糸井
へえー。
そこまで例外を使うんだ。
石川
たとえば、さっきの釣り大会の例だと、
2匹釣れてモデルの見当がついたら、
こんどは
「そのモデルと違うけど、
 うまく釣れている人はいないだろうか?」
と、考えていくんです。
その人がなぜ釣れているかまでわかると、
その日はどう釣れているのか
ものすごく深い理解ができますから。
糸井
あ、それ、すごくよくわかります。
釣り大会で1位になるのは
そこまで見えている人なんです。
石川
みんなこれが苦手で、
たいてい釣れている他の人のやりかたを
真似しちゃうんです。
だから、似たような結果に
なってしまうんです。
糸井
いまの話で思い出したのですが、
ぼくらはずっと、
「はたらく」というテーマに興味があって、
『はたらきたい。』という本をだしたり、
「はたらきたい展」という
展覧会をしたりしてきているんですね。
それでその展覧会のほうで、
入り口に展示した文章のはじまりが
こういう内容だったんです。
「将来はたらかなきゃいけないと思ったら嫌で、
 小学生のぼくは布団の中で泣いたんです」
石川
つまり「はたらく」ことの展示なのに、
入り口から「はたらきたくない」という。
糸井
そうなんです。
これもまさしく「例外処理」の話で、
つまり人間は単純に
「はたらけよ」と言われて
「はーい」とたのしくはたらけるわけじゃない。
はたらきたくない気持ちもあったり、
逆にはたらくのがおもしろくて
徹夜するくらい仕事に打ち込むこともある。
そういった、これまでだと
切り捨てられていた事実まで含めて
「はたらく」について考えたら、
どんな景色が見えてくるんだろう、というのが、
ぼくらがその展示でしたかったことなんです。
石川
例外を含めて考えることでのおもしろさ、
まさにそうですね。
みんなけっこう
「共通項に本質があるんじゃないか」
と勘違いしてるんですけど、
違うんですよね。
本質は例外から見えてくるんです。

(つづきます)

2015-09-01-MON

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