ほぼ日刊イトイ新聞
──予告のようなもの── 主役になれるシャツをさがして。 

「白いシャツをめぐる旅。2019」をはじめるにあたって、
決めたテーマがありました。

それは、
「この1枚が主役になる、そんなシャツを集めよう」
ということ。

「ファッションにおける永遠の定番」
なんて言われることもある白いシャツですけれど、
じつは毎年、すこしずつ「あたらしい考え方」が
そのつくりかたに入ってきます。
「みんなが好きと思う傾向」や
「世の中の気分」がとりこまれて、
「これがうちのブランドの定番です」
というアイテムであっても、じつは微妙に
パターンや素材、色の変更がされていたりする。
そういう流行って、
いったいどこで誰が決めているんだろう? と、
服の仕事をしていると不思議に思うことがあるんですが、
ものすごく先端の人が
「こうですよ」と決めているというよりは、
「やっぱりなんだか、こうだよね」と、
みんなが思うようになることが
「流行」なのかもしれません。

シャツで言えば、この旅を始めた5年前は、
「Tシャツを1枚で着るオトナが減ったなあ」、
そして
「白いシャツを、まるでTシャツのように、
さらりと格好よく着る人がふえたよね」、
そんな街の風景がありました。
その頃、男性は「フィット」、つまり、
それぞれの人が、それぞれの体型に合った
シャツをぴったりめに着ていて、
それはイタリアのシャツの在り方から来たスタイルでした。
いっぽう、女性のシャツは「ゆったりめ」、
年齢とともに気になる体型をじょうずにかくし、
風をふんわりまとうようなシルエットのシャツが出てきて、
いっぽうで、比較的フィットな、
シルエットを強調するようなシャツも、
格好いい着方のひとつとしてありました。

それから(この連載をみてくださっているかたは
お気付きと思いますが)女性のシャツは
どんどん「ビッグシルエット」の傾向がすすみ、
男性のシャツも、それを追うように大きめになりました。
ちなみに女性の流行の3年あとを男性が追うのだそうです。

このコンテンツも、スタート時は「メンズ」「レディス」を
明確に分けて考えていたのですが、
そのうち「男性のシャツを女性が
(たっぷりめに)着るのもかっこいい!」、
「男性と女性、体型が違っても、
パートナー同士で共有するのもおもしろいよね」
なんていう考え方になりましたっけ。
メンズシャツのメーカーに、
あえてレディスのシャツをつくってもらったり、
同じデザインだけれどサイズ感を変えて、
性に関係なく、サイズで選べるシャツづくりをしたり。
この傾向は、ことしもすすみ、
「よりビッグシルエット」になっています。

ちなみにこの傾向はことしもすすみ、
女性だけでなく、男性も「ビッグシルエット」のシャツが
多く着られるようになってきました。

伊勢丹のバイヤーさんに訊きました。

‥‥なーんて、
さも知ったように書いておりますが、
ぼく(担当=武井)が
そこまでくわしいわけじゃありません。
このお話、服を仕入れる仕事を専門にしている
伊勢丹のファッション担当の
バイヤーさんたちからの受け売りです。
ぼくも服は好きなのでよく見に行きますが
(レディスの服も楽しいから見ます)、
この話を聞いてから見たら、ほんとうにそうでした。
ちなみに、Tシャツも、厚手のたっぷりしたものを中心に、
ブームが再燃しているみたいです。

「ことしは、この1点が主役になる、
そんなシャツを集めましょう!」

そう提案をしてくださったのが、
今年の「白いシャツをめぐる旅。」で
多大な力を貸してくださった、新宿店婦人営業部
コンテンポラリースタイル担当アシスタントバイヤーの
清水文恵さんです。
今年の春夏向けの展示会(各ブランドがひらく、
新作発表と受注のための会)をたくさん見て、
その傾向に気付いたんだそうです。 

「もちろん、傾向はいろいろなものがあるんです。
すべてがすべて、そういうものではないのですけれど、
わたしが思った傾向として大きいものが、
思わず「見惚れ」てしまうような、
『主役になれるシャツ』だったんですね。
前回は、ほんとうにベーシックな
ボタンダウンのシャツなどがありましたが、
今回は、ボタンダウンだけれど
すごくビッグシルエットですとか、
開襟になっていたりとか、刺繍が入った生地であるとか、
白いシャツでも、ただのシンプルじゃない、
着方によって遊べるようなデザインのものを
あえて選ぼうと考えたんです」
そうして選んでいったなかには、
1枚で前を閉じて着れるものもあれば、
Tシャツなどの上に羽織って、3月~4月ぐらいは
軽い羽織りみたいな感じで過ごして、
5月~6月になったら
タンクトップやキャミソールなどに重ねて前を閉じて
というような着方もできる。
もちろん盛夏から秋にかけても着られますし、
そんな意味で長い期間『主役』を張れる、
そんなシャツが集まったと思います」

ビッグシルエットの傾向は、ますます?

「はい。ビッグシルエットのシャツって、
ベーシックにそのまま着てもいいですし、
ボタンを2つくらい開けて、
ボタンダウンでもあえてその襟のボタンを外して、
肩を抜いて着たりだとか、
袖をちょっとパフッてさせたシルエットをつくったり、
前をちょっとブラウジングして
ワイドパンツや細身のパンツと合わせてもいいですし、
着方はほんとうにいっぱいあります。
ビッグシルエットのシャツを前だけブラウジングすると、
横からのシルエットがきれいなんです。
後ろ姿の、腰から下もきれいなので、
40代、50代、60代と
ヒップラインが気になってくると、
後ろ姿に年齢を感じることが気になるんですね。
ビッグシルエットだと、そこがカバーできます」

なるほど、後ろ姿!
なかなかふだんチェックしないですよね。
たしかに、街で見かける格好いい人って、
歩いている姿や、横から見た姿、
後ろ姿に「わぁ!」って思うことがあります。

「そうなんです。
360度カッコいい着方をしたほうが、
シャツが活かされると思いますよ」

スマホを使ってムービーで自撮りして、
くるっと回れば後ろ姿のチェックもできますよね。
みなさんにもおすすめしたいなあ。
(バイヤーさんは、ふだんから、
後ろ姿も気にしているそうですよ。)
そうそう、ロングシャツもふえていますよね。

「ロングシャツも着方が楽しめるアイテムですよね。
前を全部開けて軽い羽織りみたいに着たり、
全部閉めて、ベルトをつけてブラウジングしたり、
全部閉めてそのままドレスみたいにっていう着方もあって、
1枚あると、そんなふうなたのしみが増えると思いますよ」

そうそう、メンズシャツを着ちゃおう、
というレディスの着方も、なんだか定番的になりましたね。

「そうですよね。着方はほんとうにいっぱいあります。
モードにも着れるし、
逆にほんとうに男性のシャツを借りてきちゃいました、
みたいなムードもかわいいですよね。
ビッグシルエットでメンズライクだからこそ、
たぶん女性らしくも振り切れるし、
メンズらしくも振り切れるしっていう
ところがあると思います。

ところで、だんだんとTシャツやカットソーも
復調のきざしがあるように見えるんですけれど。

「たしかにあります。それこそ1枚でサマになるような、
厚手のTシャツが店頭に並んでいます。
ただ、年齢を重ねたかたは、
Tシャツだと二の腕が気になるとおっしゃって、
カットソーじゃなく、シャツを選ばれるように思います」

これから先「シャツって流行おくれ!」
みたいになることは‥‥?

「それはおそらくないと思いますよ。
大人の女性にとって、
シャツというものはありつづけると思いますし、
流行とは関係なく、長く着ていただけるものでもあります。
でも、だからこそ、ディテール、柄や素材をかえて
私たちからは提案をしていきたいと思っています。
男性の流行は女性のあとを追うと言われていますが、
女性のみなさまも、メンズならではの流行を見て、
たとえば着こなしや小物使いなどを
ちょっと参考にするのも楽しいですよ」

男性のシャツの世界は。

さて、ユニセックスで着られる
メンズシャツの製作には、
新宿店紳士スポーツ営業部
メンズアクセサリー担当の和泉圭さん、
そしてオーセンティックウェア担当の鳥山脩さんに
お世話になりました。 

シャツの詳細は連載のなかで追ってお伝えしますが、
まずは男性のシャツの傾向について、
お話をうかがいました。
あの‥‥男性もビッグシルエットの傾向にあるのは
見ていてよくわかるんですけれど、
いっぽうで「フィット」なシャツは、
そんなに着られないものなんですか。
ぼく、けっこう好きなんです。
ジャケットの下に着るときは、やっぱりいいですし、
1枚で着ても格好いいと思うし。

「ビッグシルエットは、あくまでも、
カジュアルウェアでの話ですよね。
鳥山さんの担当するシャツは、
そういうものが圧倒的に多いんじゃないかな」

と和泉さん。

「そうなんです。カジュアルウェアは、
全体的にビッグシルエットの傾向にあります。
ニットも3XLくらいまでつくって、
細身のスタッフがそれを着て紹介をしているくらいです。
シャツも同じように大きめのものが主流で、
みなさんお求めになっていますね」

と鳥山さん。

「カジュアルシャツでは、さきほどレディスの話にも
すこし出ましたけれど、
無地の厚手のオンスのTシャツが流行っているので、
その上に着て負けないくらいのボリュームのある、
たっぷりしたシャツが好まれています。
また、アウター感覚というか、
オーバーシャツというか。
コートやブルゾンと同じ感覚で
大き目を好むお客様が多いですね。

なるほど、ビッグシルエットは
カジュアルウェアでの話だったんだ!
じゃあ和泉さんの担当しているビジネスウェアでは、
そんなふうに大きくはなっていないんですか。

「はい。それこそボレッリなどのイタリアのシャツは
きちんと採寸をして、
ぴったりのものをお求めになるかたが多いですよ。
一般的なシャツでは、
すこしゆとりがあるものは出てきていますが、
それよりも、防臭効果のある生地だとか、
シワになりにくい素材を使うというような
コンフォートシャツがよく出ていますね」

ビジネスとカジュアルの流行がよりそうこともあれば、
こんなふうにわかれていくこともあるんですね。
そういえば、ぼくら、いっしょに、昨年、
麻の半袖の開襟シャツをつくりましたよね。
あれは「すごくほしい」のに
「世の中にあんがいない」ものだった。
ところがことしは、開襟シャツ、
お店でけっこう見かけるんですよ。

「そうなんですよ、トレンドの兆しがありますよ」

と鳥山さん。
おお、われわれ、じつは先を走っていたのか!

「堅苦しくシャツを着たくない、
カジュアルに着たいと思ったとき、
開襟シャツってべんりなんですよね。
1枚でパッと着るだけで楽に様になりますし、
カジュアルに一気に落とせるから」

ことしは、その開襟をさらに進化させて
おもしろいシャツをつくりました。
その話はいずれ、ということにして、
じゃあ、ボトムスについてもお聞きしようかな。

パンツも「たっぷり」傾向。

まずはメンズ。いままで大きめのトップスには
タイトな感じのものを合わせるというのがありましたが、
ことしは‥‥。

「ボリュームにボリュームで、
太目のパンツを合わせてほしいなと思います。
今は上も大き目、下も大き目で、
ズドンと落ちるシルエットがひじょうに流行っているので、
白いシャツだったら、カーキの軍パンだったりとか、
それこそチノもいつもより2インチぐらい上げて
大き目に着ていただくのがいいと思います」

と、鳥山さん。
でも2インチ上げたらぶかぶかですよ。

「大丈夫です。ウエストをぐっと絞っていただいて。
シャツをタックインせず上に出すので、
パンツのウエストのしわは、
あまり気にせずにいきましょう。
裾も、短め推奨です。
ソックスが見えているくらいのほうがいいです。
たるませないように、8分か9分。
太いパンツでたるませると、だらしなくなるので」

いっぽう和泉さんはこうおっしゃいます。

「たっぷりめのシャツにはショートパンツもいいですよね。
そのときは、オンスが詰まっているような素材の
重ためのもので、膝上丈のものを」

そういえば膝下丈は
あまり見かけなくなりましたね。
ああいう流行も面白いですね。

「グルカショーツもよさそうですよ。
ウエストが巻きになってて、
タックがたくさん入っている、
もともとは軍ものだったショーツです。
それにサンダルを合わせたら格好いいと思います」

おお、鳥山さんのアドバイスもさすが。

ではレディスはどうですか?
清水さん、去年は、メンズライクなチノパンを
女性たちも履いてみようということでしたが、
ことしもチノがすごく多いですよね。

「そうですね。去年のようなメンズライクなチノから
今年はかなり個性的なチノに変わりましたね。
ことしもそんなチノをたくさん仕入れて‥‥」

おっと、そうでした!
「白いシャツをめぐる旅。2019」では
個性的なチノ素材の
レディスのボトムスをたくさん仕入れたのでした。
その話は、今日ではなく、次回からの連載で
お伝えしていくことにいたしましょう。

そしてシャツも、この5年で最多の
ブランド数、型数になります。
各ブランドのみなさんにインタビューした内容も、
この連載でお伝えしていきますので、
どうぞおたのしみに!

販売は4/24(水)からの予定。
伊勢丹新宿店でも同時にお店がひらきますよ!

(その情報も、あらためて。)

2019-03-28-THU

INFORMATION

「ほぼ日ストア」ページで
ことしのコレクションを紹介するのが4/12(金)、
「ほぼ日ストア」と伊勢丹新宿店、
三越伊勢丹オンラインストアでの販売スタートは
4/24(水)からとなります。

また、ことしはジェイアール京都伊勢丹でも
販売を予定されています。
くわしくは、各店舗にお問い合わせください。

どうぞおたのしみに!

■ほぼ日ストア 「白いシャツをめぐる旅。」
2019年4月24日(水)午前11時より数量限定販売

■三越伊勢丹キャラバン
 「白いシャツをめぐる旅。-見惚れシャツ―」

・2019年4月24日(水)-4月30日(火)
 伊勢丹新宿店本館4階=センターパーク/ザ・ステージ#4

・2019年4月24日(水)-5月21日(火)
 三越伊勢丹オンラインストア

・2019年5月8日(水)-5月21日(火)
 ジェイアール京都伊勢丹 5階=スタンダード&モダン SPOT

■伊勢丹新宿店本館4階=センターパーク/ザ・ステージ#4では、
ほぼ日ストアでのラインナップと合わせて、
さまざまな「白シャツ」をご紹介します。
白シャツと合わせるチノパンや、カットソー、
肌着、バッグ、アクセサリーをはじめ、
「自分だけの特別な一枚」に出会えるシャツの
カスタムオーダー会も実施いたします。

※くわしくは、こちらをごらんください

・BRAND
※一部、お取扱いのない店舗がございます。

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