その7 ROUTINE for beautiful people
          つくるひと・熊切秀典さん、若林祐介さんのはなし。
          「定番」をだいじにするシャツづくり。

2006年にはじまったレディースラインのブランド、
beautiful people(ビューティフルピープル)。
デザイナーの熊切秀典さん、パタンナーの戸田昌良さん、
営業の若林祐介さん、企画生産の米タミオさんの
4人の男性が中心になって、
「大人のための子ども服」をコンセプトにスタート、
七分袖や短い丈のウエアで人気となりました。
(だからサイズが「130」とか「140」という、
 子ども服みたいな表記になっているんです。)
最近はぐっと「大人っぽさ」が増し、
「どこにでもありどこにもないもの」をキーワードに
服づくりをつづけています。

▲こちらが熊切さん。

▲こちらは若林さん。

ちょっとメンズウエアの感覚を残しながら、
かわいらしさと着やすさをそなえた格好いい白のシャツは、
このブランドの「定番」のひとつ。
今回は、素材を変えての登場ですよ!

▶ beautiful peopleのウエブサイトはこちら

番、といっても、じつは毎シーズン、
微妙に調整をしているんです。
それはまず、素材が変わるので、
それに合わせてパターンを変えないと、
同じ印象にならないんです。

今回の生地はジャージ素材です。
綿のボタンダウンシャツの定番生地といえば
オックスフォードですが、
それをジャージ素材でつくってみたらどうかな?
という発想が出発点でした。

使っている糸は
くつしたやニットをつくることができる糸で、
ふつうはシャツには使わないものです。
超長綿を強撚(きょうねん)にしてあり、
生地にするとシャリッとした印象です。
感覚的にはポロシャツに使う鹿の子に近いんですが、
糸の表面を焼いているので、毛羽立ちがなく、
さらにシルケット加工をしていますから、
とても着心地のいいものになっています。
素肌にふれてもさらりとしていて清涼感がありますよ。

ぼくらの服は、ひとの動きに対して「立体」であることを
意識してつくっているんですけれど、
このシャツも、おなじです。
前回同様、脇は「ピポッドスリーブ」といって、
猟師さんが猟銃を構えるときに
まず手をぐっと挙げる動作をするんですけれど、
そのときにジャケットの下でも動きやすく、
可動域が大きくなるようにと考えられたものです。
これを、このシャツにも取り入れています。

タンダウンというのは、男子は好きなディテールですが
大きめのレギュラーカラーですと
女性には好き嫌いが分かれます。
ですから、定番のなかでどんどん小衿化がすすんで、
ことしは、このくらいの大きさです。

ストレッチの効いた生地なので、サイズは「小さめ」、
ややタイトにつくっています。
1枚で着ても、もちろんいいですが、
ライダーズジャケットのインナーにしても
恰好いいものをと思ってのサイズ展開です。
生地の特性で、着ているうちに体に馴染み、
多少伸びますが、洗って乾燥させれば元に戻ります。

いろいろなシャツがあると思いますが、
どちらかというと「小柄なかた」が
喜んでくださるサイズ感が得意かもしれません。
小柄なかたって、服を買うと
必ず修理に出すというんですね。
ぼくらの服は、そういうかたがたが
「そのまま着られた」と喜んでくださって。
とはいえ、それを目指してつくっているわけではなく、
「小柄なかたもぜひ」ということですね。

ディテールとしては、第一ボタンから第二ボタンの距離、
ここを「留めて着る」場合はいいんですが
「開けて着る」ときに、
開けすぎるとセクシーさが出過ぎますし、
もともとボタンダウンというのは
ここが詰まり気味なんですが、
狭すぎるときれいに見えません。
ですから「ひとつ開けても、ちょうどいい」くらいに
調整をしています。

こまかなことで言うと、
前身ごろの丈を少し長くしています。
これは、女性は胸があるので、
そこに持っていかれてしまいますよね。
ですので、着たときに、
前も後ろも同じになるようにと考えました。

丈は短めですが、最近はハイウエストのパンツが多いので、
そういう場合はインして着ていただいても大丈夫です。
時代感としてはやっぱりインに入れるのかな?
シュッと見えますよね。
逆に腰履きのパンツのときには、
外に出して着ても邪魔にならない、
ポケットにスッと手を入れられるような丈感です。

こんなふうな「定番」は、各アイテムに1着ずつ、
「あったらいいな」と思っているんですが、
なかなか定番にまで育てるのは難しいです。
自分たちが定番だと思っていても、
流行や時代感で、ずれてしまうこともありますから。

この先は、もしかしたら「大きめ」のものを
つくっていくかもしれません。
メンズウエアを本格的につくらないんですか、
という質問をよくいただくんですが、
「ノー・ジェンダー」ということで
このパターンのまま大きなサイズのものを
つくってみようか、という話になっているんです。
女性の体格がかわったということではなく、
いまって、女性が着るオーバーサイズのほうが
男性の着るものよりも大きい、
なんていう逆転現象がおきていますよね。
そうすると、もっと大きなサイズをつくれば
そんなふうに着たい人にも、
そして男性も着られるbeautiful peopleが
できるかもしれません。

熊切さんや若林さんに会うとついつい
「このシャツ、どうしてメンズサイズがないんですか」
と聞いてしまいます(自分がほしいだけ?)。
なので今後もしかしたらという話は朗報!
それくらい、この定番シャツのかたち、恰好いいんですよ。
だいいち、うーんと着やすいだろうなあ、
と、男子であるじぶんはうらやましく思うのでした。
今回じつはいろんな都合で
仕入れがあんまりたくさんできなかった
beautiful peopleの、このシャツ。
気になっているかたは、どうぞおはやめに。
「ほぼ日」での販売開始は、9/14(水)午前11時です。

(次回は、肌着の話です。つづきます!)

2016-09-08-THU