2年ほど前、「ほぼ日」で
こんな特集をしたことがありました。
「男たちよ、シャツの下に何を着る?」
というアンケートの結果報告です。

いちばん多かったのは「白いネックのTシャツ」、
ついで、「白い丸襟のTシャツ」、
「色つき無地」とつづいたのですが、
けっきょく「これがみんなを満足させる答えだ!」
という結論は、出ないままになっておりました。

このアンケートを担当したぼく(武井)は、
いちばん大勢の意見にしたがってみようと、
それから「無地の白いVネックのTシャツ」を
着るようになりました。
ぼくはふだんネクタイをつけないし
ジャケットを着る機会もそう多くないので、
シャツの第一ボタンを外して着るときに、
これだとたしかにそんなにヘンじゃない。
ただ、白いシャツの下に白い肌着というのは、
あんがい透けるもので、
腕のところの「肌と肌着の差」が、
わかっちゃうんだよなあ、まあいいけど、
というような感じで過ごしておりました。

今回、紳士ものの「白いシャツ」を
「ほぼ日」でやってみよう、ということになったとき、
「その問題、未解決だよなあ」と思いながら、
伊勢丹新宿店メンズ館に取材に出かけました。
アンケートから1年後、
いまからちょうど1年前の夏のことでした。

で。
そのときのレポートには
掲載していなかった部分があります。
というのは、この「シャツの下に何を着る」問題は、
取材中に「ひとつの」答えを知ることになるのです。
試着タイムを前に
「白いシャツの下って、何を着ればいいんですか」
と訊いたぼくらに、伊勢丹新宿店の岡田さんは言いました。
「それなら、一択です」と。
そしてぼくらを地下1階の紳士肌着コーナーにいざない、
教えてくださったのは、
「ベージュ・深めのUネック・切りっ放し」の肌着でした。

■「ベージュの肌着」って‥‥かっこわるくない?

そうです、ベージュです。
ちょっと予想はしていましたが、
これを着ている自分を想像すると、
どうにも居心地が「よくは、ない」。
それが正直なきもちでした。
そういうすがたを、他人に見られたくないなあ‥‥と。

しかし。「肌着姿を他人が見る」ということって
そんなに機会が多いものかと考えると、
じぶんの生活スタイルからは、ほとんど、ありません。
まあ、ジムのロッカールームでの着替えは、
週1回あります。気にする人は気にするでしょうが、
気にしなければなんということはないですね。
友人たちと旅行に行って共同浴場に入るというのも、
機会としては年に1度です。
そしてそういうときはもっと
カジュアルな格好をしていますから
「透け感が気になる白いシャツ」を着たりは、しません。

この「肌着問題」について話していると、
男子は(女子もかな?) 、よく、こう言うのです。
「いざというとき、どうすんだ!」
(つまり、色っぽいシチュエーションですね)
──これも、考えてみるに、「いざ」というときって、
そんなに滅多に、来るものでもないのでした。
たとえ来たとしても、
そういうときはそういうときで「なんとかなる」ものです。

まあとにかく、「シャツから肌着が透けるか透けないか」
の話として、ひとつの回答は、「ベージュの肌着」であり、
そこに付随する不安や問題と思われることは
じつはそんなにたいしたことじゃない、
ということが言いたかったのです。

こちらをごらんください。

紹介したさいは
「みちがえましたね!」と、みなさまが褒めてくださった
(ありがとうございます)
これらの白いシャツ着用画像ですが、
3人とも「シャツ1枚」を
さらりと着ているように見えますけれど、ちがうのでした。
じつはこのとき、3人とも、
シャツの下にその肌着を購入して着ています。
わからないでしょう? わからないんです。
この、じぶんたちの姿を鏡で見たとき、
「ベージュの肌着ってかっこわるい?」
という思いは、すっと消えていきました。
「ああ、こんなふうに、シュッと見えたほうが、
 ずっといいじゃないか」と。
これが、このコンテンツにおいての
「男たちよ、シャツの下に何を着る?」問題の、
「ひとつの解決策」です。

ポイントは、こうです。

白いシャツ1枚で、
 乳首や体毛の透けが気になったり、
 脇などの汗じみが気になったり、
 肌にはりついてぺたり、というような
 自分にも他人にも不快な場面を回避したい。

着用時に、生地の段差や、肌の色とのコントラストで
 肌着を着ていることがわかっちゃう、
 ということを回避したい。
 つまり「まるで肌着をつけていない」
 かのように、涼しい顔をしていたい。

さて、伊勢丹の岡田さんおススメは「グンゼ」、
ブランド名は「SEEK」でした。
製品は、こういうかんじです。

ほかにもいろいろベージュの肌着はあるのですが、
なぜこれが選ばれたのかというと、
「切りっ放し(カットオフ)」という。端の始末です。
首まわり、袖、裾が、
「はさみで切った布」の裁ち落としの状態。
生地を巻いたり縫ったりしていないので、
肌との段差がすくなく、シャツ越しに目立ちません。
さらに、袖付けの縫い目の凹凸もすくなく、
くびまわりは深いUネックなので、
シャツのボタンを2つあけても、肌着が見えません。
(2つ開けるかどうかは、まあ、置いておいて。)

今回の「白いシャツをめぐる旅。」の販売でも
この製品を紹介するにあたって、
まずは「つくった人」に会ってみることにしました。

つくった人に話をきいてみました。
		グンゼ株式会社 武安秀俊さん・長江喜久さん

▲SEEKを開発したひとりの、武安さん。もちろん下にはSEEKを着ています。
 わからない!

SEEKをスタートして12年、
いまの形になって10年になります。
最初は、上質な白いアンダーウエアから始め、
ビジネススタイルをスタイリッシュに、
きれいに見せるアンダーウエアを、ということで、
インポートものの上質なアンダーウエアと同じクオリティで、
日本製で、しかも価格帯を抑えて提供したいということが、
このブランドのねらいでした。
いまも京都の宮津を中心に、すべて国内で生産しています。

やがて「上に着るシャツを、より美しく見せたい」
というところから、着用していることがわからないような
アンダーウエアの開発に進み、それが今回、
みなさんが着てくださっている
ベージュのアンダーウエアの誕生につながります。
その頃から、クールビズと盛んに言われるようになり、
夏、ネクタイをしめず、ジャケットも着用しないという
仕事のスタイルが出てきたのが、追い風になりました。
さらに、震災以後、電力のことを考える時代が来て、
クールビズに対する考えが浸透していくなかで、
SEEKもいっしょに育ってきたんです。
ちなみに、シャツの下にアンダーウエアをつけない
ヨーロッパの男性たちとちがい、
日本では93パーセント以上の男性が
シャツの下にアンダーウエアをつけるという
グンゼの調査結果が出ています。

▲左は百貨店担当の長江さん。

ンダーウエアは着心地が大切ですから、
SEEKも、着心地のよい独自の生地の開発をおこない、
縫製のことをつきつめ、
細かいことでは洗濯タグをどうするかなど、
ひとつひとつ考えていきました。
結果、いまのようなかたち、
つまり、襟、袖、裾をカットオフ仕様にすることや、
ブランド名や洗濯タグなどは生地に転写プリントすること、
縫わずに生地をつなぎあわせる接着仕上げをすることなど
SEEKのいろいろな特徴がうまれました。
うんと細いエジプト超長綿を2本よりあわせ、
糸と生地の2段階でシルケット加工をして光沢を出し
コットン90%を実現した
「プレミアムライン」も生まれました。

去には、下にランニングシャツが見えることを
「ツキノワグマ」と言ったりしましたよね。
あるいはシャツが肌に汗でぴったり張り付いていたり‥‥。
グンゼの調査によれば、そういう男たちの姿を
女性たちは「もっと気にすればいいのに」と見ています。
いっぽう、当の男性たちは「え? 気にしていなかった」。
そんな男性たちに、ぜひ着ていただきたいと思っています。
まだまだ知られていないアンダーウエアですが、
スポーツ選手、モデルさん、
スタイリストさんなどのあいだでも
徐々に広がってきていると聞いています。
これからサイズ展開を充実させていったり、
冬の機能性アンダーウエアを考えたり、
トップスだけでなく、ボトムスやソックスまで
すべてSEEKで揃えていただけるように
提案をしていきたいと、そんなふうに思っています。

武安さん、長江さん、ありがとうございました。
ちなみに、SEEKのメンズの肌着は、
18日からの「ほぼ日ストア」の販売で
取り扱います!

2015-09-12-SAT