2021年1月 第27号~32号
ほぼ日のメールマガジン「ほぼ日通信WEEKLY」が2021年1月にお届けし、反響が高かったみうらじゅんさんのインタビューを特別に全公開いたします。コロナによる活動自粛時期だったので、オンラインでインタビューを行いました。動画つきです。
ここだけのお話
ほぼ日通信WEEKLYオリジナルのよみものです。
~はたして当てられるクイズかどうか
みうらじゅんさんの
 vol.1
ゲストの「最近の日々」をテーマにした、クイズをお出しします。ゲストはみうらじゅんさんです。
※このインタビューはオンラインで行いました。


みうらじゅん
1958年、京都生まれ。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以後、作家、イラストレーター、ミュージシャンとして、多方面で活躍。1997年にはみうらさんの言葉「マイブーム」が新語・流行語大賞のトップテンに選出。「ゆるキャラ」の名づけ親でもある。
みうらじゅんOFFICIAL SITE

──:
コロナウイルスが拡大して以降お会いできておりませんでしたが(このインタビューは2021年1月に行いました)ちょっとご様子が変わられましたね。


みうら:
この、ヒゲのことですか。これはシロナガスヒゲラと呼んでいます。

──:
は?



▲オンラインの画面です。背景は現実ではありません。

みうら:
4月からの外出自粛で、とーんと時間があったでしょう。
ぼくに無駄な時間を与えたら、どういうことになるのか、ということなんですよね。ええ、それはもう、期待に応えなきゃとは思ってましたんで。

──:
この数ヶ月、おもに何をなさってたんですか?

みうら:
この半年以上、おもにやっていたのは、お金にならないことです。

──:
ええっと‥‥?

みうら:
この期間中、努めてお金とまったくつながらないことをやっていました。こうして無駄な時間を与えてもらうと、お金にならないことに躍起になるという性質が、ぼくにはあるんです。
これまで仕事としてもやってきたことなのですが、小学1年生からずっとつづけていた「スクラップ」。これ、もちろんやらざるを得ないことになりましてね。
ご存知のとおり、エロスクラップのほうは、ふだんからコンスタントにやっておりましたので、それが現在653巻になりまして。

──:
653冊のスクラップ帳が完成した、と。

みうら:
700冊までいきゃあ、あとは余力でどうにか1000までいけると思います。しかしそれはコロナでなくてもふだんからやっていたことです。
いま言いたいのはそこではなく、エロ以外の「紙のもの」が、じつはダンボールで4箱以上ありましてね。

──:
「紙のもの」ですか。

みうら:
ぼくは上京して以降、目についた雑誌の写真や記事はとりあえず「破ってとっておく」という習性がありました。そうして集まった雑誌の切り抜きを、40年以上、ずっとダンボールに入れたまま開封もせず引っ越しを重ねてきました。横目で見て「詰まってるなぁ~」と思ってはいたのです。そしてこのたび神がぼくに無駄な時間を与えてくれたのでしょう、ダンボールをゴッソリ自宅に持ち帰り、早朝からずっと食卓でスクラップづくりをしていました。なにしろ「ステイホーム」と言われたものですから「ステイ」でできることを探さなくてはなりません。

──:
ステイホームで、40年の蓄積を一気に貼りはじめた、と。


みうら:
ためこんだ切り抜きをスクラップブックに貼り、またその上から重ねて貼っていきました。さながら雲母のようにです。下に貼ってあるものが何なのか、ギリギリわかるくらいになっています。だからもう、スクラップブックは1冊ずつがとんでもない厚みになりました。価値はきっとぼくにしかわからないでしょう。このたびそんなスクラップが6冊ほどできたんですが、万一これがどこかに出回ったり展覧会に並んだ場合、学芸員の方々にはもはや読み解けない、といったシロモノになっています。まぁ、それほど時間があったということなのでしょう。
ぼくはこれらを「無意識スクラップ」と呼んでいます。といってもはじめはね、「この人とこの写真を近い位置に貼るとおもしろいな」なんて考えたりしていたのです。しかしそれは姑息な考えというものでした。姑息を「削ぎ落とす」ことこそが、このコロナ禍の修行だったと言えます。その結果、内容はいわずもがなものすごくランダムになっています。これはどれだけ自分が無意識に近づけるかの挑戦です。

──:
みうらさんはついに「無の境地」に近づいた、というわけですね。


みうら:
ええ、ぼくにとっては「無意識」なのですが、ぼく以外の人にとってそれは「無意味」です。真の無意識はたやすく実現できるものではありません。しかし無意味には近づけます。
これまで長いあいだ我々は、教育を受けたりいろいろなものを知ったりして、万物には「意味がある」と思うようになりました。つまり「意味があることがいいのだ」と洗脳されてきたのです。でもほんとうに重要なのは「意味がないことに、意味がある」ということなのです。
すべてのことに意味をつけたのはそもそも人間です。
不変ではないものの、たしかにある期間は「存在」があります。人はそこに意味や価値をつけていったのでしょう。その人間の仕業を、このコロナ禍でそぎ落す、まぁ、そんな修行の日々でございました。

──:
そんなみうらさんが、この外出自粛の期間に考えておられたことからクイズの出題をお願いします。


みうら:
ええ、実話クイズというのをやるんですよね。クイズかぁ、えっと、そうですね。「ぼくにとって無意味とはなんでしょう」これでいきましょう。

──:
むずかしそうなので、3択問題にしていただけますでしょうか。


みうら:
わかりました、えっと、ぼくにとっての無意味はね、えーっとね、その3択すら浮かばないぐらい無意味なんです。

──:
えぇ?!
じゃあ、ドンピシャで当たられた方だけが当選ということでしょうか。


みうら:
そうさせてください。

──:
「実話クイズ」最初から難問になりました。「みうらさんにとって無意味とは◯◯でした」この◯◯にあてはまる漢字2文字はなんでしょう。動画をごらんになって当ててください。


今回の話を動画でごらんになりたい方はこちらを再生してください。

※オンラインインタビューのためところどころ映像が途切れます。

(↓下につづきます)

~はたして当てられるクイズかどうか
みうらじゅんさんの
 vol.2
──:
まずは前回の正解の発表からはじめます。前回の問題は「みうらさんにとって無意味とは◯◯でした。漢字2文字でお答えください」でした。


みうら:
問題の3択案すら浮かばないほどの無意味さでしたね。

──:
正解の発表をお願いいたします。

みうら:
正解は「自分」 です。
無意味とは、自分のことでした。
このところ、コロナで不要不急を避けるようにと言われたでしょう。突き詰めて考えてみると、不要不急は自分のことなんだと、このたび改めて気づきました。
ぼくの役まわりって、べつに急ぐわけでもなく特に必要なわけでもありませんよね。しかし、かつてはぼくの果たす役割はありました。「そんなものがあった」ということは、それだけ世の中がしあわせだった、という証拠なのでしょう。
ぼくが少しでも存在できているのは、みなさんがしあわせだからなんです。ですから逆に言えば、ぼくがいるうちはまだ大丈夫です。不要不急のぼくがいる限り、この世もまだ捨てたもんじゃないと思っていてくださいね。

──:
みうらさんは、私たちのしあわせの証明‥‥いや、むしろこの窮屈な毎日、私たちはみうらさんをいまこそ必要としているのではないでしょうか。

みうら:
むしろ必要としているってことは、やっぱ危険ですかね?

──:
え?


みうら:
ぼくという人間までをも、必要としなければならない時代は、逆にやばいですよ。
さきほど「ぼくがいることが世のしあわせの証拠」というようなことを言いましたが、それは「いてもいいよ」という、世の中の余裕の話です。「いてもいいよ」と「必要」は違います。ぼくが必要な世の中なんて、DS(どうかしている)状態に入っているのではないでしょうか。ぼくは、自分で言うのも何ですが「役に立つ」とか「必要」とかいうことはありません。役に立たない人がいることがしあわせなんだ、というだけのことですからね。



──:
いま、各地に緊急事態宣言も出て、出かけづらくなりました。みうらさんも、見仏などの活動ができないのではないでしょうか。私もお寺や神社をめぐって、神さまにすがりたい気持ちになっています。でもすがれない。どうすればいいですか?


みうら:
いまはしばし、思い出にひたるのがいいと思います。

──:
‥‥‥‥思い出に?


みうら:
いまこのときのために、これまで思い出を蓄積してきたんですから。

──:
出かけられないいまだからこそ、脳内の思い出にひたる‥‥。

みうら:
ええ。ぼくなんて、小学校低学年の頃から思い出にひたり、「昔はすげぇよかったな」とか「おもしろかったな」というのが口癖でした。そのたびにまわりから「お前、いくつなんだよ」なんて言われたものです。
そういえば先月も、思い出にひたりに行ってきたんですよ。

──:
ひたるというのは、なにも「思い出す」だけじゃないんですね。

みうら:
わざわざひたりに出向くこともあります。もちろん外出自粛じゃないときがおすすめですよ。あ、これクイズにしましょうか。

──:
はい、お願いします。
みうらさんが思い出にひたりに出かけた場所がどこか。今回こそ3択問題にできますか?


みうら:
これもちょっとむずかしいですねぇ。

──:
3択にしたとたん正解がわかってしまう系の正解ですね。


今回の話を動画でごらんになりたい方はこちらを再生してください。

※オンラインインタビューのためところどころ映像が途切れます。

(↓下につづきます)

~はたして当てられるクイズかどうか
みうらじゅんさんの
 vol.3
──:
前回のクイズを振り返ってみましょう。前回の問題は「みうらじゅんさんが思い出にひたりに向かった場所はどこでしょう?」でした。


みうら:
はい、答えはですね‥‥、
先月、上京して2度目の引っ越しで住んでたアパートの近くの、銭湯に行ってきたんですよ。

──:
銭湯に? 

みうら:
ええ。思い出にひたるには、やはり風呂にひたるのがいちばんです。ですからぼくの場合、当時通っていた大衆浴場にひたりました。
お湯にひたると思い出も同時にひたってくるんですよ。じわぁっと、いい思い出も悪い思い出もあたたまりますからね。
いま、ステイホームと言われているのであまり出られませんが、そうじゃないときは飛沫に十分気をつけて、思い出の地を巡礼してます。

──:
つまり、答えは‥‥。

みうら:
ええ、大衆浴場(または 銭湯 )です。もっとこまかくいうと「昔住んでたアパートの近くの大衆浴場」これが正解ですけどね。しつこく言いますが、思い出にひたるのには大衆浴場がいちばんです。



──:
思い出にひたるためには、いろんな浴槽にひたっていけばいいのでしょうか。


みうら:
ぼくね、あんまり長いこと風呂につかってるのは得意じゃないんですよ。

──:
え?


みうら:
そもそもぼくは落ち着きがない人間なんです。だから、思い出にもひたれない風呂には長くひたりたくないんです。

──:
ふだんはすぐ湯船から出ちゃうタイプですか。

みうら:
思い出のない風呂からはね。しかし、何か思い出のある風呂にはよくひたれます。たとえいい温泉であっても「初温泉」なんて場合は、すぐ出ちゃう。
「ああ、むかし来たとき、そうそうそう、ここの庭に豆電球みたいなのがいっぱいついてて、ホタルのように見せかけてあったものだなァー」なんて思えば思うほど、じんわりとひたることができます。

──:
細かい思い出に、ひたすらひたるわけですね。


みうら:
だから、かつて行ったことがあるところに行ってみるのが好きなんですよ、思い出づくりマニアとしては。

──:
でもこれからあたたかくなって春が来たら、またGO TOシーズンがやってくるかもしれませんね。みうらさんはGO TOではどこかに行かれましたか? もしくは、どこにGO TOされる予定でしょうか。それを次のクイズにさせてください。


みうら:
これは、ぼくの世代なのでしょうかね。

──:
は‥‥あの?


みうら:
GO TO っていえば、次に出る単語はこれしかありませんでしたよ。

──:
何ですか?


みうら:
GO TO といえば◯◯◯◯です。怖いですからね。ふつうは行きたくないですよ。

──:
そこにはふつう、GO TOと言われても行かないですね。ああ、今回のクイズはものすごくあたりそうです。

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~はたして当てられるクイズかどうか
みうらじゅんさんの
 vol.4
──:
まずは前回のクイズから振り返ります。問題は「みうらさんにとってGO TOといえば何でしょうか」でした。


みうら:
ぼくらの時代はね。

──:
はい。


みうら:
GO TOつったらHELL だったんですよ、たいがいは。

──:
わははははは。そんなフレーズ、忘れていました。そういえばそうです、GO TO といったらHELL! クイズの正解はHELLですね。


みうら:
世界的にみてもHELLが正解です。まぁそれはヘビーメタルロックの世界だけの話かもしれないけど、ロックで行くところといえばHELLと決まっています。でもね、自らはそんなところには行かないでしょう、自分で地獄にはGO TOしないですよ。

──:
いくら推奨されてお金を補助してもらっても、地獄には、ちょっと‥‥。


みうら:
だいいち、ほかの人からGO TOと言われることじたい、ほんとうは好きじゃないでしょう。自らではなく、誰かから背をぐいっと押されて飛び出る感じ‥‥つまりぼくはそれがいやで、自分の就職活動がうまくいかなかったと思っています。

──:
急に何十年か前の就職活動まで話がさかのぼるんですね。


みうら:
就活のときって、全体の雰囲気が「GO TO SHUKATSU!」になってましたもんね。ぼくも背中を押され、いちおう飛び出しはしましたけども、その時点で思い切りつんのめっていたので、当然、面接試験会場に到着しても落ち着いていないんですよ。だからすぐに落とされることになりました。

──:
ドーンと押された勢いで会場に行っちゃってるから‥‥。


みうら:
自らが押したことじゃないとやはりダメです。根にFREE思想があるんでしょうね。

──:
自分の根本にフリーダムがある、と。


みうら:
やっぱり「行くときは自分で自分の背中を押して行こう」というほうがいいんじゃないかと思います。

──:
そうか‥‥基本的なことを忘れていました。GO TOに頼らず、自分の意志でふつうに旅すればいいんですね。

みうら:
むしろ自分にGO TOしたほうがいいと思います。GO TO MYSELFです。



──:
そんなみうらさんに、ちょっとご相談があるんですが。

みうら:
急になんでしょうか。

──:
いま、ステイホーム期間がつづいているうえに、外出するときはつねにマスクを着用しているので、おしゃれ度が下がってきてしまいました。


みうら:
ええ、ええ。

──:
もういちどおしゃれになりたいのです。おしゃれになるにはどうしたらいいでしょうか。


みうら:
あのぅ。

──:
はい。


みうら:
ご存じないかもしれないですが、ぼくは美容方面にも興味があるんですよ。

──:
そうだったんですか。


みうら:
ではお教えしましょう、おしゃれになるためには‥‥これはマスクをいかしたアイデアです。

──:
マスクを逆にいかす、と。


みうら:
ええ、マスクの、一種のデザインです。マスクにある加工をほどこします。すごくいいと思いますよ。

──:
それではみなさま、今回の問題です。
マスクにある加工をほどこして、おしゃれなマスクをつくるみうらさんのアイデアとは、いったいなんでしょう。マスクに何をつけるのでしょうか。2文字でお考えください。


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~はたして当てられるクイズかどうか
みうらじゅんさんの
 vol.5
──:
まずは前回の質問を振り返ります。
「ステイホーム、そして外出時はマスク。おしゃれをする機会が減りました。どうやったらまたおしゃれな気分になれますか」でした。

みうら:
前回も申し上げたとおり、ぼくはわりと、美容関係には興味があるんですよ。

──:
ええ。


みうら:
こういったリモート会議にそなえてファンデーションを買ったくらいですから。

──:
えっ、そうなんですか。


みうら:
今日はちょっと塗るのを忘れてしまいましたがね。ぼくが最近、美容に関心が出た理由はほかでもなく、老いるショックが来たからですよ。老いるショックによる「しみ」がたくさん出はじめてるんです。

──:
老いていく‥‥老いるショック。


みうら:
歳を取るとどうしても気持ちが「しみじみ」しますよね。人というものは、しみじみすると、しみが出てきてしまうものなんです。

──:
しみじみするのもほどほどにしないといけませんね。


みうら:
そこでです。STAY HOMEがきっかけでついにわかりました。これはヒゲ を生やし、隠しときゃあいいじゃないか、と。

──:
ヒゲで!


みうら:
ほら、口のまわりのしみ、まったくヒゲで見えないでしょ。しみだけでなく、ほうれい線も実は隠せているんですよ。これは完全な美容効果と言えるでしょう。外出時はこのヒゲに、さらにマスクをするわけでしょう? こんなに美容にいいことはありません。

──:
美容に‥‥。




みうら:
こうして話しているぼくの姿を見てみなさんは「ああ、ヒゲに白髪が混じってんな」「みうら、老けたな」なんて思ってらっしゃるかもしれませんけれども、いえ、剃ったほうがもっとジジイです。
しみやほうれい線だけでなく、顎の下のたるみも数年前から気になっていました。でもこうして、すべてをヒゲで隠せているわけで、老いるショック隠しにはうってつけの美容です。

──:
ははぁ。


みうら:
しかし残念ながら、ぼくは頬の端のほうまでヒゲが生えないのです。顔の両サイドにも老いるショックマークが出てきているので、なんとかしたいです。ですから、顔の端までヒゲが生えているように見えるマスクがあるといいと思います。

──:
マスクにヒゲがついてる、ということですか?


みうら:
ええ、リアルなヒゲが生えたマスクです。これ、あったらけっこう売れると思いますよ。いまのところはみなさん、道端で人に会っても「あ、マスクしてるんだな」というくらいの認識でしょう? でも、遠くからだんだん近づいてきたときに「うわ、ヒゲづらだ」と思われたほうが、よくないですか?

──:
まぁ、マスクかヒゲかの違いだけですもんね。

みうら:
ヒゲのついたマスクは、クリスマスシーズンならサンタとしても大活躍です。これからは「ヒゲはマスクだ」くらいの気持ちでいきましょう。
きっと女性の中にも、ヒゲを生やしてみたいと思っていらっしゃる方がいるかと思うんですよね。

──:
はい。うらやましく思っていました。女の人がヒゲのマスクをつけて「あれ?」と言われても、ふつうに「ヒゲだよ」と言っておけばいいですね。


みうら:
でしょう。「あ、なんだ、そんなマスク、流行ってんだ」というだけのことですからね。

──:
では今回の問題の正解は‥‥。

みうら:
ヒゲマスク ですね。

──:
ありがとうございます。
(メルマガ掲載当時に)みなさまから寄せられた解答を見ますと「ひげ」マスクまたは「ヒゲ」マスクで正解された方は45%おられ、最多解答となりました。ノーヒントだったのに、高い正答率に驚いています。
さて、たくさんお届けしてきた「実話クイズ」も、これが最後の出題となります。
このコーナーの最初に、みうらさんはSTAY HOME期間中「お金につながらない、むだなこと」をなさっていた、というお話がありました。


みうら:
ええ。もともとそういうことが好きだったんでしょう。しょうがなく年齢的に大人になってしまい「お金になることをしないとマズい」ということで、少し切り替えただけです。

──:
でも、お金にならないことばかりしていますと、未来の保証がなく、どうやって食べていけばいいのかわからなくなってしまう気がします。コロナウイルスで時代の価値観も変わるいま、この不安をどうすればよいでしょうか。


みうら:
まずは頭から「保証」という文字を消したほうがいいでしょう。「保証」なんて、たんなる言葉ですから。「未来」もいけません。「未来」は時間が来ればただやってくるだけのものです。「未来」の「保証」、人間がつけた言葉がせつない雰囲気を持っているだけなのだと思います。
そんな不安に惑わされないために、便利な呪文がありましてね。

──:
呪文ですか?


みうら:
「△△◯◯◯◎◎◯!」です。

──:
それを、クイズに。


みうら:
ええ。「△△◯◯◯◎◎◯!」です。

──:
それはちょっと、当たらないんじゃあ‥‥。

みうら:
いえ、これはずいぶんと前から、ぼくの中では流行している言葉ですし、いままでにほぼ日でも何度かお話ししたんじゃないですかね。「みうらじゅんに訊け!」シリーズをごらんになってきた方なら必ず答えられますよ。

──:
わかりました。ではみなさん、最後の実話クイズです。これはとても重要な言葉です。


今回の話を動画でごらんになりたい方はこちらを再生してください。

※オンラインインタビューのためところどころ映像が途切れます。

(↓下につづきます)

~はたして当てられるクイズかどうか
みうらじゅんさんの
 最後の解答編
──:
前回の出題内容は「コロナウイルスで時代の価値観も変わっていく。お金にならないことばかりしていると、未来の保証がない。そんな不安を抱えているときに、便利な呪文があります。それはいったいなんでしょう」でした。
そもそもは、未来の保証がない不安をどうすればよいか、という質問で。


みうら:
先週も言いましたように、「未来」や「保証」というのは、人間がつくった言葉にすぎません。

──:
ええ。

みうら:
そうやって、本来はよくわかっていないものに言葉をつけた‥‥これは人間のいわば大罪と言えるのかもしれません。そんな言葉をあやつって不安をあおり、商売する人たちも出てきます。つまり「未来」や「保証」は、不安をあおって商売する人たちの、業界用語なんですよ。

──:
業界用語ですか!


みうら:
ですからそんな業界用語は鵜呑みにせず、洗脳されないようにすることが大切です。
いえ、自分だって当然、先々を考えることはありますよ。考えますけれども、「考えている状態」の自分を自分で「ププッ」と笑ったり、「こんな俺が未来の保証について考えてどうするんだ?」とツッコむようにもっていくのです。そういうときに大切なポイントは「こんな俺が?」「こんな私が?」という主語をつけて考えるべきだということです。

──:
半疑問形で、主語を。


みうら:
「こんな俺が保証?」
そうやって「主語+?」の構文で考えるといいでしょう。
ほんとうに何かをはじめる人は、なんだかんだ言う前にもうすでにやってます。「保証」などと考えている時点で「やってない」ということに気づかれたほうがいいかもしれません。

──:
そうですね、結局はなりゆきにまかせていくしかありませんね。



みうら:
なりゆきにまかせるという言葉は、すごく怠惰なイメージがあるかもしれないけど、それは真理ですからね。

──:
私たちはなりゆきの流れに乗っていくしかないはずなのに、どうしても「未来」「保証」のような業界用語が入り込んできて、足を取られてしまうんですね。

みうら:
不安な気持ちになったときに、いい呪文があるんですよ。

──:
いよいよ、最後のクイズの解答ですね。


みうら:
それは
不安タスティック!
です。
これをとなえることで「何言ってんだ? 俺」という気持ちを強調させることができますから。

──:
不安タスティック!


みうら:
ええ。不安になったときは「不安タスティック!」。このひと言につきます。「こんなことをまだ言えている俺って、もしかしたら不安じゃないかもしれない」という気持ちになれます。業界用語による不安のあおりには、これで対処していくしかないと思います。

──:
はい。何度も言いますが、やるときは、人間、やってますからね。


みうら:
やるときはやってます。やるときは、意識なくやってるもんです。

──:
なりゆきの川で「未来」の「保証」に足をとられそうになったらすぐに「不安タスティック!」をとなえていきたいと思います。
みうらさん、長いこと「実話クイズ」におつきあいいただき、ほんとうにありがとうございました。


みうら:
ありがとうございました。
不安タスティーック!

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※オンラインインタビューのためところどころ映像が途切れます。

みうらじゅんさんの「実話クイズ」はこれでおしまいです。ありがとうございました

みうらじゅんさんは、メールマガジン「ほぼ日通信WEEKLY」の「実話クイズ」という不思議なコーナーの、最初のゲストとなってくださった方でした。「インタビュー中にクイズを出していって、メルマガをお読みのみなさんが答えていく」というよくわからない形式の企画に、よくぞ乗ってくださったといまから振り返っても思います。そして、オンラインのインタビュー画面をスマホで撮って2カメで動画にする、というコロナ自粛期間ならではの、もう二度とできないような取材でした(しかしこのあと同じ形式で町田康さん、田島貴男さんにもインタビューしました)。ほぼ日通信WEEKLYは、これからもチャレンジングな内容で、毎週水曜日にみなさまにたのしいひとときをお届けできるよう励んでいきます。これでこのたびの「名作選」連載はおしまいです。それではみなさま、次は水曜日にメルマガ誌面でお会いいたしましょう。(ほぼ日 菅野綾子)

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