ウェブマンガ座談会 with 南伸坊さん 僕たち、私たち、デビューはインターネット!
2015年に大好評だった企画
「マンガ家座談会」の第2弾です! 
糸井重里が注目するマンガ家3名をお呼びして、
ご自身の作品のことはもちろん、
いまのウェブマンガに秘められた可能性などを、
たっぷりとおしゃべりしていただきました。
今回はスペシャルゲストとして、
マンガ雑誌「ガロ」の元編集長・南伸坊さんにも
お越しいただきました。
マンガを中心にすえた座談会でしたが、
クリエイティブ全般に共通する話が満載ですよ。
毎日すこしずつ、のんびりおたのしみください。
第8回:君は大丈夫だから
カメントツ
ぼく、去年ぐらいから
「クリエーターズ・アスク」という、
新人のマンガ家さんや、
ウェブクリエイター向けの
トークイベントをはじめたんです。



大成功した先生方の話じゃなく、
どうやってマンガで稼ぐとか、
ウェブクリエイターとして
どう生き残っていくかという、
リアルな話をしようというイベントで。
ながしま
へぇー。
カメントツ
なので、さっきお話に出た
ほぼ日の塾」というところが、
どんなふうに教えているのか、
すごく気になりました。
いわゆる「ライター講座」とはちがうんですか?
糸井
たしかに「ほぼ日の塾」が
「ライター講座」っていわれたら、
それはちょっとちがうような気がするね。
卒業生のながしまさんはどう思う?
ながしま
うーん、そうですね。
ライター講座という感じは、
あまりしなかったですね。
糸井
それに「ほぼ日の塾」に参加したからって、
どうやってライターで食べていくかなんて、
ひとつも見つからないと思うしね。
ただ、たぶんどこかで、
なにかの役には立ってると思うけど。
ながしま
そうだと思います。
私は塾に参加したあとから、
本業の仕事に対する向き合いかたが
ものすごく変わりました。
そっちのことも、
すごく楽しくなったというか。
糸井
ものすごくかんたんにいうと、
「一所懸命やると、案外わかるよ」
みたいなことかもしれないね。



マンガでああいう空間がつくれたら、
きっとおもしろいんだろうな。
ながしま
それ、すごくいいですね。
糸井
どんなマンガを描いてる人も、
まずは「オーケーだよ」といって、
その上で「いや、君ならもっとできる」
というような教室があったら、
マンガの技法を教えるよりも、
もっと伸びるんじゃないかな。



いまだから言えるけど、
ぼくも『ペンギンごはん』を描いたとき、
まったく自信なんてなかったんです。
カメントツ
え、そうんなんですか?
糸井
自信なかったですね。
でも、伸坊がマンガを見た途端に
「アッハッハッハ」って笑うんだよね。
あれはうれしかったなぁ。
俺と湯村さん、
ほんとはドキドキしてたからね。
南
アッハッハッハ。
ながしま
(笑)
カメントツ
ぼくはおふたりが自信満々で、
あのマンガを描いていたと思ってました。
糸井
もちろんおもしろいとは思っていたんだけど、
それは安定してないものなんです。
だから「すごいね」といわれても、
まだ「本当?」っていっちゃう。
カメントツ
はぁ、そうだったんですね‥‥。
糸井
自信みたいなものと不安とが、
まだらに存在していたんでしょうね。
だから「君は大丈夫だから」なんていわれると、
もう、ほんとにうれしかった。



「君は大丈夫だから」というのは、
もっと使ってもいいんじゃないかな。
南
うん、そうだよね。
カメントツ
でも、糸井さんもたくさんの
作家さんのマンガを見ると思いますが、
どうしてもほめられないものって、
やっぱりあると思うんです。
そういうときはどうするんですか?
糸井
ぼくは冷たいよ、そういうのに。
カメントツ
あ、冷たいんですね(笑)。
糸井
だって、そういう人は、
ならないほうがいいんだもん、マンガ家に。
カメントツ
そっか、たしかに‥‥。
糸井
そう考えると、
「ガロ」のときの伸坊は、
あらためてすごいと思っちゃうね。
たくさん来たでしょう、ヘンなの(笑)。
南
えぇ、そんなこともないよ。
でも、「ガロ」に持ってきた人で
「絵はいいけどマンガはおもしろくない」
とかだったら、
まずは絵をほめるんだろうね。
糸井
なるほど(笑)。
南
探せばいいところはあるからね。
デビューは「ガロ」だけど、
そのあとイラストレーターになって
大成功した人だっていますから。
糸井
あぁ、奥平イラさんとかね。
南
そうそう。
糸井
当時の「ガロ」って、
たむらしげるさん、唐仁原教久さん、
沢田としきさんもそうだけど、
いろんな才能が集まっていたんです。
細野晴臣さんや松本隆さんも、
ある種、あこがれの目で見てくれていて、
「はっぴいえんど」のジャケットを
林静一さんに頼んだりしてね。
南
当時のことでいうと、
ぼくらはマンガというメディアが、
いちばん進んでると思ってたからね。



よく勘違いされがちだけど、
お金があってもうかってる場所が、
いちばん元気あるように思われるけど、
もうかってなくても、
元気がある場合もあるんだよね。
カメントツ
そういう意味では、
いまはどこが元気なんでしょうね。
南
んー、どこなんだろうなぁ。
糸井
いまって聞かれると、
本当によくわからないけど、
どの業界もけっきょくは人なんだろうね。



売れっ子業界にいると、
ちょっと目立ちやすかったりするけど、
どんな業界やメディアでも、
すごい人はやっぱりすごいもん。
そして、そういう人たちを、
みんなやっぱり見逃さないよね。
南
うん、ちゃんと見つけ出すよね。
糸井
ここの3人も、
すでにこういう座談会に
呼ばれてるってことは、
そういうことなんだと思うよ。
カメントツ
そうだといいな(笑)。
ながしま
うーん‥‥。
せきの
‥‥‥‥。
糸井
話はまだまだ尽きませんが、
今日はこんなところにしましょうか。
気がつけば予定時間を、
ずいぶんオーバーしてしまいました(笑)。
南
あらら。もう3時間も経ってるんだ。
糸井
みなさんとお話ができて、
とてもたのしかったです。
こんなに長い時間、
どうもありがとうございました。
カメントツ
こちらこそ、ありがとうございました。
すごくたのしかったです。
ぜひまた呼んでください。
ながしま
はい、ありがとうございました。
せきの
ありがとうございました。
糸井
どうもありがとうございました。



伸坊も来てくれてありがとう。
また前みたいに旅に行こうよ。
最近あの企画もしてないしさ(笑)。
南
ああ、いいね。行こう、行こう。
おいしいものいっぱい食べようよ。
アッハッハッハッハ。
(おわります)
2018-05-02-WED