マイ・ウェイ。わたしの道。
- ──
- はじめまして、ヴァレリアさん。
長旅でお疲れのところ‥‥。
- ヴァレリア
- 今朝も、ホテルでいろいろあって。
わたしはハタチの小僧じゃなくて
74なんだからね。
なんとか耐えてるのは男だからよ!
- ──
- はい(笑)。
- ヴァレリア
- オーケー、はじめましょう(ニッコリ)。
- ──
- 自分は「ほぼ日刊イトイ新聞」という
ウェブサイトの編集者をしています。
ピンクのおふたりは、レ・ロマネスク。
パリで一躍有名になりまして、
今は日本を拠点に移して活動している、
ポップ・デュオです。
- ヴァレリア
- オー、ディア。プラゼール、プラゼール。
- TOBI
- ボンジュール、TOBIです。
こちらは、アシスタントのMIYAさん。
- MIYA
- ボンジュール♡
- ヴァレリア
- アンシャンテ、アンシャンテ。
ええと、あなたたちふたりは、
男性と女性ってことでオーケーですか?
- TOBI
- 大丈夫です(笑)。
まず、これが、ぼくたちのCDで‥‥。
(ピンク色のレ・ロマネスクのグッズを、
いろいろとプレゼントする)
- ヴァレリア
- オー、グーッド。ファンタースティック。
これってニッポンのコンドーム?
(と、プレゼントの中のひとつを指差す)
- TOBI
- それにしてはちょっと大きすぎない?(笑)
- ──
- (徳用パック‥‥)
- ヴァレリア
- サンキュー、サンキュー。
- ──
- ええと、今日は、
ヴァレリアさんとレ・ロマネスクさん、
お互い同じパフォーマーとして、
それぞれのステージで、
観客の喝采を浴び続けている人どうし、
語り合っていただけたら、と。
- ヴァレリア
- わかりました。
- ──
- ではまず、ヴァレリアさんが、
今の道に進むことになったきっかけを、
教えていただけますか。
- ヴァレリア
- わたしは、生まれながらにして、
こういう人生を歩む運命にあったんです。
自分が、これ以外の仕事をやってる姿は、
想像することもできないから。
- ──
- 運命。
- ヴァレリア
- ええ。才能というものも、あったと思う。
こうすることが、わたし自身に、
いちばん幸せを感じさせてくれるんです。
- TOBI
- パフォーマーとして人前に立つことが。
- ヴァレリア
- そうね。
- ──
-
ヴァレリアさんと7人の仲間を追った
ドキュメンタリー映画
(『ディヴァイン・ディーバ』)で、
ヴァレリアさん、
「マイ・ウェイ」を歌っていますよね。
- ヴァレリア
- ええ、とっても好きな歌。
- ──
- 曲の最後のほうで
「わたしヴァレリアは、
自分の好きなように生きてきたの!」
って叫ぶシーンが、
ものすごくカッコいいと思いました。
- ヴァレリア
- ゆうべも、東京のちいさなライブハウスに
飛び入りで出してもらって、
「マイ・ウェイ」を歌ってきました。
スペイン語で歌うし、字幕もないし、
歌詞の意味を
会場に伝える術はなかったけれど、
でも、最後はみんな、
立ち上がって拍手をしてくれたんです。
- TOBI
- すごーい。
- ヴァレリア
- 人によっては、涙を流して、
「感動しました」と言ってくれました。
そのことに、本当にビックリしました。
「何を歌っているかわからないのに、
どうして感動できるの?」‥‥って。
- TOBI
- きっとヴァレリアさんの歌声そのもの、
パフォーマンスそのものに、
心を動かすパワーがあったんですよね。
- ──
- 映画では、スペイン語の歌詞の訳詞が
字幕として出ていましたが、
内容がヴァレリアさんにぴったりだと
思ったんです。
オリジナル‥‥ではないですよね?
- ヴァレリア
- シナトラの「マイ・ウェイ」の歌詞は、
各国で訳されてますけど、
わたしが歌っているのは、
そのスペイン語バージョンですよ。
オリジナルの歌詞では、ないです。
- TOBI
- わたしはわたしの道を行く‥‥という、
あの歌の世界と、
ヴァレリアさんご本人の人生が、
見事にぴったり重なって聞こえました。
ぼくらなんか、ヴァレリアさんたちが
切り拓いてきた道を、
だいぶ後ろから、
歩いてきたようなものだと思います。
- ──
- ピンクの20センチの厚底ブーツで。
- TOBI
- ヴァレリアさんたちが
すでに切り拓いてくれた道だから
コケずにすんでるけど、
いちばん最初に、
その、道なき道を歩いてきた人たちの
大変さって‥‥。
- ──
- 当時は、軍事独裁政権下でもあったり。
- ヴァレリア
- 女装で外を歩いたら、逮捕される時代。
- TOBI
- でも、そんなふうにして、
自分の道を切り拓いてきた人が歌う
「マイ・ウェイ」だから、
その人自身の強さや美しさが、
あらわれるんだと思います。
- ヴァレリア
- ありがとう。
- ──
- ヴァレリアさんは、
「マイ・ウェイ」という歌の
どういうところが、お好きですか?
- ヴァレリア
- スペイン語の訳では、最後のほうで
こんなふうに歌うんです。
「人に非難されてもかまわないし、
何を言われても、
後ろ指をさされてもかまわない。
わたしは、
わたしの生き方を諦めずにきた」
- TOBI
- ああ‥‥。
- ヴァレリア
- そこが、いちばん好きかな。
<つづきます>
2018-09-25-TUE