2匹のねこがやってきて、去ってった。〜牛と海苔の思い出〜あれは4月のことだった。我が家に2匹のねこがやってきた。誰に飼われているのか、名前も、性別も、年齢もわからない。わかっていることは、同じ家で飼われていたっぽいということだけ。5か月間の共同生活の記録を、「文と写真:ゆーないと」でお届けします。
第1回

5か月前の、4月15日。
我が家にねこがやってきた。2匹。
3月に、突然、ひとがいなくなった
福島の警戒区域で捕獲された、ねこたち。

わたしが仲良くさせてもらっている
動物愛護団体「ミグノン」さんが、捕獲してきた子だ。
だれもいない町にある、一軒のお家。
ドアも窓も開いたままのその家から、
1匹の猫が出てきた。
ひとを見て、どんどん近寄ってくる。
「だいじょうぶ? 東京に行こうか」
と声をかけて、捕獲しようとしていたところに、
奥から
「おーい、オレもだよー待ってくれ〜」
と、小柄なねこがついてきた。
2匹は同じ家から、出てきた。
きっと同じ家で飼われていたのだろう。
お家の玄関に
「お宅のねこをお預かりしています。ご連絡ください」
という貼り紙をして、ミグノンさんは東京に戻った。

その日、
「今日から、ねこ2匹、いける?」
と、わたしのケイタイにメールがきた。
急な話だったけれど、
自分に出来ることは、被災動物を預かることだ。
と考えていたので、
「いきます」
と返事をした。

ミグノンさんのお店に行くと、
「何のお店?」とたずねたくなってしまうほど、
犬とねこの入ったケージが山積みになっていた。
犬たちは大きな声で、「バウバウ」吠えている。
奥にはねこ2匹のペアが入ったケージが2つあった。

「どっちにする?」

どっちでもよかった。
一方は、2匹が顔を並べて横になっている美形2匹。
もう一方は
ケージのあいだから、必死に手を出したり、
ゴロゴロ言って、過剰にアピールしてくるヤツと、
ヤツの足元には、
一匹が下敷きになっていて「うげ」って感じ。
このペアははっきり言って、ぜんぜんかわいくない。
もう一方のペアは、すこしかわいい。

すこしかわいいほうは、
飼い主さんの依頼で預かってきたもので、
病院が一時的に預かってくれることになっているらしい。
かわいくないほうは、飼い主はまだ不明。
だったら、預かってくれる予定がなくて、
かわいくないほうのペアにしよう。
なんとなくもう一方のペアよりも、ピンときたし。


家に帰って、ケージの扉を開けた。
ふつうのねこは、ケージから出ると、
まずはおそるおそる、
部屋中をパトロールをするところからはじまる。
この2匹はまず、
ゴロゴロ言いながら、わたしに突進してきて、
頭や体を強く、押し付けてきた。
「さみしかったんだね」

1か月前。
家族は急に、家を出ていった。
家族だけじゃない、周りにいた人間は全員いなくなった。
そこから、野良生活が始まったんだろう。
さみしかったんだね。

‥‥しかし、あんまりかわいくないなぁ、お前たち。
あと、すごくあまえんぼうで、ちょっとくさい。




(つづく)

2011-09-21-WED
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