全員 羽海野せんせい、
きょうはよろしくおねがいします!

こちらこそよろしくおねがいします!
でも、いいのかな、じつは、わたし、
書き文字、1種類しかないんです。
それだと間が持たないだろうなと思って‥‥

このお話をいただいてから、「ほぼ日手帳」を
使ってる方に見せてもらったんですよ。
友だちの、おくさまなんですけれど、
もう、作品みたいになっていて!
ボールペンも色を替えて、
似顔絵も描いてあったり、
半券とか、お菓子の包みとか、
来たお客さんの写真とか、
お子さんの写真も貼ってある。
あとで見たら、
すごくいいだろうなあと思って。

それにひきかえ、わたしなんて、
もうほんと全然、なんです。
去年は、買ったお洋服を描いて、
コーディネートができるようにしてたんですよ。
けれども今年のがもうふるわなくて、どうしようと。
(手帳をめくりながら)たとえば、
これ、『赤毛のアン』のアニメ見てて、
アンのセリフのいいところとかを書いたりとか、
ご飯、何作ろうかなと、ちょっと描いたりとか。
お客さんが来るときだけ先にご飯の絵を描くんです。

『3月のライオン』でも
いつもご飯のシーンがおいしそうです。
でも、パスタとかうどん、お米って、
絵で描くと気持ち悪くなっちゃうんですよ。
長くてにょろにょろしてたり、
お米も1粒1粒描くと、
ちょっと虫っぽくなっちゃったり(笑)。
一所懸命描くと、ちょっと怖くなっちゃう。
つぶつぶは危険?
そう。だから、ぼんわり描いておいて、
文字で「ペペロンチーノ」って
書くほうがいいですよ。



前に、料理家のかたのスケッチを見たんです。
絵はプロのようにはお上手じゃないんですが、
サラダなら、これはトマトとか、ブロッコリーとか、
素材の説明は、絵から線を引っぱって、
文字で書いてあって、とてもわかりやすかったです。
絵だけではちょっと分からなくても、
文字が添えてあるとわかりますものね。

そうです、そうです。
まんがでも、たとえば
「翌朝」のシーンになったときに、
朝の風景を描きますよね。
けれども白黒だから朝って分かりづらい。
そこで写植(印刷の文字)で
「翌朝」って入れると、朝だってはっきりわかる。
やっぱり文字で書くのがいちばん分かるんです。

そうですね、遠慮なく
両方使っちゃえばいいんですね。
もしご飯を描いて、
虫みたいになっちゃったら、
線を減らすといいですよ。
そうすると、だんだん怖いものじゃ
なくなっていくので。
一所懸命スケッチしていれば、
きっと1年やるとすっごい上手になりますよ。
それもきっと楽しいのではと思うんです。

これは「どら焼きおいしかった」
‥‥っていう絵を書いたつもりなんですけど、
すみません、マルしか書けない自分!







でも、何かわたしたち、
最初っからすごくうまく絵を描こうとか、
すごく上手に文字をきれいに書こうとか、
作品として完成させようとかって
思い過ぎてるのかもしれません。
ましてやまんがを読んでいるから、
理想型というか、
こんな絵描けたらすてきだなって思っている。
でも、あきらめずにやってみるのもありですね。
うん、うん。
あと、あの、お友達に見せると、
「1月はこうだったけど、
 ほら、見てって12月だと上手になってるでしょ」
とか言えるので、
それもいいのかもしれないなぁと思います。
あとは、紙を切り取って貼っちゃったりするのが、
いちばんいいのかもしれない。
やっぱり「貼る」のがいちばん
絵になるというか、作品になるというか。
そういえば、弊社のみんな、
わりと貼ってます。




たとえばこれはこの間おいしかったもの。
ホヤぼーやサブレー。



ええ(笑)。(手帳をひらいて)
私も絵だけじゃ表現はできないので、
文字を添えています。
文字で書けば思い出すから。
たしかに、料理を作るときは、
分量とか、文字要素も大事ですよね。
それから、これを作りたいときは、
これ買って帰らないと作れないよ、
みたいなメモ。



なるほど、ご飯の準備とか、
食べたものの記憶とかは、
絵は別にうまく描く必要はないんだ。
文字を併用して書いていけばいいんですね。
そうそう!
(つづきます!)
2012-04-03-TUE

 




うみの・ちか 漫画家。
美大を舞台にした『ハチミツとクローバー』でデビュー。
高校生棋士を主人公にした長編第2作
『3月のライオン』で「マンガ大賞2011」を受賞。
同作は現在も白泉社「ヤングアニマル」誌で連載中。
最新刊は『3月のライオン』7巻。原画展も開催。
「ほぼ日」では2011年、糸井重里との対談
「恋、みたいなもの」で初登場。