
- SWITCH新井さん
- 梅さんが赤ちゃんの写真を撮るときは、
どんな思いで撮ってるんですか。
- 梅
- いつもぜんぜん決めてないんですけど、
じいちゃんのときは、
死んでほしくないって気持ちが強くて。
で、自分が赤ちゃんをうんだら、
赤ちゃんのことも、
死んでほしくないって気持ちはあって、
でも、じいちゃんのときとは違うし、
わたしの身体から出てきたやつやし、
決まってないんです、そこの気持ちは。
- 糸井
- 自分の赤ちゃんを見て
「かわいいなぁ」って思う気持ちって、
いつくらいから出てきた?
- 梅
- 最近かな。
- 糸井
- 生まれたときは、少ないでしょう?
- 梅
- 少なかったですね、はい。
- 糸井
- 他人感があるというか。
- 梅
- そう、他人感‥‥物体感というか。
何せ股から出てきたっていう衝撃。
- 糸井
- うん。
- 梅
- もう、本当に衝撃的だったんです。
出てきたのを見たんです、自分で。

- 糸井
- それはしょうがないよね(笑)。
- 梅
- こんなことを人類はしてきたのかと、
こんなことやった女たちが
そこらじゅうにいっぱいおるなんて‥‥、
あと怖すぎて、
目をつぶってたんですよ、ウーッて。
そしたら、助産師さんか誰かに、
おなかを押されながら
「見なさい!」って言われたんです。
目を開けないと力入らないみたいで。
- 糸井
- へぇ。
- 梅
- で、「メキメキ!」って感覚がきた。
- 糸井
- 土偶の話してるみたい。
- 梅
- あはは。え、土偶?
- 糸井
- そういう土偶を見たの、このあいだ。
子どもを生んでる瞬間の土偶。
- 梅
- そうなんですか。
- 糸井
- 股から顔が出てるんです。
- 梅
- えっ、ヤバ!
つくった人すごくないですか。
- 糸井
- 縄文展で見た。
- 梅
- おもしろーい。
- 糸井
- でも、子どもをうんだ女の人はみんな、
今の梅佳代みたいに思うんだろうね。
- 梅
- 絶対、全員、思ってるはず。
「こ、これか!」みたいな。
ドコドコドコドコって出てきたんです、
人間が。
もちろん音はせんけど、
そういう感覚が一気にガガガッて来て、
うわぁ‥‥ってなって。
- 糸井
- うん(笑)。
- 梅
- わたし、自分の股にびっくりし過ぎて、
「エグーッ!」
って言ってしまったんです、第一声で。
感動とかじゃなくって、
そのえげつなさに「エグーッ!」って。
衝撃が強烈すぎて、
かわいいには、しばらくいかなかった。

- 糸井
- でも、おっぱいとかあげるわけでしょ。
- 梅
- 生まれたばかりの赤ちゃんて、
いろんな言われ方するじゃないですか。
ガッツ石松さんに似てるとか。
でも、自分の子どもの顔見たら、
ビートたけしさんに、そっくりでした。
これが噂の‥‥顔か、と思って。
- 糸井
- うん、うん(笑)。
- 梅
- 愛おしいとか、かわいいとか思う前に、
やらないといけないことが
いっぱいあって、
母乳も、うまく出るようにするために、
いろいろやるんやけど、
看護婦さんが来て、
「あなた、そのおっぱい『出る』わよ」
って、褒められたりして。
- 糸井
- ははは(笑)。
- 梅
- なんか、すごいはずかしかった。
おっぱい褒められたことなかったから、
「恐縮です」って感じで。
そのあいだも、股は痛すぎるし。
- 糸井
- 写真、はじめて撮ったのはいつなの?
- 梅
- 出てきた、その日。
看護師さんたちが抱いてるところを。
- 糸井
- カメラは、そばに置いといたわけだ。
- 梅
- いちおう。
- SWITCH新井さん
- 職業意識。
- 梅
- いちおう‥‥っていう謎の気持ちは、
いつでもあるんです。
なんの「いちおう」か知らないけど。
- 糸井
- そこは、報道写真家だから。
- SWITCH新井さん
- 赤ちゃんて、日々変わっていくから、
どんどん撮りたくなるでしょう?
- 梅
- いやあ‥‥まだあまり動かないんで。
- 糸井
- そうか。「動かない」から。
- 梅
- 動かないから、何を撮っても一緒で。
うちのじいちゃんも、
最後のほうは、ぜんぜん動かんから、
あんまり撮らなかった。
- 糸井
- 撮影意欲に関わってくるんだろうね。
対象が動くか動かないかは。
- 梅
- かなり。
- 糸井
- 老犬になると撮る枚数、減ったもん。
- 梅
- やっぱそうですよね。
- 糸井
- 今は新しい犬が来て、ものすごく動くし、
毎日、新しいことをするから撮るんです。
今日はじめて階段をのぼったとか、
ぜんぶが「ああ!」ってうれしいんです。
- 梅
- 今日、寝返りするのを、はじめて見て。
これは、もうすぐ動き出すのかもーって。

<続きます>
2019-01-15-TUE
2019-01-15-TUE





