笑福亭鶴瓶の落語魂。
その世界のすべてを愛するということ。

第18回 「らくだ」をやっています。

鶴瓶 最近は、もうイチから
落語というものをやりはじめて……
今度、「らくだ」というのをやるでしょう。

その「らくだ」のせいでもありますね。
改めて自分で演じて、
この「らくだ」というのが
ほんとにおもしろく
ちゃんとできあがった落語だということを
感じていまして。

いま、四回ぐらいやっているんですけど、
演じていて、あんな
一時間の落語が、つらくないんですよ。
糸井 あぁ、長いバージョンでやってるんですね?
鶴瓶 うん。それが、ぜんぜんつらくない。
やっぱり、稽古をやっていてもたのしいし、
古典の最高峰じゃないですか?
「らくだ」というのは。

うまいことできてますね。
糸井 あれは要するに、
何でもないおじさんが
暴れてくっていう話ですよね。

きっとそれは
さぞかし乱暴にやっているんでしょうね。
鶴瓶 はじめは気のいいおっさんが、
どんどん、変わっていく。

落語なんてぜんぜん興味なかった
うちのマネージャーが、
「これ、鶴瓶さんに合うてるわ。
 このなかに、ぜんぶあなたが入ってる」
みたいなことを言うんです。

こわがりの紙クズ屋と、
ものすごいヤクザっぽい男と……
まぁ、いろんな人が出てくるんですけどね。
糸井 うん。
鶴瓶さんに合ってるって、ぼくも思う。

ドスの利いた役も、
できるじゃないですか。
ほんとはこいつ、
怖いんじゃないか、みたいな……

そこに至るまでの、
弱いところからの
グラデーションができるから。
鶴瓶 幅が広いんですよ。
ものすごい気の弱いやつと、
ものすごい強そうな男がおって、
それがだんだん、
意志が通じていくと逆転していって。

高校のときに、
ちょっとコワイおっちゃんでも、
ぼくよりも喧嘩が強いやつでも、
ぼくに弱かったというのがあったね。
糸井 組みあわせなんだよね。
鶴瓶 組みあわすと、
ものすごく俺もはっきり言えるの。
殴りあいしたら、
絶対、負けるんですけど。
糸井 うん。
そういう組みあわせでは、
殴りあいには、ならないんだよね。
鶴瓶 ならないんですよ。

まあ、だから、
それがぜんぶ入ってる落語ですね、あれは。
糸井 「らくだ」をやるっていうのは、
「芝浜」をやるとかと同じように、
ひとつの横綱相撲を取れ、
と言われたみたいなもんで、たいへんだね。
鶴瓶 うん、そうですね。

はじめは、やるのを、
ずっとイヤだと思っていたというか、
笑福亭の中でも
ぼくの兄弟子は上に六人いるんですけど、
その兄弟子でもやってるのが
ひとりだけなんです。

松喬(しょきょう)という男が
かつて、やったんですが、
それは言うたら、師匠から
「もうそろそろ、おまえ、『らくだ』をやれ」
と言われてるんですよ。

それはもう、
師匠からのお墨つきをもらってるんです。
あとはみんなもうしないですね。
ハナからしないです。

まぁ、うちの師匠も
死んで十八年になりますから、
ぼくはその兄弟子に、
とにかくこういうことでと言ったら、
「やってみたらどうやねん」と。
やっぱり、見届人みたいなんが必要なんです。
  (つづきます)


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2004-12-28-TUE

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