糸井とみうらの長い年月。
第2回 つまり、糸井さんのせいです。
糸井 みうら、ヘビ、もらった?
みうら もらいましたよ、もちろん。
ぼくのヘビコレクションの中に入ってます。


みうらさんのヘビコレクション。


みうらさんは、ゴムヘビを
コレクションしていらっしゃいます。
くわしくは、こちらをどうぞ。
糸井 ゴムじゃないけど、それなりの
ちがうヘビとして、いいでしょ。
みうら 木ヘビですよね。

木(き)ヘビ。
糸井が上海で買った木製のヘビ。
糸井 ゴムじゃないなりの、
ゴムごころがあったでしょ?
みうら うん。ゴムのようにしなってましたし。
糸井 あのゴムごころは、
ぜひみうらに伝えたいと思ったんだよ。
上海であのヘビを買うとき
みんなにバカにされたんだから。
みうら ヘビ買うときは、
バカにされるもんですよ。
糸井 ほかのあらゆるおみやげに目もくれずに、
ヘビを手にして「これいいな」
「ほかにいろんなものがあるのに!
 ヘビですか!」
みうら 糸井さんにいただいたあのヘビ、
舌が赤いゴムでできてるんですけど、
けっこう、すぐ取れちゃうんですよね。
くっつけるのに苦労しました。

糸井 そこは、中国の苦手なところだよ。
みうら そうですよね。
糸井 インドはコンピュータについてはくわしいけど、
100円ライターは作れないから。
みうら 逆にね。
糸井 大衆が喜ぶようなことっていうのは、
わりと苦手な国が多いんだよね。
中国も、ビルは建つんだけど、
おみやげヘビの舌はダメ。
みうら そうなんですよね。
ちゅっと抜けたら、
なかなか入れられない。
糸井 申し訳ない、
そのへんの心づかいがオレになくて。
みうら いやいやいや。
糸井 まだまだだな、オレも。
「舌のこと、よろしくね」とか
ひとこと言うべきだったよね。
みうら 何をおっしゃいますやら。
糸井 だけど、ミュージシャンっていうのは、
魔が住んでるね。

みうら ははは、また話が戻るんですか。
糸井 歌ったとたん、
天と私がつながっちゃうんだよね。
みうら 降臨ね‥‥でも、ああいうイベントを
ぼくが「やりたい」と思ったのは、
糸井さんの「ヘンタイよいこ集会」を
見たからですよ。
これだけは、はっきり言いたいです。
糸井 ‥‥‥‥。

みうらさんの言う「ヘンタイよいこ集会」は、
1982年5月、品川にて行われた
「ヘンタイよいこ白昼堂々秘密の大集会」のこと。
糸井重里が開き、ビックリハウスが主催した。
参加メンバーは矢野顕子、坂本龍一、
ムーンライダーズ、忌野清志郎、チャボ、
井上陽水、高橋幸宏、篠原勝之、
立花ハジメ、南伸坊(以上敬称略)など超豪華。
みうら つまりは、糸井さんのせいです。
糸井さんは、坂本龍一さんとか、
ムーンライダーズをバックに
歌ってらっしゃったんですよ?
あれは確実に降臨ですよ。
糸井 そのとき、ぼくが「二」にならないように
どれだけ気をつけてたか、
ちょっとだけ言わせてください。
みうら はい、ちょっとだけお願いします。

やぼですが、「二」とは二枚目のことです。
糸井 ぼくはみうらさんのような
ボブディランのスタイルで歌ったんじゃなくて、
パジャマ姿ですから。
みうら でも、わざとパジャマですから。
糸井 もちろん、わざとです。
みうら わざとですよね。
糸井 病院のベッドに乗って
看護婦さんが押してくる設定でした。
みうら ああ、そうだった。
そうだった、そうだった。

糸井 看護婦さんがグラビアガールです。
みうら そういう演出でした、
そういう演出でした。
糸井 ベッドがガラガラっとステージに出てきて、
そこにパジャマで寝ていたぼくが、
松葉杖をついて歌いました。
みうら たしかに、石膏の型のようなやつも
つけておられて、
それをステージから投げていらっしゃった。
みんなをギョッと驚かそうという演出ですよ。
糸井 そういう段取りをつけて、
「二」にならないように、
それはもう、気をつけて、気をつけて。
つまり、
「オレのことをジョンレノンと思うなよ、
 ただのパジャマ党だぞ」と。

みうら いや、そうは見えなかった。
糸井 みうらは、
文化祭のレベルでしか考えてないからね。
  (つづきます)

2009-08-04-TUE