2013年あんこの旅 とらや見学。
 
第5回 なんてたのしいリハーサル。

「とらや」さんの工場&工房見学は、興奮のうちに終了。
あんこ作りの難しさとたのしさを体感してきた一行でした。

そんなわれわれが次に向かったのは、
赤坂にある「とらや」さんの本社です。
3月3日に気仙沼で行う、
「甘くてたのしいあんこのワークショップ」の
リハーサルとして
実際にあんこを作ってみましょうということになりました。


▲「とらや」赤坂本社のキッチンで、ごきげんの大統領。

「とらや」さんの上級技術者・鵜澤幸男さんにより、
ワークショップで作るあんこの
基本的な方向性が決められました。


▲小豆を準備する鵜澤さん。右は製造課の本田順子さん。

ワークショップで作るのは、つぶあんです。

「とらや」さんのこしあんを作ることは、
設備の問題などもあり、かなり困難。
つぶあんにしても、
工場以外の場所で「とらや」さんの味を再現するのは
とてもむずかしいとうかがいました。

「ご家庭でできる良いあんこ作り」を目指します。

「わたしも家で、あんこを炊いてみようかな」
そんなかたが、ひとりでも増えることを目標にします。

良い素材で、ていねいに、シンプルに、作る。
その中で「とらや」の職人さんが
ポイントを教えてくださる‥‥
そんなワークショップを開催します。

小豆を水で洗う、鵜澤さん。
両手をつかって、こすりあわせて、拝むように。
「よく煮えろ、よく煮えろ‥‥」と願いながら。
鵜澤さんはこの洗い方を「拝み洗い」と呼んでいました。

洗って水を切った小豆に、水を加えて煮始めます。


▲加える水は小豆量の3〜4倍。


▲鍋のそば、最前列まで出る積極的な大統領。


▲「つい、笑ってしまう」と、大統領。


▲頭にかぶったネットがななめになっていますが、
 それはどうでもいいことです。

沸騰するのを待ちましょう。

ちなみに、このリハーサルでは
50人分を想定してあんこを作りました。
ですので今回、そのレシピは掲載いたしません。

ワークショップの際には、
ご家庭で使いやすいレシピをご用意しますので、
その点はご安心を。

さて、沸騰してきました。
白いレンゲで、煮汁の色を確認しながら火加減を調節。
どんどん、いい匂いがたちこめてきました。

煮汁が紅茶色になり、小豆にシワがよったら
4分の3くらいの煮汁を捨てます。


▲煮汁を捨てるこの工程を「渋切り」といいます。

捨てた分と同じだけの水を新たに加えて、
強火で沸騰させます。


▲この工程を「本炊き」といいます。

沸騰してきたら火を弱め、重曹を煮汁で溶いて投入。


▲重曹には小豆の皮をやわらかくするはたらきがあります。

沸騰後は、小豆が踊らないくらいの弱火に。
途中でときどき軽くかき回し、アクを取り除きます。


▲アクをとるのは糸井重里の最も得意な仕事のひとつ。

でも、アクもあんこの味のうち。
ぜんぶ捨てては、いけないのだとか。

小豆が湯面から出そうになったら水を足しつつ、
コトコトと、しばらく煮ます。

湯面を見つめながら、糸井がつぶやきました。

「たのしいね‥‥
 この道のりがぜんぶうれしい。
 完成まで2時間かかるんですよね?
 じゃあ、2時間ドラマだ。
 あんこがうまれる2時間ドラマ」

小豆が煮えたら、弱い流水で晒して煮汁を捨てます。

煮汁を捨てるとこんな具合に。
いわゆる、茹で小豆です。

水に溶かした白双糖を用意しておくのですが、
このときの鍋に、糸井重里が注目。
目が、きらり。


▲直径40センチほどの銅鍋です。

鵜澤さんに訊ねる糸井重里。

「銅鍋はやっぱり、熱伝導がいいですか」

鵜澤さんが答えてくださいます。

「そうですね。
 銅鍋はとくにあんこを炊くときに使うと
 ツヤが出るんです。
 アントシアニンと反応してツヤが出るみたいです」

「そうですかぁ‥‥ほしいなぁ‥‥。
 一生もんだしなぁ‥‥嫁入り道具にもなるよ!」

その、3日後のこと。
「気まぐれカメら」に大統領はこちらを掲載しました。

 

おとうさん、これはなんですか?
「ブイちゃんを運ぶものじゃないよ」
じゃ、なにをするものなのですか?
「あんこを煮るためのものだよ」
え、こんなに大きいんですか?
「ちょっと勢い余って‥‥さ」
大きすぎると思いますけど。
<『ブイヨンの興味(未刊)』より>

2013/01/31 21:50

 

話を戻します。

銅鍋で、白双糖を水で溶きます。


▲溶かすとき、シャラララ〜ときれいな音がします。

そこに、先ほどの茹でた小豆を混ぜ入れます。

この工程を「蜜漬け」といい、
よりていねいに作る場合はこのまま一晩、
漬け置きをするのですが
時間の限られたワークショップではここを省略。
続きの作業に移ります。
でも大丈夫、ここで味が大きく落ちることはありません。

ワークショップで作るのは、
お汁粉、あんこトースト、おはぎの3種類。
この3つは、あんこのゆるい順に並んでいます。
つまり、
ここからあんを煮詰めていく順で、
あんこの食べものができていくわけですね。

ぐつぐつに煮える鍋のあんこを見て、
糸井重里が願望を絞りだすように強く言いました。

「もしも熱いのが平気ならさ、
 おれは、このまんまガッ!と飲みたい。
 このマグマが食道を通って行く感じはきっと最高だぞ。
 飲みたくない?
 一体化するんだよ、あんこと」

‥‥発言には笑いましたが、
この人はあんこの鬼だ‥‥とも思いました。

そんなことをおしゃべりしているうちに、
お汁粉ができました。

もちろん、試食。

からだにしみる、あたたかなおいしさ。
きょうは、お餅がないのが残念! 本番がたのしみ。
ちなみに大統領は無茶をせず、
適温に冷ましてお汁粉を食べていました。

もうすこし煮詰めて、このくらいになると‥‥

あんこトースト用の、あんこが完成。

パンがないので、ぺろりとあんこの味見だけ。

「OK! うまーい!」

さらに煮詰め‥‥

ここまで煮詰めたのが、おはぎ用のあんこです。

これを冷まして、布などでのばします。


丸めて‥‥。

もち米も、丸めて‥‥

あんこの中に包み込みます。

ほんと、工程のすべてが、たのしくてうれしい!

リハーサルの最後、
おはぎを前に糸井が言いました。

「あんこの中でいちばんおいしいのは
 もしかしたらおはぎじゃないですかね。
 だって、先にあんこで、あとでごはんだよ?
 ぼくはお寿司のウニを食べるとき、
 軍艦巻きを斜め45度に傾けて、
 ウニを舌の上にのせるんです。
 ダイレクトにきますからね。
 おはぎもそうでしょう、あんこがダイレクトに、くる」

「うーん‥‥やっぱりおいしいです。
 ご家庭用のシンプルな作り方とはいえ、
 これはプロの味ですよね。
 気仙沼のワークショップでこれを伝えると、
 もしかしたら日本のあんこの水準が
 グッと上がることになるんじゃないでしょうか。
 そのくらいのことを、ぼくは思っています」


というわけで、
「甘くてたのしいあんこのワークショップ」に
先駆けてお送りしたコンテンツ、
「とらや見学。」は、これにて終了です。

たっぷりと、見学させていただきました。
きっとそれを本番に活かせることでしょう。

気仙沼からのワークショップを
3月3日はほんとうにおたのしみに!
またそのときにお会いしましょう!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

(おしまい)

 
2013-02-18-MON
 
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