バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。


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「ノートルダム大聖堂には
緊張する思い出が?!」

 
     
バブー&とのまりこの パリこれ! 住んでみてわかった、パリのあれこれ。
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「ノートルダム大聖堂には緊張する思い出が?!」

バブー

先週は、ノートルダム大聖堂の火災という
ショッキングなニュースが
世界中を駆け巡ったよね。

ボクたちも、パリを歩いていたら
毎日のように目にする、
エッフェル塔と並ぶパリのシンボルが
あんな炎につつまれて崩れ落ちるニュースを見て、
心が涙でいっぱいで重くなって、
どう表現していいかわからない、悲しさ。

あんなことが起こりえるのかと
今でも信じられない気持ちでいっぱいです。

とのまりこ

地震もなく、
何百年も前の建物がそのまま残るパリで、
歴史的な建造物がなくなるかもしれないなんて、
想像したこともなかったのです。

糸井さんたちがパリにいらして、
「パリおのぼりさんツアー」をした時も、
セーヌ川沿いを歩いて
真っ先に向かったのが、ノートルダム大聖堂。

「パリ発祥の地」とされるシテ島の、
メインシンボルである、ノートルダム。
パリを歩いていれば本当に頻繁に
通り過ぎる場所です。

私たちのようにフランスに住む
外国人にとっても、教会という意味以外に、
ここは特別な場所なんです。
ノートルダム大聖堂の目の前に建つ建物が
「パリ警視庁」なのですが、
滞在許可証と呼ばれるビザが発行される
場所でもあるのです。

指示された通りに
大量の書類を持って行っても、
担当者の気分によって「ノン」と言われたら、
一巻の終わり。
フランスに滞在できなくなります。
文句を言って抗議をして、
相手を怒らせても終わり。
だからただただ理不尽な要求も飲み込みながら、
祈るような気持ちで
自分の番号が呼ばれるのを何時間も待ち、
運命の審判が下される、
という外国人としての弱い立場を
目の前に突きつけられる場所。

このドキドキをみな毎年経験し、
新たに1年間フランスにいる権利をもらえると、
更新されたビザを持ち、
晴れ晴れとした気持ちで
警視庁を出たところにある
ノートルダムを見上げ、
「神様、今年も1年ありがとうございます。」
と一安心できるのです。

私は10年ビザという
フランスでいう永住権に近いものをもらえたので
このドキドキはしばらく味わわなくて
よくなったものの、
(10年をゲットした日は
さらにノートルダムが輝いて見えたのを
今でも忘れません‥‥。)
パリに在住している外国人は
おそらく全員、ノートルダム大聖堂と
ドキドキのビザ更新の思い出が
一緒にくっついているのです。

バブー
ボクがまりこちゃんの家族になって、
初めて外で散歩をしたのも
ノートルダム大聖堂の周り。
そしてボクが初めて外でうんちをしたのも
ノートルダム大聖堂の目の前だったんだよ。

クリスマスの時期になれば
大きな大きなクリスマスツリーを
見に行ってね。

とのまりこ
パリのウェディングの撮影や、
旅行風景の撮影なんかも
絶対に欠かせないノートルダム。

正面はもちろんなのですが、
あの焼けてしまった裏側からの
ノートルダムが、何よりも美しい‥‥。
おすすめ撮影スポットとして
何度もガイドブックで紹介していたくらい
美しいのです。

だから全焼はのがれて
正面は無事に残ったものの、
あの最も美しい後ろ側が
焼け落ちてしまったことが
心をズシンと重くしています。

バブー
マクロン大統領が、
パリのオリンピックまでに、
どんなことをしても元どおりの姿に戻すと
演説していたけれど、
難しいだろうなあ‥‥と思いながらも
心からそれを願うばかり。

元あった姿に戻すなんて
絶対に難しいだろうなとも思うけれど、
そこはもしかしたらフランス人のセンスに
期待できるかもしれない!
と思っているよ。

 

 

 

※この連載を再編集し、
 書き下ろしも入れて新潮文庫になりました。
 こちらをぜひご覧ください!(2015年8月出版)

フランス雑貨のお店オープンしました。
バブーくんは日本滞在時に、お店にいます。

「Boîte」(ぼわっと)
東京都杉並区西荻北4丁目5−24
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2019-04-23-TUE

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illustration:Jérôme Cointre