2大きなプレッシャー。
- 高橋
- リオデジャネイロ2016オリンピック大会は
28競技が実施され、
東京2020大会は33競技と5競技増えたんですね。
でも、大会期間は変わらないので、
スケジュールがものすごく過密なんです。
もう、これ以上日程の中に
競技が収まらない状況でして。
- 乗組員A
- 毎大会、競技数が増えている印象があります。
- 高橋
- さらに今年は暑かったじゃないですか。
- 乗組員A
- あーー、はい。
- 高橋
- 現実問題として「日中に競技をやれるのか」
ということを実感して、
そうとう頭を抱えましたね。
単純に競技の開始時間を早めれば
暑さ問題が解決するわけではなくて、
いろんな人の行動パターンを考えて、
なるべくリスクが少ないスケジュールを
組まなければいけないんです。
- 乗組員B
- というと?
- 高橋
- たとえば、競技が5時スタートになると、
選手はウォームアップのために2時間前、
朝3時に会場にくることになります。
移動に約30分、その前に朝ごはんを食べるなら
2時起きかもしれない。

- 高橋
- さらに選手が3時に来るなら、
スタッフは深夜1時集合。
そうなると電車が動いていないので、
近くに宿泊場所を用意する必要が出てくるんです。
そうすると、それだけコストが発生しますし、
実際に場所を用意できるか未知数ですよね。
フタを開けてみたら冷夏の可能性もありますが、
リスクは考えなければいけません。
- 乗組員B
- 大変だ‥‥。
- 乗組員A
- つらい気持ちになってきました。
- 高橋
- でも、まだ、
決めなきゃいけないことがあるんです(笑)。
- 乗組員A
- デイリースケジュール、
セッションスケジュールに続いて
決めなきゃいけないこと。
- 高橋
- 続いて「イベントスケジュール」を決めます。
セッションスケジュールからさらに細かく、
種目別の予選、準決勝、決勝を
何時にはじめて何時に終えるのか決めていくんですね。
競技というのは大まかに
競技・種別・種目に分けられるんですが、
競技は水泳や陸上競技のこと、
種別は水泳なら競泳、飛込、水球など。
種目は競泳の100m平泳ぎ、4×100mリレーなど。
この種目別に、予選から決勝まで、
開始時刻と終了時刻を決めるのが
イベントスケジュールです。
- 乗組員A
- はあー。
フライングや万が一のトラブル、
よめない競技が多くて大変そうです。
- 高橋
- そうなんです。
参考までにリオ大会のものをお見せすると、
陸上競技で
「男子円盤投げ予選・グループA、
9時30分から10時22分まで」のように書いていて。

- 乗組員A
- 22分、ですか?
- 高橋
- はい。
- 乗組員A
- すごい、
分刻みですか。
- 高橋
- このスケジュールをゼロから組み立てていたら
パンクしそうになりますけど、
大枠は決まっているので、まあ安心ですね。
今年中にはイベントスケジュールを完成させて、
来年の春にはオリンピックのチケット販売を
スタートしたいと思っています。
もう、ここまできたら終わりでしょ、
と思うかもしれませんが。
- 乗組員A
- まだあるんですか(笑)。
- 高橋
- 次はDCAS
(Detailed Competition Activity Schedule)という
更に細かいスケジュールを決めます。
それがものすごく、細かいんですよ。
- 乗組員B
- もっと細かいんですか。
- 高橋
- はい。
セッションのスタート時刻からさかのぼって、
スタッフは何時に来て、
ミーティングは何時からはじめて、
何時に備品チェックして、エリアチェックして、
選手は何時に会場入りして、
何時からウォームアップをして‥‥という、
競技に関わる選手やスタッフの全体スケジュールを
分刻みでつくるんです。
- 乗組員B
- 全員分のスケジュールを分刻み‥‥。
- 高橋
- これに加えて「トレーニングスケジュール」を
考えなければいけないんです。
2020年の7月の選手村開村にあわせて、
たくさんの選手が来日して、
練習会場で練習をはじめるので、
そのためのスケジュールを考えるんです。
- 乗組員B
- はあーー。
こんなにたくさん決めることが。
- 乗組員A
- ますます、つらい気持ちになってきました。
- 高橋
- でも、これらのスケジュールすべて、
競技が終わるまでは変更する可能性あり、なんです。
天候、選手の体調、延長、
いろんな要因でシナリオが変わるので、
僕らの仕事は大会が終わるまで
ずっと続くと思います。

- 乗組員A
- 雨で中止になることはもちろん、
台風で延期なんてことも考えられますもんね。
- 乗組員B
- 来年の夏は、
「もし、今日の天気が来年だったら‥‥」と
想像してドキドキしそうです。
- 高橋
- もう今年の夏も、
そういう風に天気をみちゃいましたね。
猛暑だし、台風もきたし、
今年は散々でしたね。
2020年が今年だったらと思うと恐ろしい。
- 乗組員A
- ああーー、そうでしたね。
- 高橋
- あらゆる万が一のパターンに備えて
準備をするわけにはいかないので、
基本となるパターンを考えて、
さまざまなケースに応用できる準備をしていきます。
- 乗組員B
- ひとつ変更があれば、
周知も大変ですしね。
- 高橋
- そうなんですよね。
競技日程の変更はすべてに影響するので
大きなプレッシャーはあります。
とくにプレッシャーを感じるのは、
これまでの大会で
メダルが授与されなかった種目がないんです。
つまり、大会期間中に終えられなかった競技はない。
- 乗組員A
- へえーー。
- 高橋
- 多少の変更はあったとしても、
絶対に大会期間中に全競技を終えて、
メダルを授与したいです。
- 乗組員A
- 胃が痛いですね。
- 高橋
- 最善をつくすしかないなと思っています。
- 乗組員A
- 僕は野球ファンなのですが、
聞きながらどうして野球がオリンピック種目から
外れるのかわかったような気がします。
今回の東京2020大会では開催されますけど、
時間もよめないし、予選も多いし、
こんなに大変な競技はないですね。
- 高橋
- でも、さらによめない競技が加わったんです。
それが、サーフィン。

- 乗組員A
- サーフィン。
波待ちとかですか?
- 高橋
- そうなんです。
天気よりよめない「波」を待たないと
競技が実施できないんです。
サーフィンの国際大会では、競技だけでなく、
会場ではコンサートやヨガ、
オーガニックフードの販売なども行われており、
東京大会でも、
競技がその日に開催されなくても
観客の方に大会をたのしんでもらえるように、
このようなサーフィンの世界観を取り入れる予定です。
- 乗組員B
- フェスっぽいですね。
- 高橋
- そんなイメージですね。
なので、東京大会でもはじめて、
競技がその日に開催されなくても
観客の方に大会をたのしんでもらえるように、
こんなサーフィンの世界観を取り入れるような
8日間サーフィンフェスティバルを開催します。
- 乗組員B
- たのしそう!
- 乗組員A
- 何度も考えていることかと思いますが、
この期間中に波が来なかったらと思うと‥‥。
- 高橋
- 期間中に競技が終わらなかったら延期ですが、
最終日までスタンバイしておくと
その分コストがかかるんですよね。
- 林
- 競技会場で消費されるトイレットペーパーや食事、
スタッフや警備などさまざま手配する必要性も
出てくるんですよ。
- 乗組員A
- なるほど。
- 高橋
- 波も天候も、気象情報とにらめっこではありますが、
フェス的なものをオリンピック大会に盛り込むのは
我々にとってもチャレンジです。
サーフィンは東京2020大会成功の
ひとつの鍵になるかなと思っています!
- 乗組員A
- サーフィンの知識があまりなかったのですが、
急に気になりだしました。
- 乗組員B
- 私も、とっても観に行きたくなりました!
(つづきます。)
2018-12-26-WED











