東京オリンピック・パラリンピックに
出場する選手や、観戦をたのしむお客さんの
ほぼすべての人が関係する「飲食」について
考えているチームにインタビューしました。
組織委員会の山根さん、末口さん、高梨さんが
所属している飲食サービス部では、
世界各国の選手が試合前にとる食事や、
日本らしさを感じてもらえるような食事、
それどころか食にまつわるすべてについて、
日々頭を悩ませ、課題を解決している真っ最中です。
最低限で欠かせない、食事という要素。
裏方の仕事であることに誇りを持った
3人の担当者が話します。

3そうめんは
メニューに入りますか。

乗組員B
飲食サービス部のみなさんはもともと、
食にまつわるお仕事をされていたのでしょうか。
山根
私は東京都の事務職員なので、
食の専門家ではありません。
現在のポストに来たのも今年の4月からで、
試行錯誤しながらやってきました。
現在、我々は28人の部隊ですけれども
その中には専門家もいますし、
スポンサーさんの食品メーカーからも
チームに入っていただいています。
混成部隊で仕事をしているのが現状です。
末口さんは食の系統に近い出身なので、
私よりも経験があります。
末口
はい、出身母体が
食に関係するところなので。
山根
末口さんは農林水産省のご出身です。
乗組員B
省庁からチームに入ることもあるんですね。
日本の食に欠かせない役割です。
山根
そして、高梨さんは管理栄養士の資格も
お持ちの専門家として頼りにしています。
高梨
もともと私は食品メーカーに勤めていまして、
スポーツの現場も経験させていただきました。
オリンピックの場合なら、
どんな食事が用意されているか、
正確な情報を選手に伝える役割でした。
ワールドカップのような大会ですと
ホテルに「これを用意してください」と言えば
用意していただけたわけです。
ですから、どれだけ苦労されたかわかりませんが、
「その節は大変お世話になりました」
と今頃になって思っております。
乗組員B
日本選手陣の分だけを用意することと、
世界各国の選手の食を用意するのでは
大きく変わってきますよね。
乗組員A
サービスを利用する側だと、
素早く正確に対応してもらわないと
不満が出ると思いますが、
逆の立場になってみれば、
大会中にもリクエストが来ることも
おおいに考えられますね。
山根
期間中のリクエストはあると思いますね。
食事を目の前にして、
もっとこうしてほしいという声は
当然出てくると思います。
乗組員B
今は28人ですが、
大会が近くなってくると、
もっとチームも大きくなるのでしょうか。
山根
その予定です。
というのも、競技会場が全国で43会場あります。
それだけの数を28名という人間で見ていますので、
掛け持ちをしているわけなんですよ。
大会期間中は会場に張り付くことになりますので、
今の人数だと全部の会場には張り付けられません。
ですので、まだ増強していく必要がありますね。
乗組員B
28人のメンバーが、
バラバラの動きをするんですね。
山根
現場の中で事業者さんとやりとりをしながら
オペレーションをすることになります。
乗組員B
会場ごとに選手が食事をとるための場所と、
お客さんが買えるような場所が
用意されるのでしょうか。
山根
基本的にはそうなります。
お客さんが飲み食いをする場所は
基本的には観客席になるんですけれども、
選手用はアスリート用のラウンジができますから、
そこで食事を提供することになります。
ただ、競技会場での食事って、
そんなに重くはないんですね。
必要な食事を選手村でとってから会場入りして、
競技会場で軽く練習をして、
試合直前に軽く食事をするかしないか。
ですので、そんなに大がかりな食事というのは
競技会場では基本的には考えられませんね。
乗組員B
軽い食事というと、
具体的にはどんなものですか。
山根
軽い食事ですと、サンドイッチとか、果物とか。
場合によってはお肉を食べられる
会場もあるにはあるのですが、
基本的には全部選手村の方で
しっかり食べていただくことになります。
乗組員B
試合前はデリケートですもんね。
試合後にはリラックスして
日本での食事をたのしんでいただきたいですね。
食事のバリエーションだけでなく、
たとえば盛りつけとかでも、
日本らしさを表現できるのかなと思うのですが。
高梨
メインダイニングでは紙皿の使い捨てになりますが、
カジュアルダイニングでは、
日本らしさを味わっていただくために
使い捨てではない食器も用意しています。
盛りつけという観点でも、
日本ならではの配慮をしながら提供できるように、
事業者さんと相談してます。
乗組員B
東京オリンピック・パラリンピックの
オリジナルメニューを開発することもありえますか?
たとえば、公式マスコットの顔が入った
「ミライトワパンケーキ」みたいな(笑)。
かわいいキャラものなんて日本らしいかなって。
高梨
今のところ、それはないです(笑)。
乗組員A
聞けば聞くほど、まっとうな仕事ですよね。
ぼくら、にわかオリンピックファンが
勝手に想像を膨らませて、
オリンピックならではを求めがちだけど。
乗組員B
開催は7月、8月ということで
暑さ対策については、
どのように考えていらっしゃいますか。
山根
食欲があまりないときでも
ササッととれるものを考えています。
今年の4月から、メニューの
アドバイザリー委員会を立ち上げました。
料理人の方、アスリートの方、栄養士の方という
専門家のみなさんに集まっていただいて、
いろいろアドバイスをいただきました。
その中でアスリート経験のある方からは
夏の食欲対策というご意見もいただきました。
たとえば、冷たいそうめんができないか、
というようなご意見をいただいています。
そうめんも含めてメニューに入れられないか、
考えているところですね。
乗組員B
そうめん、いいですね。
乗組員A
そうめん、海外の人からは
不思議な食べものかもしれませんね。
乗組員B
氷の中にパスタがあるけど?
乗組員A
そうそうそう。
乗組員B
ヘイ、このソースにつけるのかい?
乗組員A
それはさすがにわかる。
乗組員B
流しそうめん、
なんてないですよね‥‥。
乗組員A
衛生面でこんなに気を使っている人たちが
流しそうめんは採用するはずがないでしょ。
山根
あはは。
乗組員A
具体的なメニューについては、
まさにこれから決まっていくところですか。
高梨
はい、今調整をしている最中です。
乗組員B
直前になったら、
テレビとかで発表されるのでしょうか。
なんとなく、レポーターの方が
試食するような光景を思い浮かべてしまうのですが。
山根
選手村のメニューって、
基本的には選手村の中での話なので、
「決まりました」という発表をしないんですよ。
関心を持っていただいてすごくうれしいのですが、
そういう発表はやっていなくてですね。
乗組員A
そうでしたか。
乗組員B
海外から観戦に来たお客さん向けに
競技場の中で買えるもののなかで、
色濃くしているものって、なにかあるのでしょうか。
山根
日本の名物や東京の名物をそろえられたら、
それはそれでたのしいんだとは思うんです。
けれど、こちらもお客さんを並ばせないで、
いかにスピーディーに提供できるかを考えると
なかなか難しいんです。
乗組員B
並ぶと暑いですしね。
山根
スタジアムの売店では
なるべく取り扱い品目を少なくして、
一瞬で対応できるようなことが優先になります。
ですから、飲み物と簡単なスナック類が中心です。
乗組員B
売店でのラインナップが決まるのも
これからですか。
山根
そうですね、はい。
乗組員A
競技場に食堂や売店があれば、
そこを利用できるんだと思いますが、
お店から作っていく場所もありますよね。
山根
そうですね。
仮設の会場なんかでは、
お店から作っていかなきゃいけません。
乗組員A
何もないとこからですもんね。
乗組員B
期間中に考えられる課題ですとか、
このあたりは絶対につぶしておきたいポイントは、
どんなものが挙げられますか。
山根
うーん‥‥。
現段階では、いくつもありますね。
第一は、いかに円滑に提供できるかですね。

(つづきます)
2019-11-24-SUN