3コストとレガシーを
考える。
- 乗組員B
- おふたりは、大会組織委員会に着任される前は、
どのようなお仕事をされていたんですか?
- 山口
- 私は電気事業連合会から出向しておりまして、
現在で3年目になります。

- 乗組員A
- ああ、やっぱりそうですか。
ボランティア部門の場合は
もともと関係のない仕事をされていた方が
多かったのですが、
エネルギーの場合は
専門的な知識が必要そうですよね。
- 山口
- そうですね。
こればっかりは、電気やガスの知識がないと
できない仕事だと思います。
- 三浦
- 私は東京都からの出向で、
水道局で電気関係の仕事をしていました。
水道局でも電力会社さんとの交渉ですとか、
安全策を考えたりですとか、
現在と似たことをやっていましたね。
着任したのは約6年前、まだ招致の段階で、
大会組織委員会が発足していないときから
すこしずつこの仕事をはじめていたので、
そう思うと、随分と経ちましたね。
- 乗組員A
- 6年前ですか。
- 三浦
- はい、まだ人数もすくなくて、
最初は3名でした。

- 山口
- 私が着任した3年前は6名でした。
今ほど人数が多くなかったので、
はじめて会う別の部署の方に
「どんなお仕事なんですか?」と
聞くのが楽しかったですね。
知らないことばかりで刺激的でした。
いまは22名になり、
周りの部署もだいぶ人が増えています。
大会時には各会場に責任者を置きますし、
電気がきちんと動くか
毎日観察しなければいけませんので、
もっと人数が必要になると思います。
- 乗組員A
- 万が一にそなえなければいけませんもんね。
- 山口
- どこかでプツッと電気が切れたら
すぐに対応しなければいけませんし、
対応している間、他で何が起きるかわからないので、
サポートも必要です。
人数はけっこう必要なんです。
- 乗組員A
- 最初はどのようなお仕事から
はじめられたんですか?
- 三浦
- 最初はIOCの講義からはじまりました。
「大会に使う電気とはこういうものだ」と、
私たちに教えてくれる機会です。
そういった研修を受けてから、
東京2020大会の電気やガスをどうするのか、
自分たちで検討をはじめました。
最初に考えたのが「会場までの電気」です。
- 山口
- 「会場までの電気」に関する計画が
すべて決まったのが、昨年の12月なんです。
私たちが考えた計画に基づいて
IOCが45会場すべての電気系統をチェックし、
実際の工事に着手するまで
約3年ほどかかっていまして。

- 乗組員A
- へえー、3年も。
それは長かったですね。
- 山口
- 過去大会も約3年かかったと聞いていたので、
予想通りではありましたが長かったですね(笑)。
このあと、工事期間が1-2年かかるので、
早めにはじめないと間に合わない焦りもありましたし。
- 乗組員B
- 設備が新しくなり、工事が進み、
大会を通じて大きく街に手が加えられることで
なんというか、イメージとしては、
街がすこし若返る感じですかね。
- 山口
- そうなるところもあると思います。
ただ、過去大会と大きく違うところは、
リオ大会ですと新たな街が1-2個できてしまうような
電気の使用量の増大があったんです。
なのでリオ大会の場合は、
新しく送電するための鉄塔を建てたり
変電所をつくったりしています。
ですが、東京はもともと電気の使用量が大きいので、
45会場あっても、電気の使用量は
数パーセントしか増えないんです。
なので、東京の場合は基本的に新たなものをつくらず、
今あるものを活用して電気を送電できます。
そこが、東京2020大会のいいところですね。

- 乗組員A
- 東京の街はそれだけ成熟しているんですね。
- 山口
- 「エネルギーに関しては、
最近でいちばんコストがかかっていない」と
IOCに言われるほど、
おかげでコスト削減には助かっています。
よく言われる言葉ですが、
オリンピックで大切なことのひとつに
「レガシー」があります。
新たなものをつくったとして、
それが大会が終わった後、
街にどう活かされて残るのか。
そこは充分に考えなければいけません。
私たちの場合ですと、たとえば、
東京2020大会で新たにつくった
埋め立て地側の会場に関しては非常に考えました。
その辺りは公園や広場が多く、
大きな電気が使用されるビルや住宅はすくないので、
都市部ほど電気系統が張り巡らされていません。
今回のために新たな電気の収容施設をつくり、
送電ルートをふたつ用意したら、
ふたつ目のルートは「念のため」ですから
大会中に使用されない可能性があります。
将来的にも送電ルートは1つで充分なので、
そういった場合は新たにつくるのではなく、
今あるものでカバーできるように設計をして、
レガシーという観点でIOCと協議して
決めていきました。
- 乗組員A
- ひとつひとつコストを計算して、
レガシーを見込んで設計をされたんですね。
- 山口
- そうですね。
その交渉が大変でしたね。
- 乗組員A
- はあー、まったく想像できないご苦労でした。
あとは、ガスもありますが、
主にどんな風に使われるんですか?
- 山口
- 選手村でシャワーを浴びたり、
料理をつくったりですね。
- 乗組員B
- では、ガスの設置は選手村の周りだけですか?
- 山口
- いえ、会場でも選手たちのシャワーなどで
必要になりますので用意します。
ただ、ガスは電気ほど条件が厳しくなく、
規模もそれほどではないので、
基本は今あるガスの設備を活用するか、
プロパンガスを使用する方向でコストを削減して
準備を進めています。

- 乗組員A
- コスト計算とレガシーは、
設計する上でとても大事なことなんですね。
- 山口
- 絶対に電気やガスに不備のないように
準備したいと思う反面、
無駄なものをつくってしまってはいけませんから、
カットする部分と充分に準備する部分と考えるのは
非常に大事なことでした。
(つづきます。)
2018-11-14-WED










