アテネオリンピックから
清く正しい、にわかファンとして
オリンピックを記事にしているほぼ日が、
東京2020組織委員会にときどきお邪魔して、
各部門の仕事内容をファン目線でレポートする連載。
第二回は〈エネルギー〉部門です。
どんな準備を進めているのか、
想像が難しいエネルギー部門。
その実態は「ぜったいに消えてはいけない」という
責任と緊張感のあるお仕事でした。
大会を支える基盤となる人々、
エネルギー担当の山口さん、三浦さんに
お話をうかがいました。

3コストとレガシーを
考える。

乗組員B
おふたりは、大会組織委員会に着任される前は、
どのようなお仕事をされていたんですか?
山口
私は電気事業連合会から出向しておりまして、
現在で3年目になります。
乗組員A
ああ、やっぱりそうですか。
ボランティア部門の場合は
もともと関係のない仕事をされていた方が
多かったのですが、
エネルギーの場合は
専門的な知識が必要そうですよね。
山口
そうですね。
こればっかりは、電気やガスの知識がないと
できない仕事だと思います。
三浦
私は東京都からの出向で、
水道局で電気関係の仕事をしていました。
水道局でも電力会社さんとの交渉ですとか、
安全策を考えたりですとか、
現在と似たことをやっていましたね。

着任したのは約6年前、まだ招致の段階で、
大会組織委員会が発足していないときから
すこしずつこの仕事をはじめていたので、
そう思うと、随分と経ちましたね。
乗組員A
6年前ですか。
三浦
はい、まだ人数もすくなくて、
最初は3名でした。
山口
私が着任した3年前は6名でした。
今ほど人数が多くなかったので、
はじめて会う別の部署の方に
「どんなお仕事なんですか?」と
聞くのが楽しかったですね。
知らないことばかりで刺激的でした。

いまは22名になり、
周りの部署もだいぶ人が増えています。
大会時には各会場に責任者を置きますし、
電気がきちんと動くか
毎日観察しなければいけませんので、
もっと人数が必要になると思います。
乗組員A
万が一にそなえなければいけませんもんね。
山口
どこかでプツッと電気が切れたら
すぐに対応しなければいけませんし、
対応している間、他で何が起きるかわからないので、
サポートも必要です。
人数はけっこう必要なんです。
乗組員A
最初はどのようなお仕事から
はじめられたんですか?
三浦
最初はIOCの講義からはじまりました。
「大会に使う電気とはこういうものだ」と、
私たちに教えてくれる機会です。

そういった研修を受けてから、
東京2020大会の電気やガスをどうするのか、
自分たちで検討をはじめました。
最初に考えたのが「会場までの電気」です。
山口
「会場までの電気」に関する計画が
すべて決まったのが、昨年の12月なんです。
私たちが考えた計画に基づいて
IOCが45会場すべての電気系統をチェックし、
実際の工事に着手するまで
約3年ほどかかっていまして。
乗組員A
へえー、3年も。
それは長かったですね。
山口
過去大会も約3年かかったと聞いていたので、
予想通りではありましたが長かったですね(笑)。
このあと、工事期間が1-2年かかるので、
早めにはじめないと間に合わない焦りもありましたし。
乗組員B
設備が新しくなり、工事が進み、
大会を通じて大きく街に手が加えられることで
なんというか、イメージとしては、
街がすこし若返る感じですかね。
山口
そうなるところもあると思います。
ただ、過去大会と大きく違うところは、
リオ大会ですと新たな街が1-2個できてしまうような
電気の使用量の増大があったんです。
なのでリオ大会の場合は、
新しく送電するための鉄塔を建てたり
変電所をつくったりしています。

ですが、東京はもともと電気の使用量が大きいので、
45会場あっても、電気の使用量は
数パーセントしか増えないんです。
なので、東京の場合は基本的に新たなものをつくらず、
今あるものを活用して電気を送電できます。
そこが、東京2020大会のいいところですね。
乗組員A
東京の街はそれだけ成熟しているんですね。
山口
「エネルギーに関しては、
最近でいちばんコストがかかっていない」と
IOCに言われるほど、
おかげでコスト削減には助かっています。

よく言われる言葉ですが、
オリンピックで大切なことのひとつに
「レガシー」があります。
新たなものをつくったとして、
それが大会が終わった後、
街にどう活かされて残るのか。
そこは充分に考えなければいけません。

私たちの場合ですと、たとえば、
東京2020大会で新たにつくった
埋め立て地側の会場に関しては非常に考えました。
その辺りは公園や広場が多く、
大きな電気が使用されるビルや住宅はすくないので、
都市部ほど電気系統が張り巡らされていません。
今回のために新たな電気の収容施設をつくり、
送電ルートをふたつ用意したら、
ふたつ目のルートは「念のため」ですから
大会中に使用されない可能性があります。
将来的にも送電ルートは1つで充分なので、
そういった場合は新たにつくるのではなく、
今あるものでカバーできるように設計をして、
レガシーという観点でIOCと協議して
決めていきました。
乗組員A
ひとつひとつコストを計算して、
レガシーを見込んで設計をされたんですね。
山口
そうですね。
その交渉が大変でしたね。
乗組員A
はあー、まったく想像できないご苦労でした。
あとは、ガスもありますが、
主にどんな風に使われるんですか?
山口
選手村でシャワーを浴びたり、
料理をつくったりですね。
乗組員B
では、ガスの設置は選手村の周りだけですか?
山口
いえ、会場でも選手たちのシャワーなどで
必要になりますので用意します。

ただ、ガスは電気ほど条件が厳しくなく、
規模もそれほどではないので、
基本は今あるガスの設備を活用するか、
プロパンガスを使用する方向でコストを削減して
準備を進めています。
乗組員A
コスト計算とレガシーは、
設計する上でとても大事なことなんですね。
山口
絶対に電気やガスに不備のないように
準備したいと思う反面、
無駄なものをつくってしまってはいけませんから、
カットする部分と充分に準備する部分と考えるのは
非常に大事なことでした。

(つづきます。)
2018-11-14-WED