第9回 いきなりナスを渡す。
昨日ね、テレビを観てたら、
ブータンのことをやっててね。
糸井 うん。
ブータンの男の子が、
夜這いに行くっていう話でさ。
そういう風習がいまでもあるらしくて。
糸井 へぇ。いまも?
うん。首都のティンプーとかでは
もう禁止になってるんだけど。
糸井 地方にはまだ夜這いの風習が。
うん。番組のなかでは
「夜這い」とは言ってなかったけどね。
「ナイトなんとか」って言ってたな。
ナイトなんとか‥‥。
まぁ、夜這いみたいなもんですよ。
糸井 「ナイトキャタピラー」ってどう?
ナイトキャタピラー?
ああ、「這う」のところが「キャタピラー」?
ははははは。
糸井 ナイトキャタピラー(笑)。
で、その夜這いに行くときにね、
ナスを持っていくわけ
自分のところの作物の、ナスを。
糸井 いかがわしいね。
そんなにいかがわしくないんだけどね。
どうするかというと、
その、お目当ての女の子の寝床まで
首尾良く忍んでいったら、
まず、ちょっと添い寝をするんだ。
糸井 うん。
それでもって、
女の子に持ってきたナスを
こう、そっと持たせる。
で、持たせたナスを握り返したら、
それで「OK」っていうことらしい。
糸井 ハハハハハ、ほんとう?
ほんとなんだから(笑)!
オレがつくった話じゃないんだから。
だって、つくってどうするんだよ、そんな話。
テレビでやってたんだよ。
糸井 ふふふふ。
それでね、ある男の子の夜這いを
テレビが取材してるんだけどね、
その男の子がけっこう純情でさ、
ずっと前から好きな、
なんとかちゃんのところに
はじめて夜這いに行くんだよ。
糸井 ファーストナイトキャタピラー。
ファーストナイトキャタピラーなんだよ。
緊張してるんだ。
でね、うまくいくようにっていうんで、
夜這いの名人みたいな人のとこに
教えてもらいに行くわけ。
糸井 ナイトキャタピラー
ナショナルトレジャー。
えっ、それは?
糸井 国宝。
‥‥‥‥あ、国宝。
ナショナルトレジャー。
まぁ、名人がいてね、夜這いの。
ものすごくインチキくさい感じの
おじさんなんだけど。
糸井 いいねぇ(笑)。
そのおじさんがね、
こういうふうにやるんだって教えるわけ。
こう、あちこちうかがいながら
這っていくんだよ。
糸井 キャタピラーするわけね。
で、「ちょっとやってみろ」ってことで
予行演習するわけ。
そしたら、こう、ドアをバッと開けてさ、
サッサッサッと部屋に入ってきたと思ったら、
寝てるおじさんに、ナス、いきなり渡しちゃう。
おじさんが
「おま‥‥ば・か・や・ろ・う!」って。
糸井 「そうじゃないんだ!」って(笑)。
そう(笑)。
で、テレビのなかで、
「いきなりナスを持たせてどうする」
って名人が言ったらね、
いっしょに観てたうちの嫁が
膝をパンと叩きながら「そう!」って。
糸井 わはははは。
まぁ、そういう準備ののちに、
いよいよ本番ってことになるんだけどね。
そこはさすがにカメラは入れないんだ。
糸井 夜這いだからね。
カメラがついていったら目立ちすぎるよ。
だから、とりあえず、
男の子にピンマイクだけつけて、
カメラはその家を遠くから映してる。
こう、畑のこっち側から。
コオロギの鳴いてる声なんかがしててさ。
糸井 うん。
で、マイクをつけた男の子が、
いよいよ、こう、部屋に入って行ったらさ、
なんだかひっくり返しちゃったらしくて、
「ガチャピンドン!」って。
糸井 ははははは。
みんな起きてきちゃう。
お父さんとか出てきちゃって、
「なんだおまえは!」って。
と、いうのを、テレビでやってた。
糸井 それ、なんの番組?
えーっとね、なんの番組だろう、
なんか、お笑いの人が出てて。
糸井 民放?
民放。
糸井 ふーん。
ま、そういう番組を
ふと思い出したっていうのも、そもそもは、
「いきなり」っていうことだけで。
糸井 「いきなり」つながりで「ふと」(笑)。
うん(笑)。
どうして「いきなり」が出てきたんだか、
もう思い出せないけど。
糸井 あれだ、森の話だ。
「森の木を、いきなりぶっちゃダメだ」
っていうことだ。
ああ、そうだ、そうだ。
それで、「ふと」思い出したのが、
「いきなりナスを渡しちゃダメ」だってこと。
糸井 ははははは。
だから、伸坊の辞書で、
「いきなり」っていうことばを引くと。
「いきなりナスを渡すな!」っていう
例文が載ってる。
糸井 (笑)
(おもしろいなあ。つづきます)

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2010-10-28-THU