黄昏 た そ が れ  日光・東北編       南伸坊さんと、糸井重里。昔なじみのふたりが、始終しゃべりながら小旅行。前回は鎌倉の名所をめぐりましたが、今回は日光、松島、花巻あたりを回ります。ゆっくと変わる風景と、めくるめく無駄話。いったいいつまで続くのかな‥‥? そしてこの不思議な企画は、なんとすべてをまとめて本になるのです。いえ、ほんとの話です。
第44回 いくつがいい?
糸井 伸坊のお母さんって、ご存命?
91でね、死んだんだよ。
糸井 91。すごいねぇ。
おふくろは、
「100まで生きる」って言ってたの。
糸井 ふーん。
それで、91で亡くなったんだけど、
91歳の誕生日のときに、
「いくつになった?」って訊いてみたらね、
「101」って答えたんだよ。
糸井 くり上がっちゃったの?
ははははは。
だから、おふくろとしては、
「もう100、いった」って思ってたみたい。
糸井 へぇ(笑)。
でも、「しまった!」ってことでは
まったくないよね。
うん。よかったんだと思う。
糸井 89、90、101、だったんだ。
うん。ふふふふ。
糸井 子どもがやりがちな。
うん。はははは。
でも、なんていうかな、
80代と、90歳っていうのは、
だいぶ、違うよね。
糸井 違うだろうねぇー。
うん。だから、80代のころは、
「まだまだ」って思ってたんだと思うんだよ。
糸井 で、90とか91になったときに、
まぁいいか、じゃないけれども、
ふっとひと息。
うん。
糸井 そっか。
91歳‥‥それは、よかったですよ。
糸井 前も訊いたかもしれないけど、
伸坊は、いくつがいい?
いやー、わかんない(笑)。
糸井 わかんないね(笑)。
ねぇ。
糸井 最低限、ってない?
最低限?
糸井 過ぎた数字はダメよ。
ははははは。
糸井 「最低限、40まで生きたいな」って、
60を過ぎたいま言うのはダメ。
ははははは。ダメって、なんだよ。
糸井 最低限、何歳まで?
最低限ね。そうねぇ。
あんまり考えたことなかったなぁ。
糸井 今日、考えよう。
いま、考えよう。
うーん‥‥61だから、いま。
糸井 いま、61だから‥‥62とか?
すごい最低限だね。
一同 (笑)
糸井 遠慮がちに(笑)。
61だから‥‥最低限‥‥。
糸井 最低限‥‥。
70。
糸井 ん、70。
どうだ、70。
糸井 なるほどね。
赤瀬川さんは、もう70になったもんね。
71か。
糸井 そういう場合、安心するのかね、
70になったりすると。
ああー、どうだろうね。
糸井さんは?
糸井 ぼくはね、まえにも、考えたんだけど、
父親が68才で死んでるんです。
だから、それが、ひとつの基準。
あ、そういう考え方があるか。
糸井 ていうか、それ以外に、拠り所がない。
うちの親父は45だった。
糸井 それは、超えたね。
超えた、超えた(笑)。
糸井 じゃあ、最低限の最低限は、すんだね。
すんだ。
つぎは、おふくろの91っていうのが(笑)。
糸井 たいへんだなぁ、それは(笑)。
足して割るか。
足して割る?
あ、親父とおふくろを。
糸井 だから、45たす91は‥‥136だろ?
136を2で割ると‥‥68。
糸井 あ、オレの最低限と同じになったじゃん。
じゃ、そうしない?
ははははは、そろえてどうすんだよ。
糸井 おんなじ日とかに設定すると、
伸坊は69で、オレは68っていうことで。
ああ、そうだね(笑)。
糸井 どうだろう。
うーん、じゃ、それでひとつ。
糸井 最低限問題は。
そういうところで、手を打ちますか。
糸井 うん。まずは、それを超えたいと。
うん。
糸井 (笑)
(ああ、終わってしまった。
 長いあいだ、ご愛読いただき、
 ほんとうにありがとうございました。
 続きというか、まとめというか、余韻は、
 未掲載分の雑談をたっぷりと収録した
 単行本の「黄昏」で、どうぞ!
 ありがとうございました)

2009-11-19-THU

前へ 最新のページへ

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN