第27回 カジキマグロと叶姉妹。
そういえばオレ、
カジキ漁の取材もしたことがある。
カジキ釣りの名人の船に
1週間くらい乗って、
「今日も釣れなかった‥‥」みたいな。
糸井 へえ、それはなんの仕事?
テレビのドキュメンタリー。
すごくおもしろかったよ。
糸井 いいなぁ。で、釣れたの?
釣れた。最終的には釣れた。
それでね、おもしろかったのは、カジキって
「いちばんいい大きさ」ってのがあるんだ。
そんなにバカでかくない、中くらいのやつが、
いちばん美味しくて、いちばん高く売れるわけ。
糸井 うん、うん。
だから、漁師さんとしては、
その中くらいの大きさのカジキが
いちばん儲かるわけじゃない?
ビジネス的には。
だけど、釣りたいのは、
やっぱり、バカでかいカジキなんだよ。
糸井 あー。
漁師の人って、そういうアレがあるんだ。
その取材のときは、けっきょく、
1週間ずっと釣れなくて、
最後の最後にバカでかいのが釣れたわけ。
高く売れる中くらいのやつじゃない、でかいやつ。
そのときに、わー、デカいのが来た!
ってなってるときに、漁師さんがさ
ものすごくうれしそうなんだよ。
糸井 ああ。わかる気がするね。
だってさ、原始の時代に、
もしもカジキ漁があったとしたら、
バカでかいカジキよりも
中くらいのカジキに価値がある、
なんてことは思えないじゃないですか。
そうだね。
糸井 そこにまで戻るんだろうね。
いや、そういうふうに、自分の中に、
プリミティブのかけらを見つけることはあるよ。
自分の例でいうと、ぼくはついつい、
そんなに好きでもないのに
叶姉妹に目が行くという。
え? どうつながるの?
糸井 つまり、どっかのところでもう、
原始人の目で見てるんだと思う。
ああ、大きい方がいいぞっていう、
糸井 大きさだけに反応しているのか知らないけど、
なにかものすごくしゃべってるんだろうね、
あのふたりのボディがさ。
あはは。
糸井 だから、あのふたりがテレビに出てると、
もう、理屈抜きで、見るよ。
原始の血が騒ぐんだ。
糸井 かもしれない。
(今日も終わらなかった‥‥続く)

2008-06-02-MON


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN