生活のたのしみ展

三國万里子さんが ロンドンとエジンバラで みつけたもの。 ハリネズミ店長とまりこが紹介します。 presented by 生活のたのしみ展

その
8
カシミヤのニットと、手編みのスキーセーター

まりこ

大学に入るために東京に出てきて、
服には「DCブランド」と「セレクトショップ」の他に
「古着」というジャンルがあることを知りました。

ハリネズミ店長

その頃、新潟には古着屋はなかったのね。
最初に行ったのは、なんていうお店?

まりこ

新宿のALTAに入っていた
「DEP’T」という店です。

ハリネズミ店長

ふうーん。
その時は何か買ったの?

まりこ

明るい緑色の、チェックの開襟シャツを買いました。
見たことのない質感の、透ける生地でした。
もう一枚、アメリカ海軍のセーラーシャツも買いました。
厚手の生地の、ごわっとしたテクスチャーに
すごく心惹かれたのを覚えています。
この2枚を買って、大学一年の前期はほぼ毎日、
そのどちらかのシャツを着て学校に通っていました。
白いカーペンターパンツを合わせて。

ハリネズミ店長

よほど気に入っていたのね。

まりこ

我ながら似合ったんです。
でもそれを2ヶ月くらい続けた頃、
ボーイフレンドに言われました。
「そろそろ違う服を着たところが見たい」って。

ハリネズミ店長

面倒臭いことを言う男ね。

まりこ

そうですね。
でも、まあ、付き合う相手というのは、
日常の景色の割と大きな一部分を占めますからね。
今思い出してもあれは結構、切実な顔でした。
うんざりしたのね、着た切りスズメのガールフレンドに。

ハリネズミ店長

人間は大変ね。
それで、どうしたの?

まりこ

新しい服を買いに行きました。
とは言っても、また古着ですけど。

ハリネズミ店長

「ハマっちゃった」のね、古着というものに。

まりこ

そうなんです。
だって、なんというか‥‥。
世の中にでっかい顔して売られている
デザイナーズブランドの服より、
よっぽど「本物の服」らしく見えたんです。

ハリネズミ店長

へーえ。
本物ねえ。

まりこ

はい。
古着を前にすると、
作り手がその服に込めた気持ちみたいなものが、
現代の服より、ずっとダイレクトに伝わってくる気がしました。
なぜかはうまく言えないんですけどね。
そして、流行に関係ない、というところも素晴らしいと思った。
周りのみんなは、
「現代」作られている服を着ているわけでしょう?
そうなると、パンツやスカートの丈一つ取っても
だいたい似たような服を着ることになる。
でも古着を取り入れれば、
その時点の服装の流れから、
最初から大きくずれることができる。
そこも、古着を好きになった理由の一つです。
「着る」ことを遊びにしやすい。
古着を着まわしていると、ある意味、
毎日がコスチュームプレイになるんです。

ハリネズミ店長

なるほどねぇ。
まりこがどうしてこんなに古着が好きか、わかった気がするわ。
でもなんで、今日はそんな話になったの?

まりこ

ああ、そうでした。
今日ご紹介する古着のセーターたちを眺めていたら、
ついあの頃のことを思い出してしまって。
当時、外苑前にあった
「par Avion」という古着屋に初めて行った時、
ヨーロッパやアメリカから届いたカシミヤのセーターが
色とりどりに積み上げられていたんです。
もう、夢中になりました。
「カシミヤ」という素材と初めて出会ったのもその時で‥‥。

ハリネズミ店長

その話は長くなりそうね。
後で聞くから、今日の「おみやげ」を
紹介してしまいましょうよ。

まりこ

ああ、ごめんなさい。
そうしますね。

1枚目はまさにその、カシミヤのカーディガンです。
裾は短めで、ややタイトです。
ウエストをマークするボトムスと合わせるためでしょうね。
古着のカシミヤのセーターって、プリントされているものを
よく見かけるんですが、こんな柄はわたし、初めて見ました。
一面に敷き詰められたこれは、おそらく「ボタン」ですよね。
タグには「Dalton」というメーカー名が記されています。
古着のカーディガンを見ていると、
ある一定の確率で出会うメーカーで、
わたしもここのを一枚ですが、持っています。

ハリネズミ店長

どんなコーディネイトをするといいかしら?

まりこ

わたしならツイードのタイトスカートとか、
サブリナパンツに合わせたいです。
こういうカーディガンをワンピースに
合わせて羽織るのも大好き。

読者のかたから、小石柄かもとメールをいただきました。
イギリス人が好むモチーフだそうです。
(編集部注 2017.11.09追記)

ハリネズミ店長

この薄グレーのは、もしかして手編みかしら?

まりこ

そうなんです。
おどろくべき繊細さですよね。
こちらもカシミヤ100%。
編みもの本に「Frost Flowers」という名で載っている
昔ながらの柄を全面に使っています。
わたしが着て、袖は肘がすっぽり隠れる、6分か、7分丈。
セットインスリーブの、肩が深く入り込んだ袖のおかげで、
着ると体が立体的に、コンパクトに包まれます。
それがとてもいい気持ち。
あとね、これを着て、鏡に映った自分を見たら、
なんというか、「大事な人」に見えました。

ハリネズミ店長

ふふふ、おかしなことを言うわね。
でもこのセーターは、おそらく、大事にされるべき
「レディー」のために、入念に作られているのでしょうね。
本当に、きれいだものね。

まりこ

3枚目はスキーセーター。
写真では機械編みのようにも見えますが、これも手編みです。
いい色ですよね。
昭和のドラマに出てきそうでもあり、
でも、今の服のようでもあり。
生き生きした魅力があると思います。

小さめの襟ぐりを補うために、
肩線に「開き」が施されています。
ボタンではなくてジップだというところに
「当時のかっこよさ」を感じます。

身頃と袖は比較的細身ですが、腕を動かしやすいように
脇の下にリブ編みの「マチ」がはめ込まれています。

(つづきます)

2017-11-08 WED