生活のたのしみ展

かわいい老眼鏡の店 できました。 JINS✕ほぼ日

「ほぼ日」も創刊19年ですから、
当時20代だった乗組員もいまや40代。
50代以上のものもちらほらおりまして、
細かい字のパソコンやスマホを前に
「見えづらい‥‥」なんていう声が
聞こえるようになりました。
そうです、老眼です。
老の字が嫌だなんて言ってもしょうがない、
そういう人には「老眼鏡」が必要です。
でも‥‥探すとあんがい、ないんですよ、
リーズナブルで、かっこよくて、
じぶんに似合うオシャレな老眼鏡って。

おりしも第2回「生活のたのしみ展」に向けて
企画の真っ最中だった私たち。
ちょうどメガネ屋のJINSさんとの
縁がうまれたタイミングでもあり、
「老眼鏡、一緒につくってもらえませんか」
とお願いをしました。

結果‥‥ふふふ、できましたよ!
かわいい老眼鏡。
3つのフレーム、3つの色、3つの度数で、27種類です。
そして「生活のたのしみ展」に、
期間限定ショップをオープンすることになりました。
(ウェブサイトでも販売します。)

老眼なんてまだまだ先の話!
というかたも、よみものとして、おたのしみくださいね。

その
4
セルフレーム、3つのかたち。

「ぜひ一緒にやりましょう!」 7月初旬、飯田橋のJINS本社を訪れ、 田中仁社長をはじめとした精鋭メンバーに、 「老眼鏡の店をつくりたい」と相談をしたぼくらに対し、 田中さんたちの答えは明快でした。

△社長の田中仁さん

△商品企画の鈴木博明さん

△デザイナー、北垣内(きたがいと)康文さん

△マーケティング担当、柳原磨里さん

△営業担当マネジャー、筒井倫太郎さん

「次の『生活のたのしみ展』に、JINSとほぼ日で
老眼鏡の店を出す。とても、おもしろいですよ!
ぜひ実現させましょう。
それで、いつまでにつくればいいでしょうか」

11月半ばです、と答えるぼくらに、
一瞬顔を曇らせたJINSのみなさん。

「間に合わないかも‥‥」

えっ、そんなに?

「オリジナルのフレームをつくるのは、
とても時間が足りないんです。
やっぱりオリジナルがいいですよね?
だったらいっそ、次の次の『たのしみ展』に向けて
開発を考えても、いいのかもしれません‥‥」

ええっ、11月に間に合わないのか‥‥
思い立ったらすぐやりたい、という気分の「ほぼ日」。
ぼくらが「そりゃそうですよね」と、
やや肩を落としかけたそのとき、
糸井重里が言いました。

「そこまでゼロからオリジナルであることに
必死になる必要はないんじゃないかな?」

と。

「メガネって、伝統的に
人気のあるかたちというのが、あるわけですよね。
JINSさんも、それにのっとって、
『いまみんながほしい』と思うメガネをデザインし、
提案している。
そこから選んでアレンジすれば、いいんじゃないのかなあ」

もちろん定番といっても、
老眼鏡としての定番じゃなくて、
一般的な(近視の)メガネの定番です。
みんながふつうにかけている、かけたいと思うかたち。
それは、多少の流行はあれど、
昔から変わらないかたちがベースになっています。
もちろん世の中にはいろんなメガネ屋さんがあって、
なかにはかなり「攻めた」
ファッショナブルなデザインのものもあれば、
左右非対称、みたいなアートっぽいものもあります。
でもJINSさんが手がけてきたフレームは、基本、王道。
そしてそういう王道のフレームを使った
「かっこいい老眼鏡」が、世の中にあんまりない。
だからこそ、それをつくりたいと思ったわけなのです。

「なるほど! 定番のデザインをベースにするならば、
11月に間に合わせることは、じゅうぶんできますよ。
それでも、メタル(金属)フレームだと
製造に時間がかかりますから、
今回はセルフレームにしませんか」

さらなるミーティングのなかで、
いろんな意見が出ました。
そこに個性を足すとしたら、フレームの色かな?
老眼鏡は長くかけるメガネじゃないから
ちょっと目立つくらいでもいいと思う。
でも、いっぽうで、ベーシックで安心できる色も、
忘れずに入れておきたいよね。
そんなふうに、話はかたまっていきました。

ちなみに「セルフレーム」というのは
「セルロイドフレーム」の略語ですが、
それはむかしセルロイドが一般的だった時代の名残で、
いまは同じプラスチック系でも、
アセテート樹脂が主流だそうです。
加工が難しかったセルロイドに比べて、
アセテートが使われるようになったことで、
メガネのデザインがより自由に、カラフルに、
たのしいものになりました。

度数は3段階で大丈夫!

ちょっと話を切り替えて、「度数」のお話を。

左右のバランスがまちまちな「近視」と違い、
老眼の場合は、左右ほぼ同時に進行します。
そして、一般的には、3種類くらいの度数で、
ほとんどの老眼の人の目に合う老眼鏡が、まかなえます。
度数で言いますと、

「+1.00」
「+1.50」
「+2.00」

この3種類です。
ちなみにJINSさんではさらに強めの
「+2.50」もありますが、
基本、この3段階で大丈夫だそうです。

そして、レンズつきで売られている老眼鏡は、
左右とも同じ度数。
もちろん左右の目で老眼の進行が異なる人もいますが、
そういう人はちゃんと検眼をしてオリジナルの老眼鏡を
つくることをおすすめしているとのこと。
でも、まずたいていの人は、この3段階でOK。
その経験とデータにもとづいて、
今回、「ほぼ日」とJINSさんでつくる老眼鏡も、
この3度数、左右同じ度数でつくることにしました。

「レンズは最初から嵌めておいて、
交換ができない方式にしたほうが、
生産の工程上も、
また、気軽に買う老眼鏡というテーマ的にも
いいと思います。
そのかわり、フレームのバリエーションを
『選ぶのがたのしい』数にしたいですよね」

そうなんです!
メガネ歴が長いぼくでも、
近視のメガネのとき、
膨大な数のフレームからお気に入りの1本をえらぶのは、
楽しいけれど、ちょっとだけパワーの要る仕事です。
けっこうがんばって、粘って、迷って、
一日おいてからまた試しに行って‥‥なんてことまでする。
でも老眼鏡に関しては、さっと選んでさっと買いたいです。

3つのフレームに絞った。

ここで話が戻って、セルフレームの定番のかたちについて
JINSさんから提案がありました。

「ここは思い切って、
ボストン、ウエリントン、ラウンド、
この3種類に絞りたいと思います」

逆さ台形(角丸)のウエリントン、
逆さ三角形(角丸)のボストン、
角がない丸メガネの、ラウンド──。

なるほど、と思いました。
たしかにこの3つは、メガネを選ぶときに
必ずと言っていいほど、候補にのぼるかたちです。
(ぼくも、それぞれ購入した経験があります。)

もちろんほかにも、セルフレームには
四角いスクエア、楕円形のオーバル、
つり目っぽいフォックスなど。
いろいろなかたちがありますけれど、
ボストン、ウエリントン、ラウンドは、
「あんまり顔の形を選ばない」という点で
よりスタンダードだと感じます。

「そして、それぞれのフレームを、
3色ずつ用意したいと考えています。
ひとつはベーシック、
ひとつはちょっと遊びを入れて、
もうひとつは、思い切った感じで。
それぞれのフレームごとに、考えてみますよ」

そんな話でミーティングがまとまり、
ぼくらはJINS本社をあとにしました。
こまかなやりとりは省略して、
次回は一気に「サンプル制作」まで進みます。

それにしてもJINSさん、ものすごく、話が早いなあ。

(つづきます)

2017-10-30 MON