生活のたのしみ展

かわいい老眼鏡の店 できました。 JINS✕ほぼ日

「ほぼ日」も創刊19年ですから、
当時20代だった乗組員もいまや40代。
50代以上のものもちらほらおりまして、
細かい字のパソコンやスマホを前に
「見えづらい‥‥」なんていう声が
聞こえるようになりました。
そうです、老眼です。
老の字が嫌だなんて言ってもしょうがない、
そういう人には「老眼鏡」が必要です。
でも‥‥探すとあんがい、ないんですよ、
リーズナブルで、かっこよくて、
じぶんに似合うオシャレな老眼鏡って。

おりしも第2回「生活のたのしみ展」に向けて
企画の真っ最中だった私たち。
ちょうどメガネ屋のJINSさんとの
縁がうまれたタイミングでもあり、
「老眼鏡、一緒につくってもらえませんか」
とお願いをしました。

結果‥‥ふふふ、できましたよ!
かわいい老眼鏡。
3つのフレーム、3つの色、3つの度数で、27種類です。
そして「生活のたのしみ展」に、
期間限定ショップをオープンすることになりました。
(ウェブサイトでも販売します。)

老眼なんてまだまだ先の話!
というかたも、よみものとして、おたのしみくださいね。

その
1
「老」なんて言わないで。

小学校低学年で両目とも1.5あった視力が
小学校3~4年生あたりで急激に低下、
5年生で近視のメガネをかけるようになり、
それ以来、年々、度がすすみ、
裸眼ではどうしようもないので
51歳のいまは右目がマイナス7、左目がマイナス6の
コンタクトレンズかメガネを使っています。
申し遅れました、「ほぼ日」武井義明です。

この「右目がマイナス7、左目がマイナス6」
という数値ですが、
これでも「度が弱め」なんです。
例えば映画の字幕はこれだと読み取りづらいし、
駅や空港の小さな文字の案内板が見えづらくて、
けっこう、困ります。
ほんとはもっと度を強くして、ハッキリ世界を見たい。
‥‥見たいんですけれど、そうするとこんどは
パソコン仕事やメモをするとき、近くが見えにくいので、
ちょっと弱めに設定しているんです。

この症状‥‥そうなのです。
「老眼がやって来た!」のです。

じつは、遠くを見るときのための
「強めの度数のコンタクトレンズ」も持っています。
というか、もともとは、それをつけていました。
でもそうするといまや、切符の文字だとか、
スマホの画面とか、文庫本とか、見えなくなった。
だからそのコンタクトで近くを見たいときは
コンタクトの上から「かるーい、老眼鏡」をかけます。

コンタクト+老眼鏡。
ややこしいでしょ。

では弱いほうのコンタクトで
遠くをハッキリ見たいときはどうするかというと、
弱めのコンタクトの上に、
「よわーい、近視のメガネ」をかけます。

コンタクト+近視のメガネ。
ああ、どちらにせよ、ややこしい。
ややこしいんですけど、仕方がない。

どちらのペアにも一長一短があるので、
海外旅行に行くときはさんざん迷って、
「全部持ってく!」ことになります。
つまり──、

・弱めのコンタクトのセット
・その上からかける弱めの近視のメガネ
・強めのコンタクトのセット
・その上からかける弱めの老眼鏡
・コンタクトを外したとき用のメガネ
(度数は弱めのコンタクトレンズと同じくらい)
・サングラス

ああ面倒。荷物増えるったらない。
けれどもぼくはそんなふうにして、自分の目に関して、
「なんとか折り合いをつけている」人生なのです。

老眼、‥‥来たかも?

話を戻しまして、老眼になったのかも?!
と認識したのは、40代なかばのある日のことでした。
個展の案内のハガキの地図が、
夕暮れ時の路上で、さっぱり見えなかったのです。
たしかに暗めではありましたが、
いつもだったら見えないはずのない明るさでした。
だって同行した同い年の同僚は「見えますよ!」と言う。
でもぼくは、どう目を凝らしても見えないのです。
ハガキを遠ざけるとちょっとはっきりするんだけれど、
こんどは字が小さくなって判読できない。

ああ、来たか、これか! これが老眼か!
と思いました。
調べてみると、老眼の「症状」はこんな感じ。

●薄暗いところで文字が読み取りづらい
●スマホなどを遠ざけて見る
●今まで読めていたはずのものが読みづらくなる
●すぐにピントが合わない
●パソコンを見たあと、目が疲れやすくなった
●肩こり、頭痛が治りづらい

‥‥ああ、どれもこれも、あてはまります。
老眼というのは、加齢によってピントを合わせる力が
弱くなったためにおこる症状。
40代も後半になればそれが出てくるのも当然です。

しかし、当時のぼくは、それを
「なかったこと」にしました。

なぜなら「老」という字を拒否していたから。

「加齢に伴う身体の不具合」は認めましょう。
でもそれを「老」と言われるのは、ちょっと嫌でした。
そうだ、これはきっと、軽い風邪を引いたようなもので、
そのうちまたクリアに見えるようになるんじゃないか?
などとごまかして、
しばらくそのまま「なかったこと」にして、
過ごしていこうと決めたのでした。

しかし、そんな誤魔化し、長くはつづきません。
そりゃそうですよね、日々、年は取っていくわけで、
老眼も、進んでいくわけで。

しかもその当時はまだ
「コンタクトの度を弱くすれば、まだ近くは見える」
ということに気付いていません。
強めのコンタクトのまま、
近くが見えるようになる
手だてはないものかと考えての結論はただひとつ、
「老眼鏡」をつくる、ということでした。

ああ‥‥、老眼鏡かい!

メガネ屋に行きました。

ぼくはメガネ歴が長いですから、
メガネ屋に行くことじたいは、慣れています。
ずっとメガネに縁がなかった人だと、
「老眼鏡」が要りようになったとき、
すごーく困っちゃうんだそうですね。
というのも「どうすればいいのかわからない」から。

目医者に行くべきなのか、メガネ屋でいいのか。
メガネ屋にしても、いろいろあるし。
それとも大きな書店とか雑貨屋で売っている、
安めのアレでいいのか。
つくるにしても、検眼が必要なのか、
すぐ出来るのか、そもそもいくらかかるのか。
だいたいメガネって似合うのか?
──そんな不安だらけなんだそうです。

メガネ屋慣れしているぼくには、
「こうありたい、メガネをかけた自分像」があります。
それはファッションアイテムのひとつでもあるし
(そうじゃない人もいると思いますけれど)、
医療機器の側面もあるわけなので、
安いより高いほうがいいだろうという単純な考えで、
年齢が高くなるにつれて
「それなり」のフレームとレンズを買うようになりました。

レンズは、近視の度が強いので、いちばん薄くなるレンズ。
フレームは、わりと名の知れた店のものです。

東京で、これまで訪ねたことがあるのは、
白山眼鏡店、リュネット・ジュラ、blinc、
オリバーピープルズ、クレイドル、
フォーナインズ、グローブスペックス‥‥、
そんな「わりと新しめの、有名店」です。
老舗や、格安店はあんまり使っていなかった。
メガネはどちらかというと「好き」なので、
いまも散歩の途中にお店をふらりと訪れたり、
フレームだけを衝動買いすることもあります。
というのも、ファッションブランドが
フレームをつくったりしているので、
服を見に行ったついでに買っちゃったりもします。

さて、そんなぼくが、老眼鏡をつくることになった。
どうすべきか?
考えました。
度の入ったレンズを入れていないオシャレメガネもあるから
それに老眼のレンズを入れたらどうかなあ。
でもなあ、ちょっともったいない気もするなあ。
でも最初からつくったら高いよなあ。
出来合いのものは、ちょっとダサかったりするよなあ。

どうすればいいんだろう?
それからしばらく、決断できないままに
ぼくは悩むことになるのでした。

(つづきます)

2017-10-25 WED