第17回 歌声喫茶……なんなんだ?
当時は、なぜか、
マイルス・デイビスという神がいて、
「ジャズをきかなければいけない」
という強迫観念がありましたね。
新宿ピットインにならんで
演奏をきいたり‥‥
ヒマだったから、いけちゃうんですよね。
昼の部が、ニュージャズだった。
そうそう。昼間は客が6人ぐらいで、
バンドのほうが多かった。
たぶん、ニアミスしていますね。
前衛映画みたいなのを上映したあとに、
急にニュージャズが出てきて‥‥。
ただ、同時に、まだまだ
ロシア民謡をうたうような店も
ありましたよね。
あった、あった。
歌声喫茶、ありました。
童貞処女があつまる場所で‥‥
と、バカにしていたけど、
まぁ、ぼくも当時、童貞でしたけどね。
(笑)
歌声喫茶は、「え、まだあったの?」
というようなときまでありましたよね。
キャバクラのはしりと言われていた
「ゴンドラ」という店も
いってみると、ほとんど歌声喫茶だった‥‥
文明がまじりあうときって、
汽水域みたいになりますよねぇ。
うん。へんなものどうしが、つながる。
うん。
歌声喫茶‥‥アレは不思議でしたねぇ。

ピアノがあって、
「リーダー」ってのがひとりいて。

いきなり、本を渡されて。

「エー、それじゃ、
 38ページ、カチューシャいきます」

で、歌うの。

‥‥コレ、なにがおもしろいんだと。
(笑)
それが、大盛況でね。
当時の大学卒は、全体の
15%くらいだったらしいんですよ。
あとの85%は、高校を卒業したら
ほかのところで
仕事したりなんかしてたんですよね。

全共闘だ、ビートルズの世代だ、
とよく言われますけど、
じつはティピカルなところを
とらえているだけのもので‥‥。
学生運動は、
15%の中の、また微々たるものですよねぇ。
乱暴に動けば目立つ、
ということにすぎないんでしょうね。
うん。
全共闘世代っていうけど、
なんら、影響、受けてないもん。
やってたヤツ、知りあいにいないし。

まぁ、
ぜんぜんちがう伝わりかたをするのが
歴史だといえば、それまでなんですけど、
おかしいものは、おかしいよなぁ。
どこかで
歴史が改竄されながら書き換えられてきた。
学生運動を、やっていなかった人が
ほとんどなんですよね。
そのことを、言いたくなるんです。
年始に、日本史の番組をやるんです。
‥‥あ、そうか。
去年も、ここで、昭和史がおかしい、
ということを話していたから、
知らないうちに、
目標を、ひとつ達成していたんだよ!

最近、日本史の教科書も変わっているんです。
まずは、鎌倉幕府は1192年ではないらしいんです。
頼朝の権力機構は征夷大将軍に任命されるよりも
前からあった、という説が有力なので。

「いい国(1192年)つくろう鎌倉幕府」って、
オレのときは習ったんだけどね。
今は、いい国‥‥つくらないみたいで。

聖徳太子という名前も、
今の教科書では、後世につけられた尊称なので、
ということで、「厩戸王」と記されていたり。
へぇー。
ソ連の機密文書を読んでみると、
日本で教わっている歴史とは、どうも、
まるでちがう日本史が見えてきたりするみたいで。
明日に、続きます
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2007-01-16-TUE

(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN