ジャパネットたかたの創業者である髙田明さんと、
糸井重里が対談することになりました。

生まれた年も日も近いふたりが、
「ものを売ること」「伝えること」について、
それぞれの考えを語り合います。

自分の売りになることは何か? 

アイデアを出すにはどうすればいいのか?

失敗を乗り越えるには?

決して「うまいことを言わない」、
ベーシックでぶれないヒントに満ちた全10回です。

※この記事は日経MJ2017年8月7日号のために
収録された対談を、ほぼ日が編集し、掲載するものです。

糸井
さきほどもちょっと話に出ましたが、
社長という立場の人たちはアイデアマンだし、
自分のアイデアをビジネスにして実現させる機会が
人より多いです。
「コツはあるんですか?」と
問われることも多いですが、
そんなコツはありませんよね。

そのかわり、
死ぬほど考えないとだめなことが、
ほんとうにあるのだ、と思っています。
「考えました」と言う人は、
たいてい、死ぬほどは考えていません。

そのことをなんだかいまさら、
言いたくなってきています。

髙田
うん、そうですね。
糸井
ビジネスのコツにたどり着いている人が、
もしもいたとしても、
コツの「前」の段階があるわけです。
それはたぶん、
「俺は死ぬほど考えた自信がある」

というところまで考えた人が、
その1回だけ、必ず
「死ぬほど考えたこと」が役に立つ、
ということだと思うんです。

だから、コツはわからないほうがいいかもしれません。
ぼくらは局面局面で、
鉄砲を持った人に追われた
ウサギみたいなものなんでしょうね。

逃げないと、今日一日だって生き延びられない。

そのくらいに考えないとダメなんです。

弱いがゆえに、考えるのです。

いま、平気な顔してこんなこと言ってますけど、
ぼくもいちいち一所懸命考えたんです。
髙田
そのことも、糸井さんとぼくは
おそらく共通していると思います。

ちょっと表現が違うんですが──、

ぼくはこれまで、伝える仕事をしてきました。

伝えるということのなかには、
「伝えたこと」と、「伝わったこと」があります。

そのふたつは違います。

糸井
こちらが伝えたことと、
向こうに伝わったこと‥‥ですね。
髙田
そうです。

結局、言えることは、
本気になっているかどうかです。

いちばん陥りがちなのは、
「伝えたつもり」になることです。

つもりになっている人は、
本気度が足らないのです。

ぼくがなぜそれを言うかというと、
正直に言いまして、ぼくには、
ものが売れない時期があったからです。
「なんで売れないんだろう?」

毎日毎日、そう思っていました。

ぼくの伝えたことは、
お客さんに伝わっていなかった。

ぼくはただ、
「伝えたつもり」になっていたんです。
そこから何度も、
10回でも、20回でも、
伝え方を変えていきました。

それがぼくの30年の経験です。
「伝えたつもり」がいちばん恐い。

それは、糸井さんがおっしゃったことと同じで、
死ぬほど本気で考えているところがないと、
伝わらないのです。
「伝えること」は、
自分の人間性を磨いていかないと
できないと思います。

本気になることだけが、
その人を磨いていくのかもしれません。
人の成長もそうですね。

「がんばってます」なんて言ったってだめですよ。

がんばってる「つもり」になってたら、
そのまま10年、20年経ってしまう。

そういう人は成長しません。
糸井
よくわかります。

とはいえ「本気」であることと「重い」ことは
かならずしもイコールではありませんね。

軽やかに笑ってようが、何してようが、
死ぬほど考えて本気である、
という状況はあると思います。

髙田
それはそうでしょうね。

私たちも表現として、
軽いことはいくらでもあります。

だけど、本気になっていないことは、いけません。
本気になっていないことって、
自分にもまわりにも、意外とあるものなんですよ。

けれども、本気で考えれば、
必ず結果を出せると思います。
社員に「本気になってますか?」と問うと、
意外と「なってる」ってみんな言うんだけど(笑)、
もしかしたらなってないかもしれないんです。

がんばってるつもりで、がんばってない。
いま、政治の世界でも、
「なんで?」というようなことが起こってるのは、
やっぱり政治家のみなさんが、
本気でその問題を考えたか、というところを
問われているんだと思います。
糸井
そのあたりの考え方も、髙田さんとぼくが
似ているということがわかりました。

楽天的だったのがちょっと意外だったけど(笑)、

でもまぁそれは、
成功するまでやり続けている、
ということですもんね。

おもしろかったなぁ。
髙田
最高の時間でした。

今日はありがとうございました。
糸井
こちらこそ、ありがとうございました。

いつもはどちらにいらっしゃるんですか。
髙田
佐世保なんです。

佐世保を基点に、いつも動いてるんですよ。

またお会いできたら。
糸井
ぜひ、ぜひ。

ありがとうございました。

(おしまいです。
ありがとうございました)

2017-08-26-SAT