その2 『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』
『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』
という本があります。
ワインのガイドブック‥‥ではなく、
ワインを楽しむための、
知識ではない体験的レッスンをまとめた、
320ページにもなる大著です。


▲ポプラ社刊。Amazonはこちらです。

この本を執筆しているのは、
ワイン&食文化研究家であり
翻訳家でもある岡元麻理恵さんと、
作家の三浦しをんさん。
三浦さんは小説『まほろ駅前』シリーズや、
『風が強く吹いている』、
『舟を編む』などで知られる直木賞作家です。

そして三浦さんは、プライベートなお顔として、
けっこうな「大酒飲み」の一面がある‥‥というのは、
三浦さんファンのあいだでは、かなり有名な話。
お酒は酔っぱらえればOK、
ワインも銘柄だの年代などはどうでもよろしい、
ややこしいことはわからん!
‥‥と思ってきたという三浦さんが、
あらためて岡元麻理恵さんのもとで
ワインを(もちろん楽しく飲みながら)学んだようすが、
『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』
という本にまとめられています。

この本は、ソムリエ試験を突破するための
専門的なデータベースではなく、
マニアックで難解な解説書でもありません。
三浦さんのエッセイを読んでいるうちに、
おいしいワインを飲むためのヒントが
どんどん理解できちゃうという
(しかも、飲みたくなっちゃうという)本。
まさしく「知識系じゃないワイン好き」のための福音書!

わたしくごとですが、
ぼく(武井)は、ワインが好きだと言いながら、
なかなか知識が蓄積していかないタイプです。
ぶどうの品種も産地も、年代も作り手のことも、
いちおうは「ふんふん」なんて読むのですが
(よくいるタイプですよね)、
たいてい、アルコールの分解とともに
きれいさっぱり消えていってしまいます。
だからレストランでワインリストを渡されると、
いつもあたふた。
それがこの本と出会って、ずいぶん気がラクになりました。
だって、お酒って、飲む目的はあくまでも
「仲間といっしょに、おいしくたのしく酔っぱらうこと」。
むずかしいお勉強を、無理してする必要はない!
(したい人は、したらいい!)
そんなふうに思い直すことができたのでした。

この本を、前回登場した
「ほぼ日」西本に紹介したところ、
すぐに食いつきました。

「『風が強く吹いている』の三浦しをんさんですか?!
 マジですか! 俺のバイブルですよ?
 ていうか俺は小説って三浦しをんさんしか読みませんよ?
 それも、飛行機での移動とかで、
 時間がたっぷり使えるときのための楽しみとして
 とってあるんです。
 『風が強く吹いている』に影響されて、
 じぶんのランニング・チームに
 小説に登場する架空の大学“寛政大学”の名前を
 つけちゃったくらいです!!」

わ、ずうずうしい。でもそのチーム、
いまや30人くらいの規模になり、
日本のあちこちの市民大会で
入賞したりしているのだとか。

三浦さんのエッセイは、まだ読んだことがなかった、
という西本は、あんのじょう、
『黄金の丘で君と転げまわりたいのだ』に嵌まりました。
彼もまた、知識がなかなか蓄えられないタイプですが、
「いろいろわかって、よかった。
 ワインの本は、もう、一生、この1冊でいい」
とまで言いました。

そしてこの本のなかには「グラス」の章があります。
詳しいことはぜひ本を読んでいただきたいのですが、
かなりはしょって言うならば、
「紙コップで飲むんじゃ、
 せっかくのおいしさが台無し!」
というようなことが書かれています。
ワインはできればワイングラスで飲んだほうがいい! と。
‥‥そんな三浦しをんさんであれば、
きっと高橋禎彦さんのつくるものを、
ちゃんと理解してくださるはずです。
ぜひ三浦さんに、高橋さんの「ワインのコップ」づくりに
参加‥‥というか、アドバイザーとして
協力していただこうよ! と提案しました。
ふたりが会ったら、
「ワインにぴったりのコップ」をつくる“ヒント”が
きっと生まれるにちがいない! と。


▲「ワインを飲む器」の章。

ぼくらにとって、まったく面識がない三浦さんでしたが、
つてをたどってお願いをしたところ、
この依頼をこころよく受けてくださいました。
「いくらなんでも、おこがましすぎる! うれしすぎる!」
と興奮していた西本は、
せっかくの高橋工房に御一緒する日、
急な大阪出張が入ることに‥‥!

もちろん西本抜きで、行きましたとも。

(つづきます!)
2014-03-11-TUE
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