第7回 食事抜きダイエットが失敗する理由。

糸井 つまり肥満に対抗するためには、
徹底的に「NEATを高める」ということが
重要になってくるんですね。
高橋 はい、とっても大事なことです。

でも、1年に1キロ増であっても
それを30年続けてしまえば、プラス30キロ。

内臓に20キロもの脂肪が溜まっているという
危機的な状況ですから、
これに対処するにはダイエットしかありません。
糸井 座って一生懸命考えてるだけじゃ、もうダメ。
高橋 まだ狩猟採取の生活をしていたころには
エサの獲れない「飢餓の期間」が
意図せざるダイエットとなっていたわけです。
糸井 そこで蓄積した脂肪を燃やしていた、と。
高橋 ここでもうひとつ、大事なことなんですが‥‥
その飢餓状態を生き延びようとするときに、
われわれは、どうするか。
糸井 どう‥‥というと?
高橋 外からエネルギーが入ってこないのだから、
生体としては、代謝を下げるしかない。
糸井 なるほど。
高橋 つまり、いままでは
キャッキャッキャッキャッやったり、
頭をいろいろ使っていたけど、
そういうことをしないようにするんです、
脳が。
糸井 つまり、なるべく動かないで、ぼんやりする。
高橋 そう。

糸井

つまらないですねぇ。

高橋 よけいなことは一切せずに、
エサが獲れるまでじっとしているというのが
まっとうな生存戦略となる。
糸井 さっきの話で言うと
「NEATを低下させる必要がある」と。
高橋 そうそう、まさにそう。
でね、エサを食べなけりゃ、腹が減りますね。
糸井 はい、減ります。
高橋 でも、腹が減るのもさることながら、
じつは、それよりも重要なことがあるんです。
糸井 それは‥‥。
高橋 必須アミノ酸の欠乏です。

つまり、9種類の必須アミノ酸は
体内で生成できないから
エサ、具体的にはタンパク質を食べないかぎり、
得ることができないんです。
糸井 ええ、そうでした。
高橋 われわれは、
必須アミノ酸がなくなると死んでしまいます。

だから、外からエサが入ってこない場合、
脳の指令としては、
疲労感や倦怠感、脱力感などを感じさせて
筋肉などの末梢組織が
はたらかないようにする。

つまり、エサがないという状況下においては、
キャピキャピ動き回ったり、
いろいろ考えたりさせなくして
「NEATを低下させる」という生存戦略は、
脳として当然のチョイスなんです。
糸井 少しでもムダ遣いを減らすべく。
高橋 ここに、食事抜きダイエットの最大の問題が
はらまれているんです。

つまり、必須アミノ酸の欠乏にともなう
疲労感、倦怠感、脱力感などによって
「なんでわたし、
 こんなことになってるんだろう」
という、
なんと言うか‥‥「割の合わない感じ」を
覚えてしまうんですよね。
糸井 つまり、それが
ダイエットの続かない理由でもあると‥‥?
高橋 そうとも言えるでしょうね。
糸井 ‥‥そうだったのかぁ!
高橋 あのね、ぼくは味の素で健康食品をつくるという
仕事をしていますもので、
太ってもまずいし、眠れなくてもまずい‥‥。
糸井 そうですよね、見本ですものね。
高橋 血圧が高くてもまずいし、
いつでも、元気そうにしてないとまずい‥‥。
糸井 先生もタイヘンですねぇ(笑)。
高橋 でも以前は、おそらく6〜7キロくらい、
内臓脂肪がついてたんですよ。
糸井 まずいじゃないですか!(笑)
高橋 でも、単に食事を抜くというダイエットでは、
いまご説明した
「必須アミノ酸が欠乏する」という理由から、
なかなか、うまくいかないおそれがある。
糸井 ええ‥‥どうしたんですか。
高橋 昼ごはんというのは、
しっかり食べたら「800キロカロリー」くらいは
あるでしょう。

内臓脂肪6〜7キロっていうと、
70日から80日、
昼ごはんを抜くとなくなる計算なんですが、
単に食事を抜いちゃうだけでは、
代謝は下がっちゃうし、
倦怠感は感じるしで、よろしくない。
糸井 ‥‥はい。
高橋 そこで、たまたま、わたしたち味の素に
「アミノバイタルプロ」という
必須アミノ酸をミックスした健康食品があったんで、
それを飲むことにしたんです。
糸井 あの、もともとは競走馬に食わせてたという‥‥。
高橋 そう、昼ごはんの代わりに。
糸井 ああ‥‥そうか!
高橋 つまり、必須アミノ酸が欠乏することなく、
昼ごはんをカットして、カロリーを制限できる。

そうやって、6〜7キロの内臓脂肪を、
3ヶ月くらいで減らしたんです。
糸井 へぇー‥‥。
高橋 で、6〜7キロあった内臓脂肪がなくなれば、
減量はおしまい、ということですから
昼の800キロカロリー、
その気になれば
夕ごはんに、そっくり持っていけるんですよ。
糸井 ええ、その気になれば、なるほど。
高橋 そうすると、まぁ、味の素の同僚と
「まあ、今夜はちょっとワインでも飲もうか」
なぁんて言ってみたり‥‥。
糸井 いいですねぇ(笑)。
高橋 夕ごはんに「800キロカロリーの貯金」が
あるっていうのはですね、
なかなかの価値が、ありましてですね‥‥。
糸井 わかりますっ!
高橋 はははははは(笑)。
糸井 だって「カツ丼ひとつぶん」じゃないですか。
高橋 それもね、美味しいお店かなんかに行って
800キロカロリーよぶんにOKって、
同じ800キロカロリーでも
なんか、オトクな気分がしますでしょう(笑)。
糸井 いや、それは「楽しみ」になりますよね。
高橋 だから、ハチマキをしめてね、
まなじりを決して「食わずにやれ!」って
言われてたら、
絶対できなかったと思うんです。
糸井 つまり、やっぱり「脅迫」じゃダメだと。
高橋 もちろん、厳しい食事制限をやりきれる人が
世の中にいるのは重々認めますけども、
まあ、ぼくらみたいな凡人には、なかなか‥‥。
糸井 できませんよ。
高橋 できません。アミノ酸が足りてなきゃ。
糸井 でも、そうか‥‥そうか。

いま、先生から聞いた「アミノ酸のお話」で、
なんかぜんぶ、わかった気がしました。
高橋 そうですか。
糸井 ええ。
  <つづきます>
2010-10-18-MON