ほぼ日 片山勝三さんが次のお仕事に向かわれましたが、
残った3人のみなさんは、偶然
同じ学校出身でいらっしゃるんですね。
今知りました。
ボーズ うん。桑沢デザイン研究所
安斎さんはグラフィック、
僕がインテリアで、アニがドレスデザインです。
安斎 アニくんは、洋服やってたんですね。
ボーズ それで今、これ。

アニ キラリと光るものあります。
安斎 なんでいちばん遠くなっちゃってるのさ?
アニ だいたいそういうもんじゃないですか、
極めると。

一同
ボーズ 当時は課題が
たいへんじゃなかったですか?
安斎 球体100個とか、描いた?
ボーズ 球体はなかったですが、
僕がいちばんたいへんだったのは、
木のハンドスカルプチャーで、
彫刻みたいなやつを
ツルツルに仕上げなきゃいけない課題です。
最初にエスキースみたいなのを、
100個ぐらい描いて、
先生が選んで、それを木で削り出して
きれいにツルツルにする。
安斎 それで、最後にラッカーかなんかで
塗るやつだね?
あれは、ピッカピッカに
しなきゃいけないんだよね。
ボーズ 「これ、いつまで
 削んなきゃいけないんだ?」
って、朦朧としましたよ。
安斎 1mmに線10本描くやつ、やった?
ああいうの、楽しかったけどな。
ボーズ やった(笑)。
あと、1mm間隔で12本の線を描くやつも。
安斎 やったやった(笑)。
あれは、きっちりやらないとダメなんだよね。
ボーズ 「はい、だめ〜」
「いくらやってもだめ〜」
厳しかったなあ。
でも、確かに技術は上がるんです。
安斎 上がる、上がる。圧倒的に。
まずは人間が細かくなるよね。
俺は桑沢でいちばん最初に
課題で徹夜した奴らしいよ。
1週間ぐらい徹夜した。
ボーズ そんなに?
アニ 俺も、徹夜はけっこうしたな。
ほぼ日 1週間徹夜、って
人間は、できるんですね。
安斎 最後は意識がなくなってて
かなり、やばかったです(笑)。
課題を平塗りしてて、
すっごいカリカリカリカリする音で
気がついたの。
「なにカリカリしてるんだろう?」って思ったら、
持ってる筆が乾いてて、
せっかく塗ったポスターカラーを
逆に剥がしてたんだ。
ボーズ あっぶねぇ。
安斎 だからそこで、
俺はたぶん、
時間がめちゃめちゃに
なったんだと思う。
で、破壊されたと思う。

ボーズ 俺もめちゃめちゃになりました(笑)。
あそこではじめて
徹夜をいっぱいしたからね。
安斎さんのように
その後デザイン事務所とかに入ると、
もう戻りようがないですね。
安斎 就職して、師匠が飲みに行くのに
朝までつきあうことがよくありました。
次の日、師匠は午後出てくりゃいいけど、
こっちは早く出社しないといけない。
そうなったら、アニくんの
「とりあえず机で寝れる!」の境地に達する。
あとは「コーヒーで起きなきゃ」って
1日何回もコーヒー飲んでた。
ほぼ日 独立されてからは、
自分で眠りをコントロールできるから、
楽になりましたか。
安斎 うん。その頃は、睡眠時間は
3時間とか4時間でした。
今はそんなんじゃ無理だから、
5時間は寝てる。
ほぼ日 それでも短いほうですね。
安斎 最近は朝早く目が覚めちゃう。
時計見て5時ぐらいだったりすると
「あ、やっべえ。
 こんな時間から起きてるのは、
 年寄りだと思われる」
と、寝たフリします。
ほぼ日 安斎さんは、今年で?
安斎 53歳。えらいことです。
ボーズ でも、変わんないですね。
偉くならない感じですよね、安斎さんって。
安斎 だって偉くないもん(笑)。
ボーズ なんで偉くならないんですか。
安斎 ずーっと怒られてるんだもん。
ボーズ 不思議です。
偉いはずなのに偉くならない。
ほぼ日 えーっと、‥‥アニさん?
アニさん、大丈夫ですか?
アニ (とてもはっきりした声ですばやく)
大丈夫ですよ。
ほぼ日 (寝てるのかと思った)
ボーズ アニはよく「大丈夫ですか?」って
人に訊かれてるね(笑)。
アニ うん。
ボーズ 「アニさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫」
「だいぶ、しゃべってなかったですけど」
アニ 不安を与えないようにいつも
「ウン、ウン」と、相づちを打ってます。
ボーズ 強めにね。

アニ 「そのとおり!」
「ああ、言われちゃった。
 俺、言おうと思ったのに!」
は、軽く意識が戻ったときに
よく言うセリフです。
安斎 寝る人って、
こうやって平等に座っているようでも
肘ついて、体を安定させてるね。
アニ 固定させてます。
ぜったい動かない、動かない。
一同 爆笑

ボーズ 最初っから、あんまり
人が通らないポジションに座るね。
場所を見つけるのがいつもうまい。
(つづきます)



2007-12-25-TUE


(C)HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN