STUDENT
大学入試の
センター試験をやってみた。
新聞にあんなに大きなスペースをとっている以上、
大事な記事なんだろうなぁと思って、問題をながめて。
そして、ついつい、答案用紙に向かってしまったのだった。

いまのこの時代に、暗記力がものを言うような試験は、
ナンセンスなのではないか?
必要な知識は、友人が持っているかもしれないし、
どこかに「共有の資産」としてプールされているだろうに。
辞書もインターネットの端末も、電話ももちこんで、
試験をやってみたほうが、
受験生のほんとうの実力がわかるんじゃないか?
だって、社会人になったら、
そういうことばっかりなんだもーん、と、考えたわけだ。

節度あるカンニングをしたら、
「ほぼ日」スタッフは、何点ぐらいとれるのだろう。
東大の3年生のベイちゃんは、
いま、受験生の時と同じ条件でテストを受けたら、
何点くらいとるものなんだろう?

こういう素朴な、というよりは粗雑な疑問をもとにして、
仕事の合間に、問題を解きはじめた。

「できね~~~~~~っ!」
おっと、結論を先に言っちまったい。

センター試験で遊ぶことにしました。

さて、我々が作ったルールは、
東大3年生のナイスガイであるベイちゃんと、
「ほぼ日」のその他スタッフの対抗戦。
ベイちゃんは、制限時間内で、
東大を受けた時と同じ科目の問題を解いてもらいます。
そして、その他陣営はといえば、
カンニングありの時間無制限です。
ただし、カンニングはインターネットに限るというルール。
メールと電話とファックスは禁止にしました。

ベイちゃんが選択したのは、以下の科目。
国語
英語
数I
数II
化学
日本史

そして、その他陣営は、( )内の理由で、
以下の科目を選びました。
国語(わしら大人だし、大丈夫だろ。必須っぽいしね)
英語(そういう時代でしょう。これも必須だろ?)
日本史(お馴染みなかんじがするから大丈夫だろう)
生物(darlingさんがパラサイト・イヴも読んでるし)

始めるにあたって、
ベイちゃんはいたってクールに、
試験時間などを、WEBでチェック。

対する『その他陣営』は、
「アボガドロ定数ってのは、化学だろ?
だって、あのハゲの中沢が黒板ガンガン叩いて
『ここは、出ます、これぁ出ますよ』
とか言ったの覚えてるもん」と
darlingさんが、高校時代の断片的な記憶を自慢。
ハゲの中沢って、誰なんだよ??
おまけに、
「これは天眼鏡がいるくらい、字がちいさいなあ、もう」と、
答案用紙に文句をつける。
セイヒロ~さんは、くら~い目をして、
答案用紙を睨み付け、
現在オバカな、もぎカエル部長は、
「あたし英語は満点だったよ、当時。
だって、いちおう頭よかったもん」と
昔とった杵柄をひけらかし、
モモンガ=日活くんは、
問題がのっている部分の新聞をコピーしたという具合。

ホナ、ボチボチはじめましょか。

ということで、
とりあえず、その他陣営は、分担方式。
国語はdarlingさんともぎカエル部長が。
現国部分を二人でやってみたものの、
出た答えはマチマチ。
しかも二人そろってまちがえている問題もあるという
有り様。
古典はもぎが。いわゆる玉砕といわれる状態。
漢文ももぎが。もぎは、大学の頃2年間ほど、
漢文の勉強もしていたので、一問ミスのみ。
やはり、ただ経験の差がものを言っただけだろう。

そして、英語は、
「満点であった」と言った手前、もぎカエル部長が主に。
ヘエ、随分と間違わさせていただきましたぜ。エッヘッヘ。
もう、すでに出だしで「ウキ~~」だの「ムキ~~」だの、
悶絶。
※その姿、見苦しくて、何度説教しようと思ったことか。
(darling書き込み)

生物は、ギムラ=日活くんとモギカエル部長が。
もう無茶苦茶な理論で、
ふたりでガンガンと問題を解きました。
随分インターネットで調べ物をしました。
ありがとう、メンデルの法則。
有名だから、ページがあったよ。

日本史は、セイヒロ~さんが、
インターネットでブワリブワリ検索して、
怖い顔して問題を解く。
既に、他の教科は点数が出てしまった時に
やっていたので、
一身にその期待を集めていたというわけだ。

そして、ベイちゃんは、
黙々と黙々と、一見してよくわからない図形を
書きながら、夜なべをしておりました。

さて、そして
結果はというと。

<ベイちゃんの結果>
国語  128点
英語  161点
数I   84点
数II   93点
化学   79点
日本史  64点
合計点数 609点/800点満点

<その他陣営の結果>
国語  138点
英語  164点
日本史  73点
生物   64点
合計点数 375点/500点満点

と、このような結果に相成りました。

以下、各々の感想。

セイヒロ~さん。
あー、僕は日本史を担当しました。
まず、自分の記憶をアテにしないことからスタート。
カンニングオッケー(インターネットのみ)ということで、
問題のキーワードを検索エンジンに入れればいいんだなと。
でも、「けっこう手間かけさせやがって!」でした。

1.キーワードいれて、検索ボタンをクリック。
2.ホームページがズラーッとリストアップされる。
3.リストの説明文を読んで、それらしいページに行く。
4.そのページをけっこうちゃんと読む。

ここまできて、やっと糸口がつかめるだけっす。
なかにはズバリ答えにたどりつくこともありますが、
ほとんどの問題はページをちゃんと読まないとダメでした。
時間をかければ確実に調べられると思ってたのが甘かった。
すごく時間がかかって気力が追いつかないのです。
少しは役に立ったページはこれらです。
中学社会
http://www.osaka-shoseki.co.jp/1/kyo3.htm#2
日本の歴史
http://www.kotobuki-p.co.jp/jrekisi/jrekisi.htm
「日本史の時間ですよ!」
http://www.lint.ne.jp/~meirokun/index.htm
社会のしくみと労働組合
http://www.kumagaya.or.jp/~hatsu/chikuro/
text/index.htm

日本銀行金融研究所 貨幣博物館・わが国の貨幣史
http://www.imes.boj.or.jp/cm/htmls/history.htm
あと2~3カ所あるけど、気が遠くなりましたね。
インターネットで調べ物してる僕を見てた同僚からは、
「人の食い物狙ってるときと同じ目をしてた」
と指摘されました。悪い人の目をしてたんですね。
歴史的事実をはめていく作業はしんどく感じたんです。
脳味噌にイヤーな汗きますよ。
ヒマだったら、問題やってみてください。

高校の日本史の先生は、土器の発掘が大好きでした。
おとなしい人なのに、歴史を語り始めると
目がおおきくなり、顔が赤くなり、終業のチャイムに
気がつかないほど熱くなる人でした。
江戸時代の墓を発掘したら、剃刀がでてきた話。
インパール作戦での軍司令部のダメぶり。
ホントは考古学者で食いたかった先生。
なぜ、人がそういうことをしたか、みたいな物語は
いまでも覚えてますぜ。ホントだって。
カンニングオッケーのくせにえばるなってか。

ギムラ=日活君。
高校時代に化学の授業でmolっちゅうものが
出てきてからというもの、
数字というものに不信感を抱きました。
「なんで1mol=●●なんじゃい!
素直に知ってる単位でかぞえんかい!!」
(●●の部分は数字も単位も忘れ去りました)
そういえば、ベクトルだのサイン、コサイン、
タンジェントなんかもありましたね。
ルートまではかなり順調にきていたんですがね。
理解するのに時間がかかる単位や数式が出てくるものは
全て拒絶してきました。
まあ、そういうわけで、逃げの高校時代を歩んできた私が
文系大学で泣く泣く受けた理系の“ぱんきょう”は
化学と物理。
必修だったんで2つは取らなければいけなかったんです。
ますます嫌いになりましたね。案の定。

でも今回は「理系のいないメンバーのために、
何かしら協力せねば!」ということで
生物なら「動物と子どもが好きだから少し分かりそう」
なので少しだけお手伝いました。

そして結果はというと・・・。
まあ、さんざんでした。
インターネットで『カルビン・ベンソン回路』という
光合成の経路を知り「自然の仕組みってすばらしい」
と涙したところ、わずか1問で
タオルが投げ込まれたぐらいですから。

もぎカエル部長。
いや、昔はね。シクシク。
ただのパーになっていました。
というか、私は高校時代にアメリカなどに1年ほど
留学していたことがありまして、
ということは、当時人よりもそれなりに
英語ができたわけでした。
それによって、私は大学に入れたのでしょう。
つまり、その経験がないと、
だだのパーだったのではないかと思うわけであります。
過去の栄光を大切にしていたアタシは、
きっと人としてとても素晴らしく頓馬であったのでした。

ベイちゃん。
いやはや面目ない。
合計で700点前後くらい取れるだろうと思っていたのに
この結果。数学と化学では満点を公言していただけに
情けないったらありゃしない。
でもね、
大学に入ると数学では訳のわからない記号を扱うばかりで
数字が入った実際の計算をやらなくなるんですよ。
化学も大学の授業では分子の軌道を計算したりするだけで
いわゆる化学式とは縁遠くなっていたものですから。
なーんて言い訳がましいぞ、俺。

それにしても国語の問題は何なんでしょう。
「なんでおまえの用意した答えの中から
 選ばなきゃいけないんだ」
って解いてる間ずっと思ってましたよ。
変な選択肢ばかりで「これだ!」って思えるものが
ないんですもん。
センター試験にあわせた思考法は
もうどっかにいっちゃったみたいです。

darlingさん総括。
多くを語りたくない。
そりゃぁ、おれは勉強なんかできなかったさ。
そのことが自慢にならないことくらい承知だよ。
でもさ、もっと、おもしろいかもしれないと、
思っていたんだよ。試験問題と格闘するのって。

だが、ぜんぜんぜんぜんおもしろくなかった!
ぼくは、おとなになってから、勉強というものは
ほんとうに大事だと心から思ってきたし、
勉強することを苦にしたことだってなかったよ。
知りたいことを知る、というのは、よろこびだったよ。
先人の学問の成果を、分けていただくときに、
感謝の気持ちさえ抱いていたよ。

でも、なんだ?!
この虚しさは??
素晴らしいロボットを前にして、
じっとその部品を見つめるようなばからしさがあった。
知ることのよろこびを、まるで邪魔するような問題。
読書を嫌いにさせるような問題。
やるんじゃなかったよ。
こんなことのために受験勉強をする期間に、
もっと苦しくてもっと面白いことをやっていたら、
学ぶことの大切さが、ほんとにわかると思うね。

なんだ、現代国語!
文章をカエルの解剖のようにメス入れて、
なるほどこれがこうなっているということですね・・・
なんてことをやって、どうなるっていうんだ?
こんな重箱の隅をつつくようなことばかりさせるから、
本を読むのが嫌いになるし、読書のスピードが遅くなる。
論理的思考力を訓練するためなら、
きちんとしたディベートを教科に入れればいいじゃないか。
こんなもん、作者だって不正解になると思うぞ。
(怒ってるわ、俺)
本なんて、バンバン買って、バンバン読み飛ばして、
忘れていくから「わかる」んだよ。
「バンバン買える人はいいですけど、
買えない人もいるんです」なんて、どうせ言うやつがいる。
図書館があるだろうが。
(怒ってる怒ってる)
要約の練習とか、主題とかいう犯人探しばっかりやって、
なにがわかるっていうんだ?
短く書ける文章だったら、作者だって、
はじめから短く書いてるよ!
「いいねぇ」とか「おもしろかったわー」とかがなくて、
ここで作者が言いたかったことを30字で述べたりしてると
「オマエじゃなくてもいい」やつばっかりできちゃうぞ。

というようなわけで、
もうこの企画、2度とやらない。
つまらん教師のコピーをつくるような試験では、
いちばん精巧なコピーがエライってことじゃ。

なまじ正解があったことさえ胸くそ悪いわい。
この次は、クイズとして開き直ったような、
日能研の電車の車額みたいなものを解いて遊ぼうと思った。
「中学入試難問集」なんかのほうが、
ふざけてておもしろいわい。

このページへの激励や感想などは、 メールの表題に
「センター試験をやってみたを読んで」
と書いて
postman@1101.comに送ろう。

1999-01-26-TUE

HOME
ホーム