Symposium ボーダーシャツを語ろう。[轟木節子さん篇]

  • 轟木節子さん(スタイリスト)
  • 江藤 公昭さん(「PAPIER LABO.」ディレクター)
  • 尾崎 雄飛さん(「SUN/kakke(サンカッケー)」デザイナー)
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File 04 「六甲成分」を入れよう。

date:

2013/03/01 FRI

content:
「六甲成分」がほしい。
轟木 小鳥さんが着ている六甲ボーダーは、
やっぱり「六甲」と書かれているところに
惹かれるんですよね?
小鳥 そうですね。
色とか、ボーダーの太さとかも好きですけど、
やっぱりこの「六甲」っていうのが
決め手になったかもしれません。
轟木 ‥‥入れるべきかもしれない。
ほぼ日 えっ? 「六甲」を?
轟木 「六甲」そのものではないけれど、
そういう成分を。
黒田 六甲成分。
轟木 なんかこう、今回つくるボーダーならではの、
引きつける力をもったもの。
そういう六甲成分があったらいいなあ!
黒田 要するにチャームポイントですね。
たしかに、あるといいかもね。
ほぼ日 あの、実は、
先にやった井伊さんの座談会のほうでも、
おなじような話があったんです。
轟木 あっ、そうでしたか。
ほぼ日 はい、井伊さんボーダーならではの
「うれしさ」を入れようと話していました。
轟木 わたし個人としては、
何も入っていないような
シンプルなものが好きなんですけど‥‥。
小鳥 六甲成分かあ‥‥。
あ、思いつきました!
ほぼ日 えっ、もう?!
小鳥 あの、ちょこっとだけボーダーに
隙間があいているっていうのはどうですか?
轟木 隙間?
小鳥 そうそう。
地色の部分をがんばって辿って行けば、
抜けられるっていう。
その名も、「ボーダレスボーダー」。
黒田 迷路になってるんだ(笑)。
でも、ところどころボーダーが切れてたら、
それはもはやボーダーじゃないかも?
轟木 うん、ボーダーじゃない(笑)。
けど好きだな、”よく見れば”的なアイディア。
小鳥 きっと遠くから見れば、ボーダーですよ(笑)。
あ、あと「ピノ」ってアイスあるじゃないですか。
あれ、ときどきハートの形をしたのが入ってるんですけど、
入ってたらやっぱりうれしいんですよね。
そういうイメージで、
ボーダーのどこかにちっちゃく星が入ってる。
同じ場所じゃなくて、
人によって違うところに星が入っていたら、
たのしいと思うんですけど。
轟木 うんうん!
着ていて、コミュニケーションの
きっかけになるような、
「実はね‥‥」と、話題になったりしてもすてきだな。
小鳥 それで、「流れ星ボーダー」とか「Wish」とか、
願いごとが叶う感じの名前だったら、うれしいかも。
黒田 小さく入っているっていうのは、いいですね。
ぼくの場合、そういうポイントになるものは、
さりげなく入っているほうがうれしい。
星があるにしても、たとえば、
ボーダーの色と同じ色の刺繍ではいってるとか‥‥。
轟木 よく見れば、どきりとする感じ。
はっとさせたり、はっとしたりって、
すてきだなと思います。
ほぼ日 同じ色の刺繍で、
なにか言葉が入っていても
いいかもしれませんね。
小鳥 どんなことばを入れるのかな‥‥?
轟木 そうですねぇ。
小鳥 (ぼそっと)‥‥セツコ。
(轟木さんの下のお名前)
一同 (笑)
轟木 「入ってなければ買うのに!」
って思うよ(笑)。
名前のつけかたで、イメージがひろがる。
黒田 そうだ、轟木さん、
ゴダールのコスプレをするくらい映画好きなんだから、
お気に入りの映画のセリフとか、いいんじゃない?
轟木 粋なセリフがすぐには浮かびませんが、
いいですね。
黒田 それをもし刺繍とかにする場合は、
よくある胸とかじゃなくて、袖口のあたりとか、
着ている本人が見える場所にあると、うれしいな。
轟木 うん、
さりげないほうがかっこいいな。
小鳥 映画で思い出したんですけど、轟木さん、
「トリュフォーの思春期」って、観ました?
轟木 ずいぶん前ですが、観ました。
小鳥 登場人物が、けっこうボーダーを着てたんですよ。
轟木 憶えてないー。
小鳥 その映画のセリフを刺繍して、
「思春期ボーダー」っていう名前にするのはどうですか?
轟木 「思春期ボーダー」、すてきです。
そっか、ボーダーシャツ自体の名前も
その映画にちなんだものにする、というのはいいですね。
ひっそり自分だけが「思春期ボーダー」って思ってる。
‥‥あ、そうだ、映画じゃないんですけど。
(かばんから冊子を取り出す)
黒田 これは‥‥マティス?
轟木 そうです、わたし、マティスが好きで。
この表紙の絵はマティスの息子なんですが、
ボーダーを着てたなぁと思って持ってきました。
この絵の佇まいがとても好きなんです。
小鳥 うん、かわいい。
轟木 紺地に青のボーダーをつくったとしたら、
そのカラーリングの名前を
「マティス」にしたり。
黒田 そのときは、マティスがいった名言のようなことを
刺繍すればいいよね。
ラインナップがどれくらいの数になるか知らないけど、
それぞれのアイテム名をそういうふうにできたら、
いいですね。
轟木 わあ、六甲成分って、
いろいろ考えられそうですね。
ちょっとお時間いただいてもいいですか?
ほぼ日 もちろんです。
なにがいいか、じっくり考えましょう。
ひとまず、六甲成分は入れるということで。
みなさん、本日はどうもありがとうございました。
一同 ありがとうございました。

(おわります)

轟木 節子(とどろき・せつこ)

スタイリスト。
1972年、熊本生まれ。
ファッション誌、カルチャー誌、広告などで幅広く活躍。
シンプルな中にスパイスの効いた、
独自の空気感が漂うスタイリングが人気。
ナチュラル志向なライフスタイルも注目されている。
モデル・女優の今宿麻美さんのフォトエッセイ
『HEART BALANCE』(双葉社刊)で
フォトグラファーとしてもデビュー。
日々のスタイリングのヒントがつまった
『毎日のナチュラルおしゃれ
 着こなし手帖』
が発売中。

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黒田 益朗(くろだ・ますお)

グラフィックデザイナー。
カタログ、CDジャケット、ビジュアルブックなどの
グラフィックデザインや店舗サインなどを手掛ける。
kuroda design主宰。
そのシンプルなデザインのなかには、
黒田さんのこだわりがふんだんにこめられている。
轟木さんとは、家族ぐるみのお付き合い。

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川島 小鳥(かわしま・ことり)

写真家。1980年東京生まれ。
早稲田大学第一文学部仏文科卒業後、
沼田元氣氏に師事。
2006年、ひとりの少女を4年間撮り続けた作品で
第10回新風舎平間至写真賞大賞受賞、
2007年写真集『BABY BABY』 を発売。
2010年『未来ちゃん』で
第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞。
被写体の心の揺らぎを捉えるセンスの正体は
物腰がやわらかく、とてもさわやかな男性。
シンポジウムの話の中に出てくる『明星』は、
小鳥さんの台湾の写真に、
画家の箕浦建太郎さんがイラストを書いた作品。
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